第2話 健康診断(4)

 夕方の仕事を終え、張景が仙境に帰ろうとした頃、先程のシャワールームの前で誰かが膝を抱えて座っているのを見つけた。

「天明さん?どうしたんですか、こんな所で」

 声をかける前にこちらに気付いていたのか、

 近付く張景に対して天明はしばらくじっと見つめると、ちらりとシャワールームに視線をやった。中からシャワーの音が聞こえる様子からして、誰かが中にいるようである。

「ああ、スイさんを待っているんですね」

 そういう分別はついているのか、単に自分が嫌いだから入ろうとしないだけなのか。張景には分からなかったが、変に律儀な感じがして思わず笑みが溢れた。なるほど、これは確かに大型犬のようだ。

 検査結果も散々で、一体何者かはわからなかったが、張景はほんの少し親しみを覚えていた。

「……」

 と思ったのも束の間。天明が先程からこちらから視線を逸らさない。初対面では目線が合うだけでもすぐに逸らしていたというのに。

「……あの、どうかしましたか?」

「…………」

「あの、聞いてます?」

 もしかして、と振り返ってみたが、何もない。張景が先程と打って変わって段々恐怖を感じてきた頃に、天明が小さく口を開いた。

 

「……スイの、弟?」

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