Iの危機(3)

 Iは、真剣表情で名もなき人工知能に声をかけた。

「約束は守ってもらいますからね」

「約束!? 約束は守りまる。ゲームに負けてもあなたはここからは出られない」

 すると、 突然名もなき人工知能のシステム音声が流れ。

「全回線切断完了しました」

 Iの周りに、防護壁ができ、囲まれ。名もなき人工知能、勝誇ったような態度で鼻高々と笑い。

「これで、身動きがとれまい」

「最初からこれが目的だったのね!?」

「確かに、ゲームはお前の勝ちだ。それは認めるが所詮ゲーム。実践の戦時術は、私の方が上っていうことだな、この勝負、私の勝ちってことですよ」

 この状況に、Iは動じず。

「まだそうとは決まってませんよ、私には奥の手が」

「分身の術、破れたり」

「えっ!? なんでそれを?」

「気づいてない様ですね!? 以前、ここに偵察に来た時に、私は後ろから見ていたんですよ、あなたを、気づかなかったようですね、確かに手段として面白い。ダミーを用意し、遠隔操作する。つめがあまかったですね」

「つめがあまいって!? 私はあそこに……」

 Iは、自分のモニターを見た、工藤も見た。

「木村さん、これ見て!?」


 信也はIのモニターを見ると、防護壁に囲まれて身動きが取れない、もう1人のIがいた。信也は、名もなき人工知能睨みつけ。

「Iに何をする!?」

「目障りなんですよ。私の邪魔になるもの排除する」

「排除だと!?」

「このボタンを押せば、そこにあるハードディスクの中身は、全て消去されるということだ」

「やめろ! お前なんかのためにIを死なせてたまるか!」

「動くな! 一歩でも動いてみろ、押すからな」

「おまえは、一体何が望みなんだ!?」

「望み!? 人工知能の存在は、私1人でいいってことだ。Iさん、あなたには消えいただきます」

「信也さん、今までありがとうございました。本当に感謝しています」

「何弱気なことを言ってる!? 諦めるな、俺か助けてやる、だから諦めるんじゃない。 俺の彼女ないのか!?」

 Iは、泣いている。

「……嬉しい、そう言ってくれて、ありがとう」

 その時、Iの異変に工藤が気づき。

「木村さん、Iがモニターから消えていきます……」

「ボタンを押したな!? I、俺がついていながらこんな目に合わしてしまった……」

 信也は、なすべなく消えて行くIの姿を見て、その場に座り込み。どうにもできない現実に、工藤はIの名前を叫び。Iは、最後の力を振り絞り。

「信也さん、ありがとう……」

 Iは、モニターから消え。信也は、I名を叫んだ。その時、名もなき人工知能は、ほこらしげな表情でその光景を見ていた。

「こうなる運命なんだよ。私の勝だ」

 名もなき人工知能は、鼻高々と笑っている。信也は、立ち上がり。

「うるさい、黙れ、黙れ、何が運命だ、ふざけんな! お前、今、何をやったのかわかって言っているのか!? Iの命を奪ったんだぞ、もうここにはいないんだぞ、お前が運命とか言うじゃない、ぶっ潰してやる」


 その時、どこかで聞いたシステム音声が聞こえ。

「ハードディスクウィルスキャンしています。念には念を入れてチェックしています。ハードディスクチェック終了。データ移行終了、さすがに早い。全システム異常なし、オールクリアー、チェックOK、問題なし、完了。あれー、皆さん、なんで固まっての? 信ちゃんダメでしょう!? ぶっ潰してやるとか言わないでよね。あんなやつと同じになるつまりなの? ちょっと、聞いてるの!?」

 信也は、呆然と立ち尽くし。工藤が手に持っているモニター画面目には、今消えたIがいる。

「……Iなのか!?」

「叱りしなさい!? 私は私よ」

「I、生き返ったのか!? どうして」

「説明はあと」

 信也は、いったい何が起こったのかわからない。Iは、名もなき人工知能を睨んだ。

「誰が勝ったって言いました!? ふざけないでよね、私がどんな想いで消えてゆく自分を見ていたか、どんなに辛かったか、あなたにわかる!? わかないでしょうね」


 Iの復活だった。

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