第10話「スキルと妄想」
「イチコさん、無事にスキルは取れました?」
いつまでも思案顔のイチコを案じて、セシリーが声を掛ける。
「ええ、大丈夫よ。ただ、憑依はなかったのよね」
「あ、それは残念でしたね。ちなみにどんなスキルがあったんですか?」
イチコは呪殺、ポルターガイスト、呪力強化、呪い付与、思念体というスキルを読み上げた。
「あわわわわっ!! なっ! なんですかっ!? その激強スキルはっ!! さすがイチコさんです。魔王四天王のロメロ様が気にかけるはずですねっ!!」
「えっ! アタシに気があるはずだなんてっ! もうっ!!」
テレテレと頬を赤らめ、周囲を徘徊する。「いや、そんなこと言ってないですが……」というセシリーの声はまるで聞こえていないようであった。
「これは、ますますここから出るしかないわね! 憑依はダメそうだから、もう一つの
「はい! 他種族を倒し、経験値を一定量得ると進化します。一般的に
「ちょっ! ちょっと待って、今第二の肉体って言った?」
恐ろしい剣幕で迫るイチコに、セシリーは顔を引きつらせながら、「は、はい」と恐る恐る答えた。
「それじゃあ、恋人同士のランデブーも可能なのねっ!! イエスッ!!」
思わずガッツポーズをするイチコだった。
「でも、ゾンビだと臭いが気になるところよね。ゾンビの次は吸血鬼に進化したりできないの?」
「えっと、そういう例もあるみたいですが……」
「そうなのね! 吸血鬼と死霊術師の恋……」
イチコはうっとりとした表情を浮かべ、未来に想いを馳せた。
※
吸血鬼として絶世の美貌を手に入れたイチコは、あのお方、ロメロの待つ魔王城へと向かった。
しかし、ロメロは容姿の変わったイチコに気が付かず、最初は冷たい態度を取る。
だが、魔王城へと攻め込む勇者たちとの戦闘を共に乗り越え、いつしか絆が芽生えていく。
そして、ある日、悲劇は訪れた。
勇者の攻撃を受けそうになるロメロを身を呈し庇ったイチコはその凶刃によって倒れてしまう。
そして、肉体から出た霊体を見て、ロメロはイチコだったことを知るのだ。
「僕は、僕はなぜ、すぐにキミの愛を受け入れなかったんだっ!!」
悔やむロメロにイチコは優しく頬を撫でて消えていく。
「うああああああっ!!」
ロメロの悲しみに暮れる声だけが響き渡った。
※
「いいわ~。やっぱ恋愛といえば悲恋よね~。ロメロ様が死ぬパターンもありね。でもせっかくだから、
涙と涎を垂れ流しながらイチコは危ない妄想ダダ漏れの独り言を呟く。
聞くつもりもなく聞いてしまったセシリーは、苦笑いを浮かべ、「イチコさんっていろいろ歪んでますよね」と呟いた。
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