第11話
ここで、一つ例を挙げるとしよう。それは僕が学校の食堂にいたという夢である。食堂には紺色の制服を着た生徒らが集まっていて、僕は紺色の波にゆらゆらと流されている。そこで2人の友人が僕の名前を呼びかけて、こう話かけるんだ。
「久しぶりだね。今日の放課後は焼肉屋へ行くんだ。君も一緒に行くかい?もちろん、割り勘だけどね」
僕は彼らの提案に大げさな喜び方をして賛成の意を示し、僕はウキウキとして財布の中身を確かめようとしたそのときに、あの厄介で、忌々しい「僕」が現れてこう言うんだ。
「起きたまえ。これは夢だよ。こいつらは僕の友達ではないはずだ。君と彼らの関係は絶交の仲にある。最も、そうなったのは君自身にあるのだが。君の我田引水たる行動が彼らを苦しませたのは明白な事実だよ。」
僕の脳内にあってはならない思考が、よどめきだす。小さな渦に過ぎないはずのものはやがてゴミを巻き込み、大きな竜巻を生み出す。穏やかだった海洋は黒く淀み、針の波を作り始める。―どこからか女性の甲高い悲鳴を一定のリズムで刻む、あのやかましい音が耳に入り込む。これは悪い予兆だ。このままでは夢が終わってしまう!
「面白いことじゃないか。君は長い時間をかけて作り上げた友情を君自身で壊したんだ。友情を守るチャンスは幾度もあったはずなのに!さぁ、起きるんだ!もう目覚まし時計のベルは鳴っているよ。」
―ああ、だめだ。これが夢であることに僕は気づいてしまった。そうだ、僕は寝ているんだ。辺りの景色は溶けるように崩壊を迎える。辺りの色彩は混ざりあって黒に近い色に落ち着く。やがて僕は、重いまぶたを広げて、夢の景色に別れを告げるのであった。目覚まし時計のアラームを消した。眠気というものは全くなかった。この目覚め方は後者の方に間違いない。
「ねぇ、あなた話聞いてる?」
彼女は僕を覗き込むように見つめていた。僕はビックリしてこくこくと頷くと、彼女はため息をしてこう言った。
「相変わらずね。あなたって人の話を聞いている時、かつてに自分の世界に入り込むじゃない。」
その通りだ。僕は人の話を聞いていることに慣れていない。ある単語―それも話の根本に対して全く意味を持たないワードから僕はその単語に引き込まれ、思考を巡らせてしまうことが多々ある。そうだ、例えば―
「それじゃあ、私の家に案内するわ。ついて来なさい。イスは2つあるから安心していいわよ」
彼女は回れ右をして、歩いて行った。僕はまた自分の世界に入り込んでしまったらしい、僕はひと呼吸して、彼女について行った。ローブの端は蝶のようにひらひらと踊っていた。
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