4話 〜カナタの兵士〜
【4話】〜カナタの兵士〜
運命女に連れて来られたのは、カナタ帝国の中心部だった。
向かう途中、所々の家や建物が壊れているのを見ると、戦争の被害がどれ程だったのかを物語っていた。
「少しここで待ってて頂戴ね!」
そう言って女が大きな建物の中へ入って行く。
「何なんだ?報酬でも貰えんのか?」
ダカルが建物を見ながらそう呟いた。
「じゃあその報酬で甘い物食べに行きましょうよ!」
「あなたは本当に夢が無いわね〜、国を救ったのよ!?きっと大きな家が買えるわ!」
旅をしてる俺らが何の為に家を買うのかは後で聞くとして、もし本当に報酬なら馬が欲しいな‥‥‥歩くのは面倒だ。
しばらく待っていると、さっきの女が1人の男性を連れて戻って来た。
「この方々ですヤマト様。」
さっきとは違って、真面目な雰囲気で女が俺達を紹介する。
「ローランの軍を壊滅させてくれたというのは本当か?」
すると、ヤマト様と呼ばれていた男が俺達に尋ねてきた。
「はい、あくまで正当防衛としてですが。」
無駄に自分達から襲ったなんて言ったら信用が無くなるかもしれないからな‥‥‥。
「嘘よ!この男‥‥‥神になる為の第1歩だ!殺れ!とか言っ‥‥‥」
猿が余計な事を言う。
リラに口を押さえられ何も言えなくなったが、もう手遅れだ。
「神‥‥‥それは本気で言っているのか?」
ヤマトが俺に鋭い眼差しで聞いてくる。
まあバレてしまっては仕方ないし、別に隠すことでも無い。
「子供の妄想とでも思ってくれて良いですよ‥‥‥。目指してるのは本気ですが。」
俺はそう答えヤマトを睨み返す。
なんで睨んだのかというと、とりあえず舐められない為に一応やっといた。
「良いんじゃないか‥‥‥?それくらい目標が高い方が頑張れるさ‥‥‥。」
笑われるかと思っていたが、意外とそうでも無かった。
だが相変わらず無表情のままなので、何を考えているのか全く分からない。
「君達に1つ提案があるのだが、今時間はあるか?」
するとヤマトがそんな風に話してきた。
「はい無限にあります!何でも言って下さい!」
馬鹿がバレるからこいつには喋って欲しくないな‥‥‥バナナあげれば静かになるか?
「そうか‥‥‥じゃあ早速言わせてもらうが、君達にカナタ帝国の兵士になって貰えないか‥‥‥?」
「「「「兵士?」」」」
やばい、見事にリアクションが被ってしまった‥‥‥俺もアホだと思われてしまう。
「ああ、君達の戦闘能力は素晴らしい。勿論ただとは言わないし、必要な時だけ戦闘に参加してもらう形で構わない。」
「え!?ただじゃないってどれく‥‥‥」
「ちょっと黙れ!!」
また馬鹿なことを言おうとしたミルファの頭を殴り黙らせる。
「それはこの案に乗ってくれた場合に教えてる。今はこれだけで、やるかやらないかを教えてくれ。」
カナタの兵士、正直何かに縛られて行動するのは嫌いだからやりたくはないが、必要な時だけ戦闘に参加というのは魅力的だ。
「はい、やらせて貰おうと思います。ただ、俺達も世界を旅しようと思っているので、召集は早めにお願いしたいです。」
3人の方を見ると、ダカルとリラが頷いてくれたのでこれで良いだろう。
ヤマトの隣に立つ女も、表情が明るくなりガッツポーズまでしだした。
「そうか‥‥‥召集の件については上手くやろうと思う。とりあえず契約成立だな、これから宜しく頼む。」
ヤマトはそう言って建物の中へ戻って行った。
「ありがとね!本当ありがとう!もう人がいなくていなくて‥‥‥資金はあるのに兵力が無いこの帝国にピッタリの人材だよ!」
女が涙を流しながら俺達に順番に握手をしていく。
「あ、私はカナタ軍の指揮官、カリンといいます。さっきのヤマト様はこの帝国の王であり、カナタ軍の総長でもあります!」
「国と軍のトップか!すげぇな!」
ダカルが驚くのも無理はない、一人で国と軍を動かすなんて労力がやばい。
しかも総長ということは実力もトップなのだ‥‥‥さっき睨んだ事を後で謝っておこう。
「でも、この国がそこまでピンチとは思いませんでした‥‥‥。」
「そうよね、このエリアでも強い方の国なんじゃないの?」
やっと復活したリラとミルファがカリンに尋ねる。
「この国は昔からずっと兵が足りてないの。ヤマト一族のおかげでなんとか力を保っている感じかな‥‥‥。」
カリンが少し俯きながらそう答える。
きっとヤマトに負担をかけていることを申し訳なく思っているのだろう‥‥‥。
「ま、俺達が来たところで大して変わらないと思うが、改めて宜しく頼む。」
少し慰める感じで俺はそう言った。
「いえいえ変わりますから!皆さんの戦いはこの目で見ましたから!まあとりあえず軍の人達に紹介するので付いて来てください。」
カリンにそう言われ俺達は建物の中へ入った。
