許せぬ想い(3)

 午後6時50分、信也が工藤の自宅に着き、玄関チャイムを鳴らし。門が開き、玄関から工藤が出て来ると。そこへ、信也の乗った車が玄関の近くまで入って来た。広い敷地の左側の奥に高級車が3台と軽乗用車2台停まっている。工藤は、信也の乗った車の所まで駆け寄り。

「お疲れ様です、今日はすみません無理いって」

「いえ、大丈夫です」

「車はあそこに、駐車スペースが開いていますので」


 信也は、車を駐車場に停め。信也は工藤のあとをついて行き、玄関を開けると天井が高く、左側のドアを開けると長い通路があり、右側にエレベーターが見え。エレベーターに乗り込み、2階へ案内されると60畳くらいあるダイニングに大きなテーブル。そこには、工藤の両親が座っている。工藤の父親を目にした信也は、緊張していた。

「失礼します」

「お父さん、木村さんをお連れしました」

「初めまして、木村信也です」

「希の父です、隣に入るのが家内です」

 工藤の母親は、かるく会釈し、工藤の父親は、真剣な表情になり。

「希がいろいろお世話になり、ありがとうございます」

「お世話だなんて、私はなんにも、今日はお招きいただきありがとうございます」

 そこへ、工藤が割り込み、

「お父さん、これ、お花いただきました」

「ご丁寧にありがとうございます」

「いえ、とんでもありません」

 すると、工藤の母親が空気を読んだのか。

「挨拶はそれぐらいにして座ってください」

 4人は、テーブル着くと、父親は信也を見て。

「木村君は、お酒は飲む方かね?」

「いえ、飲みません、たばこもすいません」

「私もそうだが、うちの家族はだれも飲まないから、ちょうどよかった」

 すると、信也は何かの視線を感じていた。その視線は、キチンの方見ると、近くのテーブルに15インチのモニター。その時、モニターにIが現れ、手を振っている。信也は、就職が決まったことしか知らず慌てている。その慌てぶりにIが思わず。

「信ちゃん、何あわててるの? みんな私のこと知ってますよ」

 工藤は、その光景に申し訳なそうに。

「脅かすつもりはなかったんだけど、Iがどうしてもって、私もOKしちゃって、ごめんなさい」

「えー、これじゃまるでドッキリじゃないですか!?」

 Iは喜び。信也は、Iのことはなるべく他の人には知られるわけにはいかないと、思っていた。

 就職祝いが始まり。工藤は、こんなにぎやかな食事は久しぶりだった。

 工藤の父親は、研究に行き詰まりを感じ、こうやってみんなで食事をするのも久しぶりだよなと、詫びていた。

「木村君、Iさんはいい人だな」

「ありがとございます。無茶なことしませんでした?」

 Iが割り込み。

「無茶ってなにかなー?」

「すぐ、ああ言うんですよ」

「実に面白い、Iさんの彼氏だとか、こうも言ってな、希とはいいライバルだとか」

 工藤の父親に、そんな話をしていることは工藤は知らず。

「I、いつのまにそんなことを!?」

「だって、その方が競いがいがあって、面白いでしょう?」

「面白いって、私、ダメ目だ、Iには勝てない」

「ヤッター、勝ってしまいました、って、これで終わりじゃないんだからね。始まったばかりなんだから、それに、最終的に決めるのは、信ちゃんなんだから、社長、お騒がせしました。今日は喋りすぎました。少し早いですがお休み致します。何かあったら起こしてください、おやすみなさい」

 Iは、突然のお休み宣言。部屋の電気を消し、ベッドに入り、みんなにおやすみと。信也はあきれ、部屋の時計を見ると、午後8時半を過ぎ。

「社長、時間ですので私はこれで、失礼いたします」

「木村君、泊まって行きなさい。使ってない部屋があるから、そうしなさい」


 信也はお言葉に甘え、工藤は信也を部屋に案内した。

 2人は、エレベーターで1階に降りると、右側にドアがあり。そのドアを開けると。15畳の洋間があり、ベッドにお風呂、トイレ、洗濯乾燥機があり。  どう見てもワンルームマンションの部屋って感じ。工藤は、一通部屋の説明をすると。

「あのー、パジャマは新しいのを買っておきましたから使ってください。あとは、ここから会社まではどのくらいかかります?」

「多分、10分くらいだと思います」

「わかりました。朝食は7時半で用意しときます。今日は楽しかったです、ありがとうございます」

「いえ、私も楽しかったです」

「では、おやすみなさい」

「おやすみなさい」


 工藤は部屋を出た。信也は、スーツを着ていたので、一旦家に帰らなくても大丈夫。

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