なかなか咲かない桜

hana

第1話

わしは桜の木の梢の先端にすでに開いた桜の花や。

みんなはわしのことを「ボス」呼びよる。

ただ、わし、いや、わしらに悩みがある。

ただ1つ、

まだつぼみのままで花を開こうとせんのや。



こいつ、「ヘタレ」と呼ばれるに理由がある。

あるとき、聞いてみた

「おい、みんなは花開いてんのにお前だけなんでつぼみやねん?」

「だって、花開いたら、あとは短い命で散ってしまいますやん」

「お前な、人かていずれ死ぬねん、花も散らんでどないすんねん?」

「わては、何を言われようが、つぼみのまんまでええんです」

奴はほんまに「ヘタレ」や。



ところが、

その「ヘタレ」が花開きよったんや。

なんでって?

「ヘタレ」が

隣の梢の桜の花の「ソメイ」にひとめぼれの上、

「一緒に咲きましょうよ♪」

とそそのかされたのである。

「ソメイ」は

この木のなかで、1、2を争う美人ならぬ美花である。


ほんまにヘタレで不純な動機であるには

ただただあきれるばかりだ。


『なんちゅう現金な奴や、「ヘタレ」は』

とあきれ返ったのは言うまでもない。

梢の奴もぼやいていた、

「あの「ヘタレ」はつぼみのままで枯れる気か?

咲いてなんぼが何しとんねん!」


幸い、咲いてくれただけましとするか。

わしも「ボス」として咲かせてみるかぁ。

そして、

時期が来てわしも「ヘタレ」も他のみなも見事に散って

桜のじゅうたんと化したのであった。

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なかなか咲かない桜 hana @hana0225

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