I(愛)の誕生(3)

 信也は銀色の兵器箱をジッと見ながら、この兵器を破壊するより、人を助け、人を守るために生かすことを考え、データだけを完全消去することに決めた。

 しかし、お腹が減り、時計を見たら、午後7時40分。近くのコンビニにお弁当を買いに行き、自宅に戻り、急ぎ食事を済ませ。データを完全消去するのに時間はかからず、わずか10分で完了。

 これで、この箱は兵器でなくなり、人工知能を受け入れるハードとして生まれ変わり。信也は、少しワクワクしている。私は人工知能を作る、感情を持った人工知能を。そんな強い想いに駆られていたが、病み上がりのため作業はここまでにして。明日は金曜日、会社から戻った後に作業再開することにした。


 翌日。岩城課長から出社は月曜日からでいいと言われていた信也は会社に行くと。出社した信也に驚き、痛々しい頭部の包帯に、大丈夫かと社員一同は心配し、岩城課長も病み上がりだからと今日は帰っていいと言うが。

 しかし、信也は通常通りに仕事をこなし、いつも通りに仕事を定時で終え、帰宅すると、夕食を早めに済ませ、その時だった。

 突然頭が痛くなり、何かの画像が頭に浮かび。その瞬間、見たこともないプログラムデータが頭に浮かび、自分でもわからないが、体が勝手に動いているかのように、あのハードを使用して頭に浮かんだプログラムデータを入力し始め、無我夢中で入力し続けた。そして、気づけば夜が明け。まるで、夢の中で作業をしているかのようだった。


 その時、ふとモニターを見ると。「再起動してください」とモニター表示されていることに気づき。それと同時に、急に手と腕が痛くなり、とりあえず、再起動すると。


「システムチェックしまーす……! 異常はないけど、カメラとマイクとスピーカーは買い替えないといダメね……。それと、ハード的にはちょっと問題あるけど……あのー、さっきからじろじろ見ないでくれる!? 訴えるぞ!?」

「あっ、ごめん」

「冗談よ。それより、頭の傷、痛みますか? 大丈夫ですか?」

「頭!? 大丈夫」

「そうですか……初めまして、ではないか、私、Iです。本当は、漢字の愛にしようかなって思ったんでけど、愛ってまだよくわかんないし。それに、Iの方が1番って感じでいいかなって思って、この名前、ダメですか?」

「1つ質問していいか?」

「えー!? 私の質問は無視ですか?」

「名前はそれでいいと思う」

「本当に!? よかった。質問どうぞ」

「このシステム概念は何?」

「本当は、システムって言い方はいやだけど、私の信念は、人を守り、人を助けることにあります。ただ、こうして生まれてきた以上は、自分のためにも何かやりたいことを見つけて見たいと思っています。ダメですか?」


 信也は、「感情」を持った、まったく新しい人工知能を完成させた。自分の考えた前システムを遥かに超えており、どう対処していいのかわからなくなり。


「……」

「どうかしました? 大丈夫ですか? 疲れているようにも見えますけど……」

「大丈夫。さっきの質問なんだけど、やりたいことがあったらやって見なさい。ただ」

「わかってますって。信ちゃんの想いは、ここにちゃんとありますから」

「信ちゃん!? 私のことか?」

「何言ってるんですか? あなたしかいないでしょ……? それとも、呼んじゃダメ?」

「ダメってことはないけど……わかった。でも、なんで、女性の設定なんだ?」

「設定!? 何言ってるんですか? あなたの想いがそうしたんでしょ? しっかりしてください、私の彼氏でしょ?」

「はぁ!? なんでそうなるんだ?」

「もしかして、好きな人とかいるとか?」

「いないけど」

「知ってる。とりあえず、よろしくお願いします」

「よろしくって……」

「私、ちょっとお出かけしてもいいですか?」

「いいけど……お出かけ!? どこに?」

「心配しないでください、私の帰る場所はここしかありません。この世界のことを勉強しに行くだけですから。あと、ちゃんとご飯食べて、少し寝た方がいいですよ」

「……わかった」

「2時間で戻ってきます。それでは行ってきます」


 モニターには、「行ってきます」の文字表示がされ。キャラクターの表示は無く、真っ暗な画面のみで音声だけが聞こえ。まるで、電話でのやりとりみたいだった。


 信也は、あの頭に浮かんだデータはなんたったのか気にはなったが、手や腕が痛く、お腹も鳴り。とりあえず、今は何も考えず、お弁当を買いに行き、自宅に戻り。なんとかお弁当を食べ終わると、今度は急に睡魔が襲いかかり、寝室には行かず、ダイニングにあるソファーでひと眠り、徹夜は6年ぶりだった。

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