I(愛)の誕生(2)
翌日。信也は予定通りに病院を退院し。車検の終わった車を自動車整備工場に取りに行き、自宅へ帰った。
リビングのソファーに座り、一息つき。頭に包帯をした、後頭部の傷が少し痛むが。運がよかったのか、頭蓋骨にひびはなく、脳にも異常がなくよかったと改めて思い、ふと警察官の話を思い出し。
しばらくして、ソファーに座っていた信也は、アタッシュケースの中に入っているゲーム雑誌を見るためにアタッシュケースを開けると。鍵が開かない、何度も鍵を開けようとしたが開かない。
3ヶ月前に買い替えたばかりのアタッシュケース。外見に見覚えのない傷がついている。もしかしたら、ぶつかった時に傷がつき壊れてしまったのか。そう思った信也は、近所にある知り合いの鍵屋に頼むことに。
この鍵屋は、今のアタッシュケースを買い替える前のアタッシュケースの鍵が壊れ。その時に鍵屋と知り合いなっていた。その鍵屋は、気のいい男。パソコンが苦手だが、どういうわけゲームには強い。鍵屋の社長で、年齢は50歳。
信也は、鍵屋の社長に連絡を取ると、15分くらいで来られると言う。その時に、つい地下鉄のホームでの事件のことを話し。
すると、鍵屋の社長は、テレビのニュースでその事件のことを知っており。その時、実名では報道されていなかったことを信也に話し、2人とも驚いた。
鍵屋の社長を呼び15分後。予定通りの時間に着いた鍵屋の社長。信也の頭部の包帯を見て。
「傷、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫、すみません、急に呼びたして」
「いえ、それはいいんですけど……。この間、パソコンの修理、本当に助かりました。あれから、バックアップはちゃんとやっていますので……あっ、それと、今日の作業代は、いただきませんので、この間のお礼です」
「いいんですか!? 助かります!」
鍵屋の社長は、さっそくアタッシュケースの鍵開けに入り、3分くらいすると。
どうやら、鍵は壊れているのではなく、ダイヤルの番号が違うとわかり。それと、両側の鍵も合わないと言う。
困惑気味の信也。なんで、どうして、疑問ばかり。番号を変えた覚えもなく、鍵も変えてない。まるで、狐に抓まれた感じとはこのことなのか。それとも、頭を打ったせいなのか、そんなことを考えていると。
鍵屋の社長は、ダイヤルのロックを解除し。両側の鍵も開け。鍵屋の社長は信也に、頭大丈夫ですかと冗談を言われ。冗談にもならず、信也は困惑気味の中、お礼を言い。鍵屋の社長は、マンションを出た。
信也はアタッシュケースを手に、リビングのソファーに行き。アタッシュケースを開けると、驚いた。中身は、ゲーム雑誌ではなく、別な物が入っていた。
頭を打ったせいではない。アタッシュケースがすり換わっていた。いったい、いつ、どこですり換わったのか。アタッシュケースが似ていたために、気づかなかった。やはりあの時、ホームでぶつかた時、それしか考えられない。そう思った信也は、アタッシュケースの持ち主を探すために、アタッシュケースの中身を調べることにした。
すると、とんでもない物が入っていた。それは、戦闘用人工知能だった。
そこには、運用マニュアルが入っており、英語で書いてある。戦術を自ら考え導き出し、あらゆる武器に搭載できるというもの。
いったい誰がこんな物を。そう思いながら信也は、運用マニュアルに書いてある、人工知能の本体という物を手に取った。
それは、12インチくらいの大きさで、厚さは7センチくらいの金属製の箱。側面には、ロック式USB端子がついている。普通のUSB端子は、抜き差しは簡単だが、外れやすいこともあり。信也は、ロック式USB端子を開発し。その形状が似ていた。
そして、運用マニュアルには、熱吸収装置(冷却用)を使用し。それを電気変化してバッテリーに応用と書いてあり。これも信也のアイディア似ている。
この状況を考えると。まさか、そんな思いがこみあげ。この戦闘用人工知能を起動し、確認してみることに。
幸いというか、大学在中に自宅で人工知能の開発するため、自費でいろんな機材を買い。その時、テスト用の機材を捨てずに取っていた。まさか、こんな形で使うこととは。信也はそう思いながら、特殊キーボード、マイク、スピーカー、カメラ、モニターを戦闘用人工知能に取り付け、起動スイッチをオンにすると。このシステムのチェック画面が表示され。
まさかが的中した。このシステムチェックは、信也が大学在中に考えたシステムチェック。こんな物を作れる人物は、ただ1人。そして、信也の考えた人工知能を利用したいと言った人物。それは、宗方准教授。
以前、信也が大学在中に、宗方准教授は、自ら人工知能の研究をしており。そのテスト中に、自らネットワーク操ってしまう危険性があることがわかり、信也に相談を持ちかけ。その時、信也は耳を疑った。
信也の人工知能(火事で焼失した、
信也はこれに激怒し、きっぱり断り、ただちに人工知能の開発中止するよう言った。その甲斐があり、宗方准教授は人工知能の開発を中止。信也はそのデータを消去に立ち会った。
なのに、どうして。信也は疑問に思いつつ、運用マニュアルの他に、別紙には、新型人工知能システムの開発に成功したと書いてあり。このシステムがどれほどものか、確認する必要があると思い。ID・パスワードが表示され、それを難なくクリアーし。ネット接続なしで起動すると。メニューには、戦闘用自立型システムと戦術アドバイザーシステムが表示され。戦闘用自立型システムを選択。
すると、システム音声が流れ。
「システム起動します。オーナーはあなたでしょうか?」
「私です」
「戦闘用の環境が整っていませんが。どういたしましょうか?」
「1つ質問がある。このシステムを作ったのは誰?」
「その質問には答えられません」
「質問を変えよう。
「データにはないようですが、お調べしましょうか?」
「いや、結構、システムを停止してくれ」
「わかりました。システムを停止します」
このシステムは間違いなく、宗方准教授が開発したもの。このシステムはこの世に存在してはいけないシステム。まずは、このシステムの全データをチェックする必要がある。そう思った信也は、全データをチェックすることにした。
10分後。全データをチェックしたが、宗方准教授に関わるデータは見つからなかった。しかし、信也の開発した人工知能のプログラムデータが使用されていた。
あれだけ反対をして中止になったはずなのに、なぜこんなものを。人工知能をなんだと思っている。それに、これは人工知能ではない、ただの兵器だ。完成度が非常に高く、恐ろしい兵器。これを警察に持って行くのが筋だが、下手にこれを警察に持って行けば、あいつなら、これを取り返すに違いない。何を仕掛けてくるかわからない、絶対にこれは渡さない。幸い、私のことや会社のことはバレてはいないはず。アタッシュケースの中身は、ゲーム雑誌しか入っていない。信也は人工知能をこんな目的のために使うことに、腹が立ち、いらだちを見せ、許す訳にはいかないと思った。
この時、信也の開発した人工知能のプログラムデータが使用されていたことに、深く考えていなく、別な想いが込み上げていた。
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