第3話 待ち合わせまでの道のり

「…………おはようございます」

「おはよう」


 時刻は9時過ぎ、夏目は僕の家の前であいさつしに来た。

 僕は昨日、夏目に嫌味を言ってしまいどうにもバツが悪かった。

 自覚がある以上謝るべきだろう。

 そう思った矢先──、


「進藤君っ。きょ、今日、神保町付き合ってくんち!!」


 夏目は目を><にしてよく分からない語尾でなにか言った。


「……くんち? 神保町?」

「っ!!。~~~~ご、ごめんなさい。『神保町へ付き合ってください』です」

「あぁ。そういうことね。(噛んだのか……)」

「……ぃぇ。その、方言がでちゃいました……」

(噛んだのかって声出ていたか……。)


 僕は、頭をがしがし掻いた。


「……何時にどこで待ち合わせなの?」

「13時に神保町駅で合流する予定です」

「?。昨日、神保町駅まではいけたんだったよな」

「っ! い、行けた……けど、今日合流する出口にちゃんと出れるか不安で……」

「なるほど。待ち合わせ場所が担当さんの指定した場所と違うところで行ってしまうと困っるてことか」

「……うん」


 夏目はコクコクと頭を縦に動かした。


「神保町なら駅で10分ほどで行けるから。12時半ごろにここから出るでいいか?」

「い、いいの?」

「もう少し、早めに出ときたいか?」

「いやっ、違くて……一緒に行ってくれるの?」

「まぁ……今日は特に予定はないから大丈夫」

「──そっか。ありがとう! じゃあ12時半でお願いします!!」


 夏目はパアァと笑顔になって、自分の家に戻った。


「『昨日は、ごめん。』って言いそびれたな」


 インターホンが鳴って起こされたときはまだウトウトしていたけど、今はもう眠気がすっかり消えていた。


 ── 朝食にしよ。 

 

 僕は初めて使うキッチンで朝食を作るため部屋に戻った。




 約束の時間までは朝食を食べ、食器を洗って昨日一段落していた荷ほどきを進めた。

 段ボールを1箱残して、それを押し入れの奥に入れて荷ほどきを完了させた。

 時計をみると『12:10』になっていた。


 家を出て、自分の部屋の扉を背もたれにしてスマホを触りながら夏目を待つ。 

しばらく経って、ギィと扉が開く音がした。


「お待たせしました。よろしくおねがいします」

「おぅ」


 都営三田線。品川区の『目黒駅』~板橋区『西高島平駅』を結ぶ路線。

 『目黒駅』から直通運転で東急目黒線の神奈川県の横浜市の『日吉駅』まで同じ列車で行くこともできるのだ。


 自宅の近くの最寄りの『巣鴨駅』から目的の『神保町駅』までは5つ先の駅だ。10分程度でたどり着ける。

 僕は、元々入っていたSuicaの残高でいけるはずだ。そう思って改札をくぐろうとしていて夏目のほうへ視線を向けた。

 すると彼女は券売機のところで『きっぷを買う』をタッチして『220円』をタッチして切符を買っていた。


「夏目はSuica持ってないの?」

「あぁ。ICカードってやつですね。持っていないです。それ便利ですか?」

「まぁ。便利かな。切符をいちいち料金表見て、買わなくて済むし、IC乗車券割りみたいなので少しやすくなるんだよ」

「なるほど!後で買ってみようかな……」

「うん。コンビニとかの支払いに使えるから持っておいて、損はないと思うよ」


 改札をくぐり駅のホームで列車を待って、そして列車に乗りながら雑談をした。


「ちなみに私の地元の電車はSuicaは使えなかったし、私の周りで持っている人いいなかったです」

「ふーん。Suicaを使えない電車もあるんだな」

「『ワンマン列車』っていう1両しかない列車は現金しか使えなかった。東京にも『ワンマン列車』は東京ないんですよね?」

「なんだ『ワンマン列車』って──」


 と尋ねたところで神保町へ着いた。



✑✑✑


 9時半頃。

 まだ住んで、2日目の部屋に入って扉を閉めた。

 そして玄関に立ったままガッツポーズした。


「(~~~~よかった~~~~!!!)」


 私は諸々のことがすっきりして部屋にスキップした♪


──部屋に段ボールの山を全く片づけてないことに気づいて顔を真っ青になった。


 ……やだ。私、そういえば昨日から着替えていない。

 それどころかお風呂にも入っていない!それなのに男の子に会いに行って…… 


 は、恥ずかしいぃ~~~~!! 死にたいっ!~~~~!~~~~


 私は、羞恥に悶え苦しんだ。

 今だ風呂にも入っていないこと、そして着替えが未だ段ボールの山に眠っていることを気づくことのはそれから1時間後のことだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る