6話 〜火の都〜

【6話】〜火の都〜


無事ミルファとも合流し、俺達は次の目的地を目指して歩いていた。

「ねぇ、次はどこ行くの?」

さっきまで置いて行かれた事に怒っていたミルファがそう聞いてくる。

「俺達の旅にどこ行くなんてないぞ?適当に歩いて適当に戦う。」

と、今後の方針をミルファに話すと‥‥‥

「え!?目的地決めないの?」

驚いた様子でリラに聞かれる。

「俺は世界の事なんも分からないからなー、なんならリラが決めてくれていいぞ?」

1番この中でまともなのはリラだろうからな‥‥‥。

と思っていたが、新しくヒトナが仲間になったんだったな。

「ヒトナは世界の事とか分かるか?」

俺はヒトナにそう聞いた。

「いずれ世界の全ての場所を周りたいと思うくらいには調べていますよ!」

なんと頼もしい仲間だろうか‥‥‥!

「じゃあ、この辺に何があるかとか分かるか?」

俺は早速ヒトナに頼って目的地を決めようとする。

「この辺りは‥‥‥火の都、テイラン帝国、阿修羅山くらいでしょうか?」

「へぇ、本当に詳しいんだな!阿修羅山は俺も聞いたことあるぜ!」

ダカルが自慢げにそう話す。

「じゃあそこにするか?」

ヒトナとダカルの会話を聞いてそう提案したのだが‥‥‥

「いや、あそこはやべぇ‥‥‥。万が一阿修羅の機嫌が悪かったりすると俺達全滅だ。」

「レートS+の阿修羅、その山の中にある寺に住み着いている方です。」

そいつがいるから山には行けねえとか、なんて迷惑な奴なんだ。

しかも機嫌次第で喧嘩するしないとか、ほとんどヤンキーじゃねえか‥‥‥。

と、もう一つ気になった事を聞く。

「そういえばカナタ帝国でも聞いたんだけど、レートってなんだ?」

俺はヒトナに向かってそう聞く。

「そんな事も分からないの〜?しょうがな‥‥‥」

「お前には聞いてねえよ。」

鬱陶しい顔で喋り出したミルファの頭を押さえて黙らせる。

「レートというのは、世界連盟の人達が定める危険度の事です。どんな善人でも、国の兵士だろうと、実力があれば付けられてしまいます。」

世界連盟、流石にそれは聞いたことあるな。

確か世界から羽の存在を消そうとしている組織だった気がする‥‥‥。

「俺とダカルはBレートを目指しているんだが、いけそうか?」

参考程度にヒトナにそう聞いてみる。

「2人の実力が分からないので何とも言えないですが、Bレートはそこまで難しく無いと思います。」

なるほど、まあそれならいけるかもしれないな。

「結局次どこ行くの?」

すると静かに話を聞いていたリラがそう言う。

「火の都って所はどうなんだ?」

名前からして暑そうな所だが、人が住めるような場所なのだろうか。

「あそこは何も問題無いと思いますよ!」

「じゃあ火の都にしようか。」

俺がそう言うと3人は頷いてくれた。

「ねえ、最近アークの私の扱い酷くない?」

今まで頭を押さえられていたミルファが、髪を直しながらそう言う。

「ああそうだったな、怒った後は‥‥‥。」

俺はそう言いバナナを取り出してミルファに渡す。

その時の俺の優しい笑顔といったら、ペットを可愛がる主人のような‥‥‥

するとミルファがバナナを地面に叩きつけた。

「おいっ!何すんだよテメェ!」

「こっちのセリフよ!いい加減私への猿扱い辞めてちょうだい!」

そんなやり取りをしている俺達を見ていた3人が‥‥‥

「またイチャイチャして‥‥‥」

「お前ら2人が1番仲良いよな!」

「ふふふ、まるで痴話喧嘩ですね!」

そんな事を言い出した3人に、

「ふざけんな!」

「ふざけないで!」

見事に言葉が被った。


それからしばらく歩き、火の都の入り口が見えてきた。

遠くから見ている限りではそこまで大きな都には見えない。

「思ってたより小さい国なんだな。」

俺がそう言うと、

「人口200人程度の‥‥‥都よりは村という感じですよ?」

そう答えたのはヒトナではなくリラだった。

「リラここ詳しいの?」

「私の故郷と火の都は昔から交友関係にあるんですよ!だから多少は知ってるんです!」

火の都と交友関係か‥‥‥リラの能力からして、水の都だったりしてな。

「もしかして水の都とか!?」

と、後ろからミルファがリラにそう聞いた。

どうやら俺の予想は外れたようだ‥‥‥。

「ええ正解です!よく分かりましたね!」

「合ってるんかい!」

いけない、つい突っ込んでしまった‥‥‥。

それよりも、ミルファが交友関係や水なんて難しい言葉を知っていたとは‥‥‥。

そんな感じで歩き続け、俺達は火の都に着いた。

「火の都って、どこが火なんだ?」

ダカルが着いてそうそうにヒトナに聞く。

「すみません、それは私もよく分かってなくて‥‥‥。」

