希の想い
希の想い(1)
一方、逃げるように、信也のアタッシュケースを間違って持ち去った男は、木の葉を隠すなら森の中ということで、スーツを着て人ごみに紛れ、念のため防犯カメラ避け、地下鉄に乗り込み、受け渡し場所は地下鉄の中。しかし、取引は失敗に終わり、信也の手にある戦闘用の人工知能を血眼になって探していた。
「まだ、位置情報はわからないのか!?」
「宗方教授、どうやらGPSが作動していないと思われます」
「どういうことだ? 完成するのに6年もかかったんだぞ、どじふみやがって……まぁいい、あのシステムのIDとパスワードは絶対に解けるはずがない。いいか、一刻も早く、あの人工知能を探せ!」
数名の男たちは、戦闘用の人工知能を探しに行き。いらだちを見せる宗方教授だが、不敵な笑みを浮かべ。
もしあれが警察の手に渡ってとしても、私が作り出したという証拠は何一つ見つからない。あのシステムは特殊な暗号化され解析不可能。それに、専用のUSBでないと接続も不可能、ただの箱にすぎない。
あれ1台あれば、1億ものあらゆる戦闘兵器を自由に操れる。開発費用として20億を手にし。あとは、取引相手の要望通りにシステムが作動すれば、あと10億は手に入る。
取引場所を変更し、取引は必ず成功させる。今度失敗すればあいつらに捕まり、いいようにこき使われ消される。冗談じゃない、私の野望は絶対に叶えてみせる。警察にもあいつらにも捕まる訳にはいかない、私の邪魔は誰にもさせない。そんな思いの中、宗方教授は予備の戦闘用人工知能を用意し、1週間後の取引に備え、念入りにチェックをするように金で雇った連中に指示し、不具合がないか確認させていた。
そんなにことになっているとは知る由もない信也とIは、ドライブから自宅に帰り。少し手を加え、目になるもの、耳になるもの、声になるもの、新しい機材に交換し。目はよく見え、耳もよく聞こえ、声も綺麗に通り、環境が格段に良くなり。モニターでは、自分の部屋で喜ぶIの姿が映り。その様子を見ていた信也のスマホが鳴り、電話の相手は、あの工藤希だった。
電話の内容は、男性社員と揉め、そのことで相談に乗って欲しいと、信也の頭部の傷を気遣いながらも頼み。明日、詳しい話を信也の自宅で話したいと。
なぜ自宅なのか、怪我のことで迷惑をかけたし、何か切羽詰まった様子。これらをふまえて仕方がないと思った信也は了解し。その時、Iもその電話の内容を聞いていた。
「工藤さんって、救急車に同乗していた人ですよね!?」
「そうだけど……えっ!? なんで知ってるの!?」
「わかんない。そんなことより、たった一度しか会ってないんですよね!? いきなり家に上げるのは、どうかと思うんですけど……」
モニター越しの信也を見る目が少し不機嫌のようだが。しかし、信也は工藤をかばうかのように。
「今の会話、聞いてよね。切羽詰まった様子だっし。それに、いろいろ迷惑かけたし」
「それはそうかもしれないですけど……その人も、その人です。なんでここなんですか!?」
「何か、怒っていないか?」
「なんで、私が怒らないといけないのでしょうか? ただ、なんか失礼じゃない!?」
「工藤さんの方を持つ訳ではないけど、余程のことがあったんじゃないの……? そんな感じだったし」
「……ごめんなさい、少しむきになっていました。でも……私も、ここにいますからね」
「それは、構わないけど」
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