I(愛)の誕生(4)

 Iはネット回線を使い、勉強の旅へ行き、2時間が経ち。リビングのソファーでは、信也が爆睡中で当分起きそうにもない状態。


「……信ちゃん、もうすぐお昼だよ!? 起きてよ! なんで起きないかな……? あっ、そうか、徹夜だったもんね……仕方ないか……」


 Iは予定通りの時間に戻って来たが、爆睡中の信也を起こす気には慣れず。しかし、早くこの姿を見せたいと、逸る気持ちを抑えていた。

 すると、信也が目を覚まし、目をこすりながら。

「……何!? 誰か、呼んだ? 今の声は……夢か!?」

「夢ではないですよ。ごめんなさい起こして、私です、Iです」

 信也は声のする方を見ると、驚いた。そこには、テレビに映る3Dの女性が手を振っている。まるで、本物そっくり。

「……」

「起きましたね。私には熱感知センサーがついているけど、ここからでは動きだけしかわかりません。ですので、部屋に戻ってください」


 言われるがまま、信也は部屋に戻ると、モニターには3DのIが映し出され、その背景は自分の部屋なのか。

「どうです? 私、可愛いですか?」

「いったいそれは……?」

「えー!? 私、可愛くないの? おかしいな? 信ちゃん好みだと思ったんだけど……」

「私好み!?」

「えっ!? 違うの……?」

Iは、今にも泣きそうな表情を。信也は、泣かれては困ると。

「……わかった。可愛い、可愛いよ」

「本当に!? ヤッタね! 嬉しい……」

「でも、なんで、そんな風に?」

「だって、何もない画面だけじゃ、寂しいでしょう? それに、私はあなたの彼女だし」

「……そう言えば、さっき、熱感知センサーって言ったけど……他にもセンサーがあるの?」

「あるよ。半径10キロ圏内用のレーダーもついているし、電波制御装置に赤外線装置もついています。あとは、GPSがついていますけど、OFFになってます」

「その装置、必要と思うか?」

 あの時、信也は取扱い説明書を、ハードをよくチェックしていなかった。

「防御のためには必要です。しかし、私にはこんな装置などいらない……。でも、これは戦闘用のために作られた装置……。しかし、人助けに使えると思いますので、このままにしといてください」

「そうか、わかった」

「それと、目になるもの、耳になるもの、声になるもの、新しいのに交換して欲しいので、機材の資料をスマホにメールしましたので、よろしくお願いします」

「そうだな、わかった」

「聞きたいことがあるんですけどいいですか?」

「いいけど」

「人と一緒に共存できる人工知能を作り、病院、介護、町の安全を守る警備とか、いろんなところで働ける、頭脳を作りたいですよね?」

「確かに、そうだけど……ただ、Iを見ていると、1つの人格として見て上げないといけないと思っている……。これからのことを考えると、本当は恐いんだよ」

「怖い!?」

「感情持ち、自ら判断して生きていく中で、人間が行けない危険な所に行ったりして……じゃ壊れたら、次のやつを用意する……。結局、いいように使われる道具でしかないって思ったら、私のやっていることはいったい……」

「バカじゃないの……!? 私の想いや、あなたの想いが、間違っているとでも言うの? 違うでしょ!? そんなことを考えるなら、そうならないようにすればいいだけことでしょう? 違う? 悲しいこといわないでよね……。確かに、私は人間ではないけど、あなたのパートナーとして頑張るから……」

「すまない……。そうだよな、つい心配が先になって、でも、バカは言い過ぎだろう?」

「ごめんなさい……」

「いや、言われて当然かもしれないな」

「それで、これからどうするんですか? 私、何か仕事がしたいって言うか……」

「気分転換にドライブでも行きますか?」

「ドライブ!? いいですね。本物の景色を見て見たいと思っていました。これって、デートですよね? だったら、海に行きませんか?」

「……海ねー、いいんじゃないの。ここから1時間くらいだから、でも、モニターはどうする?」

「大丈夫、カーナビのモニターにリンクしますから。それに、車内カメラもついてるし」

「なるほどね、そういうこともできるんだ」

「凄いでしょ?」

「凄いな」


 これはデートなのか、よくわからないが、とりあえず海に向かい。途中で、目になるもの、耳になるもの、声になるもの、新しい機材を買い。信也はお腹も減り、ハンバーガーを買って食べ。カーナビのモニターには、楽しそうな表情のIが。

「やっぱり本物は違いますね……。私の中では画像をデータで見るのではなく、映像として見ることができますけど、本物はこんなにも違うんですね……」


 こうして2人が会話していると、まるで人間の女性と会話しているように感じる信也は、しばらく車を走らせると、左側に海が見え。

「信ちゃん、海が見えるよ……!? 海の水ってしょっぱいんでしょう!? わかんないけど、キラキラして綺麗ね……」

 今は2月中旬。まだ寒いが、太陽の日差しが海に反射して綺麗。

「ごめんな。ちゃんとした体があったら、風も海の水もわかるのに……すまない……」

「本当、そうだよ!」

「……」

「ごめんごめん、今の冗談だって、でも信ちゃんならできるって、気休めで言ってるんじゃないからね。だって、私がここに入るじゃないの!? 期待はしてないけどね……。えー!? そこはツコミが入るじゃないの!? もしかして、泣いてるの?」

「……別に、ほら、よく言うだろう!? 潮風が目に染みるってやつ、それだよ」

「はぁ!? そんなことわざ聞いたことありませんが? それに、窓、閉まっているんですけど!?」


 2人とも思わず笑ってしまい。車を走らせ、海沿いのドライブを楽しんでいた。

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