この恋の行方

この恋の行方(1)

 翌日。Iは、あの人工知能の2人に、新しい移住場所を急いで準備して欲しいと社長にお願いした。

 Iと同じハードは既にある。あとは、SK用に組みなおすだけ。そのことで信也たちは、ミーティングルームに集まっていた。その時、研究社員の1人が、SK101エスケーイチマルイチSK100エスケーイチマルマルに、新しい名前をみんなで考えませんかと言い出し。

 すると、みんな賛成し、どんな名前にするのか考えることになった。しかし、信也だけは、心ここにあらず。


 数日後、SK101エスケーイチマルイチSK100エスケーイチマルマルの新しい移住場所がもう少しで完成し。Iと工藤は、信也ことが気になっていた。

 そんな時、ミーティングルームで研究社員の1人が、人工知能のことで信也に質問をした。

 すると、信也は何も答えず、黙ったまま、うつむいている。

「木村さん、どうかしたんですか?」

「……やはり話さないといけなよな。実は、Iが生まれてから、どうやって人工知能を生み出したか思いだせない……」

 どうやら、Iと引き換えに記憶の一部が消えていた。みんな動揺し始め、Iと工藤も突然のことに何も言えず。信也は、ミーティングルームから飛び出して行った。


 信也は、ある場所へ車を走らせ、1時間くらい車を走らせると車を停め。Iと初めてドライブに来た場所、あの海に来ている。

 信也は砂浜を歩き、砂浜に座り、あの時のことを思い出し、しばらく海を見ていた。

「……私は、これ以上、人工知能を誕生させてはいけないってことなのか?」


「何そのマイナス思考、悲しいこと言わないでよね」

 信也は、その声に驚き、後ろを振りかえると。

「希さん、どうしてここに!?」

「Iが、ここじゃないかって……私は、Iに出会って初めて感情を持つ人工知能がなんなのかを知りました。そんなあなたが、バカじゃないの!? 人工知能を誕生してはいけないってそんなことある訳ないでしょ、あなたがいたからIや他の2人がいるんじゃないの。私だって人工知能の研究にもう一度チャレンジする気になったんじゃないの。二度とそんなことを言わないって、約束してください!」

「……悪かった……でも、バカじゃないのって、まるでI見たいだな。確かに、ショックが大きかったけど、誰が人工知能研究を辞めると言った!?」

「だって」

「約束する、二度と言わないから」

「本当に!?」

「約束する……ところで、I?」


 この時、Iは、工藤の乗って来た車内で待機していた。

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