8話 〜風を操る者〜

【8話】〜風を操る者〜


一瞬でルミネートのリーダー的存在だと分かった‥‥‥。

それほどのオーラや風格を感じた。

男はゆっくり、一歩ずつ俺達の方へ歩いて来る‥‥‥。

「これが火の都の力だぁ!」

すると、数人の男の声が聞こえたので後ろを向くと、都の人達が戦っていた相手が丁度倒れたところだった‥‥‥。

「皆も勝ったか!‥‥‥なら最後はあいつ1人だ!」

俺は都の人達へそう言い、全員にあの男を認識させる。

「1人か?楽勝だぜぇ!」

すると都の人が最悪の発言をし、男に向けて炎を放とうとする‥‥‥。

俺とリラはその言葉を聞いた瞬間、後ろへ全力で走った。

そして、俺達が都の人達を完全に通り過ぎたとき、皆は一斉に炎を放った‥‥‥。

4人から放たれた炎は、逃げ場など無いほど広範囲で、道の真ん中を歩いて来る男を襲った。

だが、男が右手を突き出した瞬間、災害レベルの風が俺達に向けて吹いて来た。

炎は一瞬で消され、あまりの風の強さに俺達は吹き飛ばされてしまった‥‥‥。

「なんだよ今の‥‥‥。」

なんとか家の陰に身を隠し、相手を分析する。

「風を操る能力者ですよね、威力が段違いでしたけど‥‥‥。」

俺と一緒に風を回避したリラも、その威力に驚いているようだった。

「だが、風を起こすだけなら、近づけさえ出来ればどうにでもなると思う‥‥‥。」

実際はそうでも無いかもしれないが、このまま後ろに下がり続けては、城の地下にいる人達にまで危害がいくだろう。

それだけは、なんとしてでも阻止しなければならない。

「俺は空から飛んで攻める、リラは地上からあいつを狙ってくれ。」

とても簡単な作戦だが、

「分かった、頑張ろう!」

リラとそう言って別れ、俺は龍に変身し空へ飛んだ。

すると、地上から俺を睨むあいつと目があった‥‥‥。

その隙にリラは家の死角を上手く使いながらゆっくり距離を詰めていく。

頼むぞリラ‥‥‥!

俺は心の中でそう言い、空から猛スピードで男に接近する。

すると、男は右手を俺に向けて突き出した‥‥‥。

俺もそれを見て、体内から高火力の炎を吐く。

男の出した突風と、俺の吐いた炎が衝突する‥‥‥!

だが力の差は歴然、すぐに炎ごと俺の方へと返って来た‥‥‥。

「くそっ、こっちは殆ど全力でだってのに。」

男は今も俺を凝視しながら攻撃の準備をしている‥‥‥。

下を見ると、風で吹き飛ばされ、壁や家に体をぶつけたであろう都の人達が倒れている。

そして、その横をゆっくり進むリラの姿も見えた‥‥‥!

