希の想い(3)

 信也は、タブレットPCを手にソファーに座り、新しいゲーム構想を考えていると、ふと工藤は昼食をどうするか気になり。そう言えば、工藤さんの手には風呂敷包み、あれはなんだったのか、そう思いながらパソコン部屋のドアの前に立つと、笑い声が聞こえ、ドアをノックした。


「はい、どうぞ」

「失礼します。工藤さん、お昼はどうします?」

「なんか、すみません。お気遣いありがとうございます。お口に合うかわかりませんが、お弁当を作ってきました。でも、彼女さんとかに」

 彼女、そのワードに素早く反応したIは、会話に割り込み。

「希さん、その心配はいりません。一応、私が彼女ですので私が許します。ですので、一緒に食べてください」

 彼女、そのワードに信也は思わず。

「はぁ!? 誰が決めたの?」

「私です、文句がありますか?」

「はい、はい、工藤さん、飲み物を買ってきますけど、リクエストはあります?」

「ごめんなさい。飲み物まで気が回りませんでした。お言葉に甘えて、ウーロン茶をお願いします」

「わかりました。15分くらいで戻ってきますので、留守番をお願いします」

「はい」

 信也は、行きつけのコンビニに買い物に行き。


 彼女、そのワードに工藤は触れず。Iは、工藤の働いている会社のホームページを見てデモ版をチェックすると。システム作りは悪くはないが、ユザー側の立場になっての考え方が甘いと判断し、十分見返すシステムはできると思い。しかし、このままこの会社で働いても楽しくないような気もする、そんな思いが込み上げ。


「希さん、もし私が希さんの立場だったら、あんな会社にしがみつく必要はないとおもうけど、もう一度ご両親と話し合った方がいいと思うの。私でよかったら、一緒に行って」

「わかってる! 私だって、本当はそうしたい……。あなたに会って、あの時、なんで両親を説得できなかったんだろうって、でもいまさら」

「はぁ!? 何情けないことを言ってるの!? この私がライバルだと認めた人が、情けないこと言わないでよね、お願いだから……」

 Iは、まるで自分が情けなく、悲しいような気分になり、いまにも泣きそうな表情に。それを目にする工藤は、私のためにそんな思いにかられ。

「……わかった。私、頑張るから、もう一度両親を説得して見るから……」

「本当に?」

「本当……。何? その疑いの目は? もしかして、疑ってるの?」

「まさか、冗談よ、冗談。疑ってません」

「ならいいけど、で、私の考えたシステムはダメ?」

「ダメじゃないけど、まだまだね。でも、あの人たちのシステムに比べたら、希さんの方が上ね。でも、何? このプログラム? ちょっとひどすぎない? まだまだね」


 工藤は、プログラミングの方がまだまだのようで、今回は教える時間がないので、ポイントになる部分だけを教えながら、あとはIが手伝い作業を進めて行った。

 しばらくして、信也が自宅に帰り、パソコン部屋に行くと。この2人、出会って2時間しか経っていないのに、まるで昔からの友達みたいな雰囲気だった。


 お昼になり、工藤が風呂敷包みを持ち、パソコン部屋から出てリビングに行くと。テーブルには、お皿と飲み物が用意され。風呂敷包みをテーブルに置き開けると、お弁当は重箱に入っており。中身はまるで運動会の時きに食べる感じのメニュー。


 おにぎり、卵焼き、鮭の塩焼き、鶏のから揚げ、たこさんウインナーにポテトサラダ、エビフライなど。工藤は、小皿に取り分け。

「すみません、料理は好きなんですけど……両親以外に食べてもらったことがないから、お口に合うか」

 なぜこのメニューなのか、信也はほんの少し思い。

「まいったな、私の好きなものばかり」

「えっ!? そうなんですか!? なんか子供向けで、作ったらこんなになっちゃって」

「その点は大丈夫。私が子供みたいなもんだし、では遠慮なくいただきます」

 信也は食べ始めると、思った以上に美味しい。

「この卵焼き、美味しいですね……。おにぎりも絶妙な塩加減で……定番の梅干しもいいですね……。なんだろう、味付けがいいのか……。揚げものも、とても美味しいです」

「本当に!? よかった、喜んでもらえて」

「工藤さんも食べてください。一緒に食べましょう!?」

「はい!」

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