3話 〜旅の始まり〜
【3話】〜旅の始まり〜
ある程度仲良くなり、お互いの事を知った俺達は店を出てトパリクト帝国の外へ向かっていた。
「それにしても、神を目指すなんて凄いですね!アークが神になった時は、一生遊んで暮らせるくらいのゴールドを貰いましょう!」
元気よくリラがそんな事を言ってくる。
「神になれるほどの力があればゴールドなんて余裕で稼げるわ。もっと大きな願い考えとけ。」
願いが浅いリラにそう指摘する。
「じゃあ俺は可愛い子と結婚できるようにしてくれ!こんな見た目じゃ、俺なんか選んでくれる子なんていないだろ?」
次はダカルがそう言ってくる。
「それはお前が種族の壁を越えようとしてるからだよ。大人しく豚と結婚すればいいじゃないか。」
そう言うと、ダカルが無言で殴り掛かって来たので華麗に躱す。
ドーーン!!
するとさっきまで俺がいた地面に穴があいていた。
「マジかよ‥‥‥お前も病院に行ってこい。あ、動物病‥‥‥」
最後まで言い終える前にダカルがもう一発殴りに来た‥‥‥。
しかし、さっきまでダカルがいた場所にはミルファがいた。
「助かったよミルファ!お前は本当に良い奴だな〜。」
ミルファの能力によって、ダカルはもう少し後ろの方へ移動させられ地面を殴っていた。
「まあ落ち着きなさいダカル?アークはこういうやつだから慣れるしかないわ‥‥‥。」
ミルファがやれやれって表情でこっちを見てくる。
こういう奴とはなんだ、仲間にアドバイスをしただけなのに酷い言いようだ。
「いや怒ってないから大丈夫だぜ!」
するとダカルか満点の笑顔でこっちに歩いて来る‥‥‥。
俺はダカルを警戒し少し後ろに下がった。
「本当に怒ってないからな!いや、さっきは少しイラッとしたがもう大丈夫だ!」
少しイラッとしただけで地面に穴を開けるほどのパンチを人に繰り出すのか‥‥‥。
「まあまあ、一旦終わりましょう!それでアーク、今からどこに向かうの?」
この3人の中で1番常識があるのはこいつだな。
俺達より2才年下なのに‥‥‥。
俺とミルファとダカルは同い年だった。
だがこいつらは脳年齢がかなり低い‥‥‥だから俺とリラがしっかりしないといけない。
「とりあえずもう少し仲間が欲しいからなぁ。この帝国の隣にあるカナタ帝国ってところを目指そう。」
カナタ帝国はこのエリアでも4.5番を争うほど力のある帝国だ。
現在戦争中らしいが、入ることはできるのだろうか。
「良いですねカナタ!ただ、今はローランという王国と戦争中らしいので、道中は気を付けましょう!」
リラがそう言って俺達に教えてくれる。
なんて可愛くて頭の良い子なんだろうか。
感動で半泣きになっていると、後ろからキーキーブヒブヒ聞こえてきた。
「分かった分かったバナナだろ?買っておいたから興奮するな!」
親切な俺はリュックからバナナを取り出しミルファに渡した。
「ねえダカル、やっぱり今のうちに殺しといた方が良いと思わない?」
「全くその通りだな。手伝うから殺ってしまおう。」
後ろで物騒な事を言い出した2人を無視して、俺とリラはカナタ帝国へ向かって歩き出した。
しばらく歩き、カナタ帝国が見え始めた頃に変なものが見えた。
「あれ何?人?」
きっとカナタ帝国へ入る門であろう場所の前に、大勢の人間らしき影が横たわっていた。
「あれは人ですね、きっと戦争でやられた人達に違いありません。もしかすると、今もう帝国の中で戦っているのかもしれません‥‥‥。」
マジか‥‥‥凄いタイミングで来てしまったものだ。
そしてもう少し歩き、倒れていたのが人だと確認し、門の中へ入るかを考えていた。
「ねぇ、今行く必要ないんじゃない?帝国同士の戦争なんて規模が違うわ‥‥‥!」
珍しく的を得た発言に驚いたが、確かにその通りだ。
今行っても仲間集めどころではないだろうし、俺達もカナタ帝国の兵士だと勘違いされて攻撃されては堪ったもんじゃない。
「そうだな‥‥‥しばらく離れたところで待って、落ち着いてから中へ入るとするか‥‥‥。」
俺の意見に3人とも頷き、門から離れようとしたその時だった。
「やべ、絶対ローランの軍だ!」
1番に気づいたダカルが門の外を指差してそう言う。
そこには数十人の人が列を組んで走って来ていた。
「ど、どうしましょう‥‥‥!話したら分かってくれるかな‥‥‥?」
「いや多分無理ね、戦争中の兵士がそんなことを信じると思えないわ!」
リラもミルファも落ち着きなく話している。
「おいお前ら落ち着け。俺達の目標は神になる事だぞ!?こんな相手戦うに決まってるだろうが!」
