2話 〜新しい仲間〜
【2話】〜新しい仲間〜
ミルファの余計なちょっかいが無くなったことで、俺達はスムーズに森を抜けた。
「てかなんであんな嫌がらせしてたんだ?」
普通に考えて全く知らない人にいきなり能力を使って嫌がらせをするだろうか。
「暇だったからよ‥‥‥?」
何か?みたいな顔で答えてくる。
こいつはそうだったな‥‥‥。
一緒に行くと言った以上、もう少しだけ頭のネジを締め直して貰わないといけないな。
「じゃあ別の質問。なんであんなところにいたんだ?」
普通に考えて理由もなく森の中に立ち入るやつはいないだろう。
「暇だったからよ‥‥‥?」
また能力を使ったのだろうか?
さっきと1ミリも違わない腹立つ顔がそこにある。
「ねえ、次私が1つ質問するね!何才なの?どこから来たの?」
1と2の違いから教えないといけないのか‥‥‥。
普通に2つ質問しているが‥‥‥。
「18歳だ。さっきの森をもっと奥まで行くと小さな村がある。俺はそこから世界を旅する為に出て来たんだ。」
まあ、旅といっても、観光なんかではない。
命がけの、神になるための戦争へ参加するのだ。
「へぇ〜、それで?旅の目的はなんなの?」
「神になる為に戦いに行くんだよ。」
笑われるだろうな。
こんな女の能力にまんまと引っ掛かって時間を潰すようなやつにそんなこと言われたらな‥‥‥。
「‥‥‥プッ!‥‥あははははは!」
案の定笑われた。
ただ思っていたよりもウザいな‥‥‥殺っちまうか?
「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥でも、良いんじゃない?自分の決めた事を為そうと頑張る人を、笑う人なんていないわよ。」
あ?
「今お前大爆笑してたろ‥‥‥。いいよいいよ、俺も無謀だなって思うし。」
意気込んで村を出てきたものの、冷静に考えてみれば出来る筈がないだろう。
この世界には常識外れの化物なんていくらでもいる。
そいつらと戦っていかないといけないのだ。
「ねぇ‥‥‥私もそれ、参加していい?」
と、急に真面目な雰囲気でそんな事を言ってくる。
俺を心配してくれているのか、それともまた暇だからとか言うのだろうか。
どっちにしても、俺の答えは1つだ。
「頭の病気が治ったときには、一緒に世界を周ろうぜ!」
俺はそう言って優しくミルファの肩に手を置いた。
「お、見えてきたな、あれがトパリクト帝国か?」
「そうね、このエリアでは最も栄えた国よ。」
先程俺の言葉で大泣きしだしたこいつを、一緒に行くからと宥めて今に至る。
まさかミルファが、自分が馬鹿なのを無自覚とは思っていなかった。
それからしばらく歩くと、国への入り口のような場所に着いた。
「ここから入れば良いのか?」
俺はミルファに聞くが返答が無い。
「おいミル‥‥‥ファ?ミルファーーー!」
俺の横ではミルファが倒れていた。
「大丈夫か?おい!ミルファ!」
何度も名を呼んでいると、ようやくミルファが目を開けた。
「あ、ごめんなさい、お腹が空いて力が出ないの。」
俺はリュックをこいつに叩きつけた。
心配して損した‥‥‥。
「それで、なんでこんなとこに来たの?」
ミルファがそう聞いてくる。
「村長さんが、まずはトパリクト帝国を目指せって。」
確かに何故ここまで来たのかは俺も分からない。
ここに旅の為の何かがあるのかもしれないな。
「じゃあきっと仲間を集めろってことよ!ここには旅に出る人達の溜まり場所があるの!そこで仲間を決めて旅に出る人が多いみたいよ!」
こいつは馬鹿だが知識は結構あるみたいだな。
「仲間って、何人くらいがいいんだ?」
「ここで作るのはあと2人くらいでいいんじゃない?他の国や場所でも仲間を作る機会はいくらでもあるわ。」
なるほど、じゃああと2人集めに行くか。
ミルファがどうかは分からないが、俺はこの世界の事をあまりよく分かっていない。
できれば知識や実力ある年上が仲間になって欲しいところだ。
「そういえばお前は何歳なんだ?」
俺はこいつに自分の歳を教えたが、こいつからは何も聞いていないからな。