俺はもう一度、男に向かって突進して行く。

次は炎は吐かない‥‥‥風を流すことだけに集中する。

そう思っていたのだが、男は右手だけではなく両手を使って、全身と一緒に腕を振った。

直後、男の目の前に大きな竜巻が現れ、家や木を巻き込みながら俺達の方へと向かって来る‥‥‥。

「嘘だろ‥‥‥。」

すぐに後ろへ逃げようとしたが、竜巻の巻き込みに逆らえず吸い込まれてしまった‥‥‥。

大木や瓦や外灯に石、様々なものと竜巻の中で衝突し、俺は意識を保つので精一杯だった‥‥‥。

この竜巻は、男が手を止めるまで終わらないだろう。

リラや都の人達も竜巻に巻き込まれたかどうかは分からない‥‥‥。

ただ今は、死ぬ前に誰かが助けに来てくれるのを願うしかなかった。

すると、門の方から炎が飛んで来るのが見えた‥‥‥。

男はそれに反応出来ず、もろに炎を喰らった。

その瞬間竜巻が消え、俺はかろうじて残っている意識の中で炎の出所を見る。

「遅せぇょ‥‥‥。」

それは、最初の段階で都の外を遠回りさせた残り10人の都の人達だった。

そのまま俺は落下し、地面に落ちると思ったが、走って来たヒトナによって助けられた。

「アーク!大丈夫!?」

ヒトナがそう言ってくれるが、声を出せない。

それどころか、息が上手くできない。

どうやら肺をやられたみたいだ‥‥‥。

「ごめんねアーク!あと少しだから!」

ヒトナはそう言って謝ってくる。

ヒトナの能力は、触れたものの時間を10分まで戻すことができる。

しかし、一度触れたものには10分経つまでもう一度能力が使えないのだ。

だがそんな事で謝って欲しくない。

普通なら死ぬ怪我でも、あと少し生きていれば治るのだから‥‥‥。

俺は今も心配してくれるヒトナの声を聞きながら、ゆっくり眠った‥‥‥。




「‥ーク!‥‥アーク!」

暗闇の中でそう聞こえて目を開けると、そこは知らないベッドの上だった。

「良かった!目を覚ました!」

隣でリラが目を真っ赤にしながら手を握っていた。

「あいつは!?‥‥って!」

起き上がろうとした俺の背中に激痛が走った。

「まだ駄目ですよ!ヒトナの能力で時間を戻してもらっても、10分前は竜巻の中だったんですから‥‥‥。」

どうやら俺は無事ヒトナに助けて貰えたみたいだった。

助けてもらった時の10分前は、竜巻に入ってすぐくらいだったのかもしれない、背中以外には痛みは無かったのだ。

「目を覚まされましたか?」

すると、ドアから知らない女性が入ってきた。

「あ、ミランさん。」

リラがそう言って場所を空ける。

どうやらこの人が、この都の女王様のようだ。

「アークさん、この度は、私達の都の為に戦って頂きありがとうございました。」

ミラン様は俺の近くまで来ると、そう言って頭を下げた。

「いや、俺が勝手にやったことなので‥‥‥それよりもルミネートの奴等はどうなったんですか?」

俺は1番気になっていることをミラン様に聞いた。

「私が戻って来たと感じたのか、向こうのリーダーは生き残った仲間を連れて逃げて行きました。」

なるほど、狙いは女王じゃなかったのか?

それとも、女王と戦うまでに仲間が減ることを予想していなかったか‥‥‥。

「ダカルとミルファは無事なのか?」

俺はリラに2人の安否を聞いた。

「ミルファが多少怪我をしていますが、2人とも勝ってましたよ!」

そうか、良かった。

そんな思いが顔に出ていたのか、リラも俺を見て笑っている。

すると、ドアからミルファとダカルとヒトナが入って来た。

「おっ!アーク起きたのね!全く、敵にやられるなんてだらしないわね!」

再開早々ぶん殴ってやりたいがこの体では無理だ。

くそっ、こいつと戦っていた敵もっと頑張れよ!

「まあ、アーク達の相手が1番強かっただろうからな。俺もそっちが良かったぜ!」

そう言ってダカルは俺の肩を叩いてくる。

お前は相変わらずで何よりだ。

「アークごめん!能力使えるようになったら直ぐに戻そうと思ってたんだけど、相手の攻撃で一回吹き飛ばされちゃって‥‥‥戻すの少し遅れたの‥‥‥。」

そう言って申し訳なさそうにヒトナが謝る。

「いやいや、ヒトナがいなかったら俺死んでるから。本当ありがとな。」

俺がそう言うと少し笑って頷いてくれる。

ヒトナには俺達への遠慮を取っ払わないといけないな。

俺がそんな風に思っていると、

「アークさん、そして皆さん、改めて本当にありがとうございました!」

皆が集まったところで、ミラン様がもう一度頭を下げてお礼をしてくる。

「ああ。」

確かに今回はかなり頑張ったかもしれないな‥‥‥。

俺はしばらく休むとするか‥‥‥。


その日の夜、ようやく体を動かせるようになった俺は、城の2階でお葬式をしていた。

3人、あの竜巻に巻き込まれていたみたいで、姿を発見出来たときには既に死んでいたようだった。

「アークさん、貴方のおかげでこの都は守られたんです。何も責任なんて感じないで下さい。」

この都に来て最初に出会った男性がそう言ってくれる。

別に責任なんて感じてはいない。

ただ、普通に悲しいだけだ。

俺達と一緒に戦ってくれた仲間が死んで、ただ、泣きたいくらい悲しいだけ。

「次あいつらに会ったら、敵を打ってやりましょう。」

隣で泣いていたリラが、涙を拭いてそう言ってくる。

「そうだな‥‥‥。」

その為にも、もっと強くなろう。


「もう行かれるのですか?」

特別に城で寝泊りさせてもらった俺達は、目が覚めるとすぐに外出の準備をした。

「俺達は旅人だから、いつまでも泊まってはいられないんだ。」

本当は、すぐにでもあいつらを追いかけて再戦したい気分だ。

だが、今のままではあいつに勝てない。

だからもっと強くなる為に、再出発だ。

「では、またいつでも来て下さい!助けが必要になったらすぐに言って下さい!都の恩人の為に、いつでも参りますので。」

ミラン様はそう言って、笑顔で手を振ってくれる。

「その時は頼むよ!」

俺はそう返して、都を出た。

「バイバーイ!」

「さようなら!」

「じゃあな!」

「さようなら。」

4人も都の人達にそう別れを告げ都を出てくる。

「よしヒトナ、この近くには何がある?」

俺はヒトナにそう聞いた。




《キャラ&能力紹介》

〈エイト〉S−

風を操る

〈ミラン〉?

命を宿す 柔(炎を操る)






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る