第12話 ヴァシリオス・ガウラスの手記 1

奴隷の献身スクラヴォス

エレウシスの秘儀から数週間、あれから私はスクラヴォスの献身によって吸血衝動の緩和の為の血を定期的にもらう事で保っている。

筋肉質な身体では噛める所も吸える所も吸えないために首筋の頸動脈から吸血行為を行なっている。

………しかしながら、少々献身が過ぎるような気がする

何をするにしても必ず私の事を最優先にするからだ、自分の事を優先にしても良いと伝えたが……


「兄さんの幸せが、私の幸せだよ」


などと言って優先的にする事はやめない、何故だかどこか負い目を感じているようなそんな節がある。

だが、私が幸せになったとして、お前はどうなるのか

私よりも余裕があった筈だ、諦める事も出来たはずの弟は、執念で私を絶望の奈落の底から引きずり上げ、救ってくれた。

ならば今度はお前が幸せになるべきではないのか。

アリオンというレネゲイドビーイングと話している時のどこか儚げなその表情を、私は知っている。

気付かれないように観察をしていたが儚げな笑顔は無理をしているような悲しそうな表情で、以前のエレウシスの秘儀の時の仲間であったMM地区支部の彼等と温泉に行った時の豊かな表情をしていた弟とは思えないほどに。


………まったく、世話の焼ける弟だ


ならば、今度はこちらからお前をそこから救い上げて、私の全力を持ってでも幸福にしてやろう。

私とて執念深いのは知っているだろう?スクラヴォス。


END

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