申し訳なさそうにヒトナが謝る。

だが本当に何故火の都なのだろうか‥‥‥。

家は石でできていて、灯りも電球が使われている。

火のようなものは一切見当たらない。

「都の人全員が火に関係ある能力を使えるから、火の都って呼ばれているんですよ!」

すると隣でリラがそんな事を言い出した。

「そうだったのですか!?初めて知りました!」

それを聞いたヒトナは嬉しそうに都を眺めている。

本来能力や戦闘技術なんて、その道で生きて行こうとする者以外には無関係の力だ。

それを都の人全員が習得しているとは、恐ろしい国だ。

「でも、能力なんて全員が持ってる筈無いわよね?」

ミルファも気になったのかリラに質問する。

「昔から火の都では、柔の力で火を操る方法を都のもの全員に教えているんです。」

柔の力で火をか‥‥‥確かにそれなら能力がなくても火を使えるが‥‥‥それでも全員がちゃんと習得出来るまで鍛えられるというのは凄い団結力だ。

「とりあえず入ってみようぜ。」

ダカルがそう言い都の中へ入って行った。

俺達もそれに習い後ろを付いて行く。

「人全然いねえじゃねえか!」

ダカルがそう言うが本当にその通りだ。

さっきから家や公園、建物などは見かけるが、人の姿が全く見当たらない。

「何かあったんでしょうか?」

ヒトナも周りを見ながらそう呟く。

「確かに、ここまで中へ入ってきて誰もいないというのはおかしいですね。」

この都に1番詳しいリラも、これが異常だと教えてくれる。

「どっか行ってるんじゃないの?」

馬鹿は無視だ‥‥‥。

「あ、あれがこの都の中心部にある城です。」

リラがそう言って指差す先には、城と呼ぶには若干小さいと感じるくらいの建物があった。

というか、本当に中心まで来たのに誰とも合わなかったな‥‥‥。

しかし事態はそんなレベルではなかった‥‥‥。

「城にも誰もいねえのか?」

1番に城に入って行ったダカルがそう言う。

流石にそれは有り得ないだろうと、そう思ったが本当に誰もいなかった。

しかし、

「誰かいるのか!?」

すると、城の地下から声が聞こえてきた。

いきなりの声に全員が驚く。

「観光に来た者です、誰もいないから勝手に入って来てしまいました、申し訳ありません。」

怒られると思い、つい謝りながら喋ってしまった。

「確かに奴等じゃないな‥‥‥。」

誰かがそう言ったかと思ったら、突然床が開いて1人の男性が出てきた。

「せっかく観光に来てくれたところ悪いが、今日は帰りなさい。今都はそれどころじゃないんだ。」

男性は悔しそうに地面を見ながらそう言う。

「何があったんですか?私は水の都の出身のリラと言います!」

誰よりも早くそう聞いたのはリラだった。

「水の都の!‥‥‥まあ別に隠す事は無いから良いんだが、実はとある人達に襲撃を受けて‥‥‥。並の相手なら俺達も出て戦うんだが、今回はちょっと相手が悪くてな。普通の国民は城の地下に避難してるんだ‥‥‥。」

男性は冷静にそう話してくれるが、表情からただごとでは無いことが分かる。

「なら俺達にも手伝わせて下さい。」

俺は男性に向かってそう言った。

「いやいや悪いよ!すぐにでも逃げなさい!」

そう言って俺達の事を心配してくれるが、そういうのは無用だ。

「俺達は神を目指して旅をしているんです。だから、今後目の前に現れる敵から逃げる訳にはいかないんだ‥‥‥。」

「え?そうなの?」

「そうらしいよ。」

小声でヒトナとミルファが何か言っている。

そういえばヒトナには適当に観光すると嘘をついたんだった‥‥‥。

「そうなんですか‥‥‥では、お願いしても宜しいのですか?」

「任せて下さい。」

無事任された俺達は何が起こっているのかを詳しく聞くことにした。

「今、この都を襲って来ているのは、

ルミネートの人達なんです‥‥‥。」

更に男性の表情が険しいものになった。

ルミネート?何かの組織か何かだろうか。

「だってアーク!頑張りなさいよ!」

「私も心から応援しときます!」

「神になるための、最初の試練ですね!」

ミルファとヒトナとリラがそんな事を言いながら城を出て行こうとする。

「いやいや、俺達仲間だろ?」

とびっきりの笑顔でダカルが3人を捕まえる。

「「「いやぁぁぁぁぁぁあ!」」」

3人が悲痛の叫び声を上げる、ミルファに関してはガチ泣きしている始末だ‥‥‥。

どうやら相手は相当ヤバイみたいだな。




《力紹介》

〈柔〉

世界の全員が持っている力で、人それぞれのイメージや修行方法でその力が変わり、その力の在り方は十人十色だ。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る