俺は3人にそう言い向こうから走って来る軍勢を見る。人数の少なさに、今更来ているということはただの追加の軍に違いない。
そんな軍に強敵がいるとは思えないし、俺達だけでも勝てるだろう。
「そうだったな!やってやろうじゃないか!」
「頑張ります!」
「俺達の目標は神って、私を一括りにしないでくれる?私はそんな無謀な事を目標にするような馬鹿じゃないの。」
良い感じで皆のモチベーションが上がって来たところでミルファが余計な事を言う。
「安心しろ、俺達っていうのは俺とリラとダカルのことだ。流石に野生のメス猿にそんなことさせねぇよ。」
「上等よ!1番活躍して2度とそんなこと言えないようにしてやるわ!」
無事ミルファもやる気が出てきたところで俺達は軍を見る。
すると、列の中央で走っていた人が手を上げ軍の動きが止まった。
「殺意を感じる。カナタ帝国の者だろう、殺れ!」
男がそう言った瞬間、数十人の兵士がこっちに走って来た。
「殺意を感じる。ローラン王国の者だろう、殺れ!」
俺は3人にそう言い前へ走り出した。
そして能力を使用する‥‥‥。
頭から尻尾へは約4メートルくらいの龍に姿を変え、熱を放出しながら軍に向かって飛ぶ。
「な‥‥‥変化系の能力者だと‥‥‥!しかも龍なんて滅多に見ないぞ!」
中央で指示を飛ばしていた男がそう言う。
龍に変身した俺はスピードとパワーも格段と上がる。
剣に魂を溜めて切り掛かって来る兵士の攻撃は見事に当たらず空振りする。
流石に当たればダメージを喰らうが、所詮雑魚兵士1人
の攻撃だ。
全力を出さないスピードでも軽く躱せる。
「ちょこまかと!」
「熱がうざくてあまり近づけねぇな‥‥‥。」
「だが逃げ回ってるだけだ、攻撃できないのか?」
兵士達が何か言っているが、きっと、あの龍強い上に格好良い!スゲェ!惚れるぜ!とかそんな感じだろう。
褒めてくれるのは嬉しいがあいつらは敵だ。
俺は空から急降下し、地面に向かって炎を吐く。
「「「ぐぁぁぁぁぁ!」」」
炎は兵士達に直撃し、黒い煙が辺りを覆った。
俺は尻尾を振って風を飛ばし煙を晴らした。
すると、指示を出していた男が、手をボロボロにしながらも立っていた。
「うそ、やるな!」
きっと魂で守ったのだろうが、それでもあれに直撃して耐えられるとは思わなかった。
「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥クソがぁぁ!」
男は叫びながら、魂を込めた剣を全力で投げて来た。
「はやっ!」
ギリギリ避けたと思っていたが、体の一部から血が出ている‥‥‥。
どうやら少し当たってしまったみたいだ。
最後の力を出したのか、男はそのまま倒れて動かなくなった。
さて、3人はどうなってるかな?
そう思って後ろを見ると、既にリラとダカルは無事勝利しており、ミルファの戦いに目を向けていた。
「どんな感じだ?」
俺は人間の姿に戻り、2人の側へ寄ってそう聞いた。
「あ、お疲れ様ー。こっちまで熱が届いてたよ!暑かった〜。」
リラがそう言い服をパタパタさせる。
「ミルファも良い感じだぜ。破壊力はそんなにねえが、相手は戦い辛いだろうな。」
ダカルの言葉を聞きながら俺はミルファの戦闘を見ていた。
何度も何度も兵士と場所を入れ替え、場を乱しながら1人ずつ確実に倒している。
これでは相手も連携も何もないだろう。
隣にいる仲間と距離を取ろうとするが、同じ考えの他の仲間に近づいてしまい、突然ミルファに姿を変えナイフで刺される。
ひたすらそんな事を繰り返され徐々に数が減っていった。
そして、相手が最後の1人なると、ミルファは相手に向かって全力で走り出した。
敵もミルファに向けて走り出し、剣を振る。
しかし、直前に場所を入れ替えられた兵士はそのまま空を切った。
しまった!と、そう思ったときには、既に後ろに来ていたミルファに背中から刺されて崩れ落ちた。
「どうよアーク!これで少しは見直したかしら?」
「あぁ、素直に凄いと思う!見直したよ!」
心からの本心だ。正直あまり戦闘向きの能力とは思っていなかったからな‥‥‥普通に驚いた。
無事全員勝利し、俺は軽い止血をしながら門へ向かった。
すると、門の中から、
「これは運命よ!!!」
と言って1人の女性が飛び出して来た。
何も話さなくても分かった‥‥‥こいつも馬鹿なのだろう。
《力紹介》
〈魂〉
この世界の全員が持っている力で、体にある魂を、手や足、剣に込めて攻撃したら防いだりできる。
魂の力が大きいほど威力も上がるし、他にも様々な使い方がある。
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