希の想い(4)

 2人は美味しそうにお弁当を食べ、なぜかIの話で盛り上がっていた。しかし、Iはテレビ画面には現れない。お弁当は完食し、お腹いっぱいになった2人。

「工藤さん、美味しかったです。ありがとうございます」

「よかったです。作ったかいがありました」

 工藤は、食事の後片づけをすませると、真剣な表情でテーブル着き。

「木村さんにお話しがあります……。Iさんといろいろお話して、月曜日に会社を辞めることにしました」

「えっ!? 突然どうして?」


 工藤は、信也が買い物に行った間にIと話したことを話し。信也は、辞めたい理由を聞き。確かに、それりゃ楽しくないな、そう思い。


「木村さん、それでご相談なんですけど、Iさんをお借りしたいのですが、ダメでしょうか?」

「いいですよ、Iがお役にたてるのなら喜んでお貸しします。あれ? なおかしいな? 私は物じゃないんだからね、って言ってくると思ったんだけど、あいつなにやってるんだ?」

 すると、テレビ画面にIが現れ、首をかしげ。

「それ、ちょっと違うのよね」

「何が!?」

「私は、私だってことです」

「なんだ、そんなことか!?」

「そんなことって、何よ!?」

「そんなこは、そんなことだろう?」

「はぁ!? 私をバカにしてるの?」

「してませんけど、何か?」

「……希さん、この人に何か言ってやってよ!?」

 振られて困る工藤だが。

「……」

「I、工藤さんを巻き込むなよな? 工藤さんに失礼だろう?」

「だって……」

 Iは、ちょっとすねている感を出し。その様子にあきれ気味の信也だが。

「……ったく、わかんないやつだな、Iがわかりきったことを言うからだろう?」

 その光景をちょっと遠目で見ていた工藤だが。

「なんかいいですね、お二人さんって感じで」

 思わず信也は、Iを見て。

「そうか!?」

「そうかって、何よ……?」


 そんなこんなで1時間後。パソコン部屋では、納得がいくシステムができあがり、工藤は嬉しく。

「Iさん、ありがとう。これであの人たちにぎゃふんと言わせることができるわ」

「希さん……私こと、Iって呼んでください。私も希って呼びますから、だって私たち同い年だし」

「えっ!? そうなの……!? I、今日は本当にありがとう。火曜日には、迎えに来るからね」

「わかった。明日は、ぎゃふんって言わして来なさいよ! 頑張ってね。希に会えて本当によかった」

「私も、Iに会えてよかった……。木村さん、ありがとうございました!」

「Iと友達になってくれありがとう、帰り気をつけて」

「はい」


 その時、この状況にIは何を思ったのか、信也をジッと見て。

「もー、気が効かない人ね、家まで送って上げたら?」

 突然急に言われ、困惑気味の信也だが。

「わかった」

「I、私は大丈夫、電車で帰るから」

「希、送ってもらいなさい」

「……それじゃ、お言葉に甘えてよろしくお願いします」


 この後、どういう訳かIも一緒に車に乗り込み。どうやら、火曜日に希の自宅へ行く前に、どんな所に住んでいるか、どんな豪邸に住んでいるのか気になり。3人は、工藤の自宅へ向かった。

 車を走らせ、30分経ったころ、工藤の自宅の門の前に着くと。その広さ、豪邸に驚き、3階建ての豪邸が見え。その光景に、1番驚いたのは、Iだった。

「凄いね……さすが、希のお家ね」

「送ってくれて、ありがとうございました」

「いえ」

「希、またね!」

「私、頑張るからね!」

「結果、連絡してよ。問題ないとは思うけど、火曜日、待ってるから」

「じゃ、火曜日ね」

 Iは、手を振り、工藤も手を振っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る