希の想い(2)

 翌日、午前9時。予定通りの時間に工藤は信也の自宅を訪ね。

「おはようございます、すみません無理いって……他に相談できる人がいなくて」

「どうぞ、上がってください」

「……失礼します」


 工藤は、申し訳なさそうにリビングに通され、ちょっとだけ周りを見渡し。とりあえず、ダイニングテーブルの椅子に座ってもらい。

「……何か飲まれます?」

「いえ、大丈夫です」

「コーヒーでも入れますね」

「すみません」


 2人は、向かい合わせで椅子に座り、コーヒーを少し飲み。信也の方から話を切り出し、昨日の電話の件を聞いた。


 工藤の父親は、ロボット業界トップを誇る会社で、株式会社AIテックの社長。

 工藤が幼い頃から、研究、研究で家庭を顧みない父親だった。工藤は、そんな父親の仕事が大嫌い。しかし、なぜ、あんなに研究に夢中になれるか、中学生の時に疑問に思い。 次第に父親の仕事に興味を持つようになっていた。

 工藤が高校生の時に、父親が人工知能の研究で、「感情」をどうするか悩でいると。工藤は、その開発に興味を持ち、私も人工知能の勉強をしたいと言い出し。父親は、これに反対し、女性は不向きだと、別の道を探せと。

 そんな時に、大学の研究生の信也が、人工知能に感情を持たせることができると、ニュースで取り上げられ。そのニュースを見ていた工藤は、高校を卒業したらその大学へ行きたいと言い出したが。父親は、人工知能の研究をするなら行くなと、またしても反対され。

 なぜそこまで反対するのか。そんな時に、あの事件をニュースで知り。大学では、人工知能の研究は取りやめとなり、工藤は行き場をなくし、やむを得なく人工知能の研究を断念し、情報処理の専門学校へ行き、情報処理の資格を取り、24歳で今の会社に就職をした。

 会社に入り5ヶ月が経ち、お嬢様だとか、女だからといって、最近になってSEは不向きだと言われ。我慢の限界に達し、「あなたたちが納得するシステムを作れば認めてくれますか!?」、引くに引けなくなり、その期限が明日に。


 信也は、事情を知り、いろんな意味で驚き。しかし、研究に性別は関係ない。ましてや、女性はSEに不向きだと誰が決めたのか、納得できない、請謁ながら協力をすると言うと。

 工藤は、やはりこの人に相談して良かったと思い、喜んでいると。突然Iがテレビ画面に現れ、工藤が気づき。

「木村さん、テレビに映っている女性は……!?」

 Iが少し照れくさそうに、なぜか手を振っている。

「突然すみません、初めましてIと申します。申し訳ありません、先程の話を聞いていました。それと、ブログを拝見し、私も女性として希さんのお気持ちはわかるつもりです。その人たちに、ぐうの音も出ないシステムを考えて見返しましょう!」

「木村さん、これって……もしかして、人工知能ですか?」

「はい、そうです」 

「でもどうして、研究は……」

「実は、昨日完成しんたんですけど、まるで、人間みたいで……」

 それに対して、Iが言いたいことが。

「確かに、私は人工知能です、人間ではありません。ただ、わかって欲しいのは、人間と同じで、笑ったり、怒ったり、泣いたりします。私だって、海を見て感動したり、景色を見て綺麗だなって思うし。触ったり、風を感じたりは、今はできないけど、いつかきっとできると信じています……」

 信也は、その点について何も言えず。工藤は、父親が感情のことに悩んでいたことが、少しわかったような気がした。

 そんな黙っている2人にIは、信也に気休めでも何か言って欲しかったが、工藤に言い忘れたことに気づき。 

「希さん、私、負けないからね。希さんとはいいライバルになりそうね、女の勘っていうやつかな」

 すると、その発言に物申すかのように、信也は椅子から立ち上がり。

「I、初対面の人に失礼でしょ。工藤さん、ごめんなさい」

「いえ、それより木村さん、私ね、今感動してるの……Iさん、よろしくね」

「それじゃ、友達になってくれるということですね!? ヤッタね! 初めて友達だ、嬉しい」

 画面の中で飛び上がって喜ぶI。何か申し訳ない気持ちの信也。

「工藤さん。なんか、すみません」

「私、友達がいないから、私も嬉しいです」


 その時、 信也は何かをも思い出し。

「あっ、そう言えば、工藤さん、見てもらいたいシステムいうのは?」

「ごめんなさい、肝心なことを忘れていました」

 すると、Iが何かを思いつき。 

「希さん、そのシステム、2人で一緒に作りませんか? その結果を信ちゃんに見せて判断してもらうのはどうでしょう?」

 突然の申し出に工藤は嬉しく。信也は、2人がそうしたいなら構わないと言い。パソコン部屋に案内した。

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