許せぬ想い

許せぬ想い(1)

 翌朝、工藤はいつものように会社に行き。朝礼が終わると、工藤はミーティング室へ行き、Iと一緒に考えたシステムのプレゼンを始めると。ふとI顔が浮かび、緊張はせずに不思議とリラックスし、プレゼンが終わると、誰1人このシステムに文句はなく、2人の勝利だった。

 そのあと、工藤はバッグに入れていた退職届を待ち、部長のところへ行き、退職届を出し、部長は工藤を引き止めることはしなかった。それだけの会社だったということ。

 明日、工藤はIと一緒に、工藤の父親に会社を辞めたことを話し、自分の想いを打ち明ける予定になっている。


 翌朝、工藤は信也のマンションへ着くと、Iをバッグに入れ。信也の車で工藤の自宅へ向かい。移動中、工藤は緊張している様子はなく、Iと一緒にいることが心強くなっていた。

「I、見ててね、私、頑張るから」

「私がついてるから、大丈夫、超特大船に乗ったつもりでいてね」

「何に、超特大船って、どんだけ大きいの!?」

「こんだけー」

 工藤は、カーナビのモニター映るIのジェスチャーに笑っていた。しばらくして、工藤の自宅へ着き。

「木村さん、ありがとうございました」

「頑張ってください」

「はい!」

「I、無茶するなよ」

「無茶ってなによ!?」

「工藤さん、結果、連絡待っていますので」

「わかりました、帰り気をつけて」

「はい」

 信也はその足で、会社へ行き。2人は、自宅へ入って行くと。工藤の父親は、出勤前でリビングにいて、工藤に気づき。

「希、どうした!? 会社は?」

「昨日付で会社は辞めました」

「辞めた!? どういうことだ!?」


 工藤は会社を辞めた訳を話した。先日、ある女性に会いました。今まで友達がいなかった私に親身に話を聞いてくれて。その女性言われたんです。あなたはあの会社にいて楽しいですかって。私が働くべき場所は、お父さんの会社だってことを思いだしたんです。やっぱり私は、お父さんと一緒に人工知能の研究をしたいんです。工藤は、人工知能への想いを話すと。

 工藤の父親はダメだと反対し。工藤の母親は希のしたいようにやらせてあげたら、何もやらせずダメだと言うのもいかがでしょうか、と食い下がり。工藤の父親は、無言でソファーに座り、初めて胸の内を話し始めた。


 研究、研究で家に帰ることが少なく、希と遊んで上げられなかった。後悔というより、申し訳ない気持ちだった。希が、人工知能の研究をしたいと言った時、内心は嬉しく。しかし、研究は時間と戦いがある。不規則時間にしいたげられ、辛いことも多い。やりがいもあるが、苦労も絶えない日々を考えると、娘に同じ苦労させてもいいのか、そう思って反対した。希とちゃんと向き合い、いろいろ話すべきだ。工藤の父親は、工藤が6年経っても人工知能の研究をやりたいと思ったことに。

「わかった、但し、会社に入る限り希を研究所の一社員として扱うからな、それでいいか!?」

「はい!」

 結局、バッグに身を潜めていたIの出番はなかったが、うまくいってよかった喜び、思わず。

「希、よかったね」

「これも、Iのおかげだよ」

 その時、工藤の父親が工藤を見て、その光景に。

「希、いったい誰と喋っている!?」

 すると、Iが突然テレビ画面に映し出し。

「申し訳ありません。お宅のテレビをお借りします。始めまして、希さんの親友で、Iと申します。こんな所からご挨拶させていただき、失礼ですがご無礼をお許しください」

 工藤の父親は、面喰い。

「希、これはいったい、どういうことだ?」

「お父さん、気がつきませんか? お父さんだったら気づくはず」

「……まさか、いや、あり得ない……」

「お話ししてみたらいかがですか?」

「……Iさんって言いましたよね!?」

「はい」

「失礼だが、人工知能ということかね!?」

「確かに、私は人工知能です、もちろん人間でもありません、それはちゃんとわかっています。私は、プログラミングされたものですが、勘違いして欲しくないのは、私は、私だということです」

「なるほど、私は、私か、きつい質問をするがいいかね?」

「どうぞ」

「どうして、この世に生まれたのかわかっていますか?」

「もちろんわかっています。私はある方に作られました。私の信念は人を守り、人を助けることにあります。だからといって、この世に生まれて来た以上は、私に何ができるのか、私自身のためにも、何かやりたいことをみつけたいと思っています」

「すまなかった、あんな質問をして」

「謝らないでください、気にしていませんので」

「まるで、人間だな」

「そう言ってくれると、嬉しいです」

「Iさん、うちのパソコンに侵入できるかね? 手がけている人工知能のデータがあるのだが」

「できますけど、基本的にハッキングはしません。相手の許可があれば別です。それと、やむを得ない状況の時は別ですけど」

 その時、工藤の父親が何かを思い出し。

「6年前にある大学に人工知能の研究をした人物がいて、あと少しで完成と言う時に火事にあい、結局、大学を辞めた。彼は言っていた、人を守り、人を助けること。そして、同じ人間の心を持った、人格として接しないといけないと」

「6年前!? 何、今の画像!?」

「Iさん、どかしたかね?」

「なんでもないです……」

「希、もしかしたらIさんは、あの木村君が作ったのか!?」

「はい、そうです」

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