どうやらここが軍の施設のようだ。
中へ入り、また外へ出て奥へ行くと、多くの人の声が聞こえてきた。
そこでは男女問わず、能力や武器を使って訓練に励む人達の姿が見えた。
「皆さん、一度訓練を辞めて下さーい。」
カリンがそう言い、一斉に全員がこっちを見る。
流石に軍の人達なだけあって、風格や目がかなり厳つい。
リラが驚いて俺の後ろに隠れるくらいだ。
「新しくカナタ軍の助っ人に来てくれました‥‥‥‥‥ やばい名前聞くの忘れてた、言って言って!」
途中まで良い感じで紹介してくれてたのに残念な人だ。
「アークです、そしてリラとダカルとミルファです。あまり戦力にはなれないかもしれませんが、宜しくお願いします。」
俺がそう言って礼をすると、残りの3人も俺に習って礼をする。
横目でミルファを見ていたが、問題なく出来ていたので良かった。
「「「「「おおおおおおおおお!」」」」」
するとさっきまで俺達を威嚇していた軍の人達が一斉に雄叫びをあげた。
「やったぞ!」「これで一気に楽になる!」
「あの黒髪姉ちゃん可愛いぞ!」「いかついのもいるなぁー。」
まさかの歓迎に多少は緊張が緩む。
それぞれが好き放題に感想を飛ばしている中、1人猿がいることが分かったな‥‥‥。
「はいはい静かにー、ミト隊長はこっちに来てくれる?それ以外は訓練再開!」
カリンがそう言うとすぐに訓練を再開した。
こういうところはしっかりしているみたいだ。
すると身長170センチくらいの少年が俺達の方へ歩いて来た。
隊長というには若すぎるような見た目だ。
「君達はこのミト隊長の部隊に入って貰います。はいミト隊長自己紹介!」
カリンにそう言われ少年がこっちに向き直る。
「俺はイナリミトで24歳だ。笑うのを我慢しているそこの黒髪女は後でぶっ飛ばすとして、とりあえず宜しくな。」
そう言って俺に握手をしてきた。
24歳?きっとこの国では半年に一回歳を取るのだろう。
もしくは場を和ませるための軽いジョークかもしれない。
順番に俺達に握手をしていき、ミルファが痛い痛い!と叫び終え、俺達はミト隊長に付いて行った。
「こいつらが俺の部隊の兵士だ、仲良くやってくれ。」
ミト隊長はそれだけ告げ俺達を置いてどこかへ行ってしまった。
後ろを見ると、ミト隊長の部隊と紹介された人達が寄って来ていた。
「宜しくお願いしますね!私ヒトナと言います!」
「俺はゼンだ!宜しく!」
と、そんな感じで名前を言ってくるが全然覚えられない。
覚えられる訳がない。
「俺はアークだ、実際に戦闘するとき以外はあまり顔を出せないかもしれないが、宜しく頼むよ。」
俺が皆にそう言うと、おう!と返事をしてくれた。
正直戦闘の時だけ出てくるっていうのは非難されると思っていたが‥‥‥俺が思っている以上に兵力が足りてないのかもしれない。
「みんな宜しくね!私が来たからには、この国は任せなさい!」
「「「うぉーー!」」」
あの馬鹿にどこからその自信が湧いてくるのかは分からないが、こういう場面では必要な頭の悪さかもしれないな‥‥‥。
その日の夜、俺達は1夜だけこの施設に泊めて貰う事にした。
ミト隊長の部隊の皆と夕飯を食べていると、
「ねえ、旅してるって言ってたけど、どこを目指してるの?」
先程ヒトナと名乗っていた女がそう聞いてくる。
「どこっていうか、まあ適当に戦うだけだよ。」
神を目指しているというのはやはり恥ずかしいので適当に濁した。
「良いなぁ、私も旅したいな〜。」
「じゃあ来るか?絶賛仲間募集中なんだ。」
「え?良いの?」
こいつは常識がありそうだし、年も俺達と同じか少し上くらいだろう。
カナタ帝国の兵士だ、実力も知識も十分にあると思う。
俺が求めていた人材にぴったりの人だ。
「明日の朝にはここから出て行くから、それまでに来れるなら来てくれ。」
「分かりました!」
そんな簡単にこいつが旅に出られるかは分からないが、一応希望程度にそう言っておいた。
「じゃんじゃん持って来て!」
向こうではミルファと仲良くなった男達が一緒に酒を飲んで盛り上がっている。
あいつはここにおいて変わりにヒトナを連れて行こう‥‥‥。
リラは俺の隣で静かにご飯を食べている。
ダカルは‥‥‥あれ?ダカルはどこ行った?
さっきまで一緒にいたダカルの姿が見当たらない。
「なあリラ、ダカル知らないか?」
「ダカル?そういえばいないね。どこいったんだろう。」
リラも周りを見ながらそう答える。
その時、
ズドーン!!
と、さっきまで俺達がいた訓練場から大きな音が響いて来た。
《能力&キャラ紹介》
〈カリン〉B
物体の形を自由に変える
〈ミト〉A
岩石を操る
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