「私も18よ、見た目で分からないかしら?」
18か、確かに見た目はすごく大人っぽいんだ。
出るとこは出てるし、黒くて長い髪はとても清潔感がある。
だからこれに脳味噌を合わせて平均すると12才くらいの年齢だと思っていたのだが。
「じゃあ同い年だな、気楽にやろうぜ!」
「そうね!仲良くやりましょ!」
そう言って俺達は旅人が集まっているという酒場へ向かった。
しかし酒場に着いた俺達はあまりの人の少なさに驚愕していた。
確かに掲示板やポスターなどが貼ってあり、仲間を集まる為に使われていた形跡はある。
だが今この店には、店員と俺達を含めて5人しかいない。
「おい、全然いねぇじゃねぇか‥‥‥。」
「知らないわよ!本当にここなんだって‥‥‥!」
まあ実際ここなんだろうし、ミルファに文句を言うのは間違っているな。
俺は店にいる残りの2人を見てみる。
俺と同じくらいの歳だと思われる男が1人と、ミルファより2.3才年下だと思われる女が1人、チラチラこっちを見ている。
残念ながら俺の理想の人はいなさそうだ。
「ミルファ、もう行くぞ。」
俺はそう言って店を出ようとした。
しかし、
「一緒に神になる為の旅に出る人募集してまーす!」
いきなりミルファがそう叫んだ。
「おいっ!辞めろ!」
そう言ってミルファを止めようとしたがもう遅かった。
「俺なんてどうだ!?知識はないが、戦いの実力にはかなり自信があるぜ!」
「私なんてどうでしょう!知識も実力も兼ね備えたこの私は!」
だからこいつらは嫌だったんだよ‥‥‥。
チラチラ見てくるの鬱陶しいし、命がけの旅にこんなテンションでお願いしてくる奴なんて絶対普通じゃない。
「いや‥‥‥その‥‥‥俺は別に仲間なんていらないんだよ。」
俺は2人にそう言った。
するとミルファが泣きそうな顔でこっちを見てきた。
「え‥‥‥私も‥‥‥いらないの?」
なんでお前もそうなるんだ。
「いやお前は良いんだよ。ただ、残りの仲間はもう少し真剣に選びたいというかな?」
「つまり、私はあなたの目からはまともな人に見えないのですね‥‥‥。」
と、少女がいきなりそんな事を言う。
「ごめんなさい、数ヶ月ぶりに仲間集めをしている人が来たのでテンションが上がってしまって‥‥‥。迷惑でしたよね‥‥‥。」
そんな表情は非常にやめてほしい。
ただ、数ヶ月ぶりか‥‥‥。
また次俺みたいな奴が来るまでこいつは待ち続けるのだろうか。
「俺もすまん‥‥‥。こんな見た目のせいで旅の仲間に入れて貰ったことがなくてな‥‥‥。人が少ない今ならと思って、ついはしゃいじまったよ。」
今まで一度もか‥‥‥。
それは、とても辛かっただろうな。
見た目のせいっていうのは、少し太った体型に、首からかけている、いかついネックレスのせいだろうか。
「いや、俺の方こそ2人の事をよく知らないのにごめん。」
まず俺は失礼なことを言ったことに対して謝る。
「2人は俺達と一緒に行きたいのか?」
「はい!」
「おう!」
常識や知識なんて後からでも身につく。
こんな俺達と一緒に行きたいと言ってくれる人達がいるんだ、その事をありがたく思わないとな‥‥‥。
「じゃあ一緒に行こうか!よろしくな!」
俺はそう言って2人としっかり握手をした。
「ねぇ、ちなみに2人はどれくらい待ってたの?」
ミルファが2人に質問する。
めでたく仲間もでき、俺達は飲食店で夜飯を食べていた。
「あ、私は1ヶ月待ってました。数ヶ月と言いましたが1です。」
なんだこのガキ。
「俺も一度だけ仲間入りをお願いしたが、女子のみって書いてるよね?とか言われて一度拒否られただけだ。」
なんだこのデブ。
「そんなことがあったのね‥‥‥でもこれからは私達と仲良くやりましょう!改めてよろしくね〜!」
ミルファの掛け声に2人が片手を上げておー!という。
新しい仲間をどうするかでも考えておこう‥‥‥。
《能力紹介》
〈ダカル〉D
身体能力を上昇させられる
〈リラ〉?
水を操る
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます