後半戦 その1
「ゲットゴール 鈴木隆行 ゲットゴール ゲットゴール 鈴木隆行 ゴーアヘッド ゴーアヘッド。」
ハーフタイム中、鈴木隆行のチャントが歌われ続けた。水戸が逆転するには鈴木隆行が前半以上に活躍するしかない。それは誰が見ても明らかなことだった。
後半戦が始まった。闘将柱谷監督に活を入れられたのか水戸の選手の動きが元に戻っていた。対して、ガンバ大阪はカウンター狙いに切り替えたようだ。虎視眈々と水戸の隙を伺う。
後半開始以降、誰よりも動いていたのが鈴木隆行だ。ガンバが後ろでボールを回す。それに向かって何度も向かう鈴木隆行は代表時代を彷彿とさせる。そして、水戸の選手もそれに呼応するかのように出足が速まった。
水戸の激しいチェックに根を上げたのか、ガンバは雑なパスを前線へと送った。激しい競り合いを水戸が制す。こぼれ球に水戸の小澤が素早く反応し鈴木隆行へボールを送る。鈴木隆行はポストプレーの形から反転し裏へ抜け出そうとした。しかし、ガンバのディフェンダーがそれを阻み両者は倒れた。
「たかゆきー!!」
観客席から声援が上がる。その声援に答えたかのように鈴木隆行は直ぐに立ち上がり、ガンバディフェンダーを引き離した。
このまま行けばゴールキーパーと一体一になる。またとないこのチャンスは無情にも審判の笛がなり中断した。
「何でアドバンテージをとらねえんだ!」
隣の席のおっちゃんが叫ぶ。観客席からもブーイングも上がった。
「す・ず・き・た・か・ゆ・き
ドウント ストップ ファイティング!
ドウント ストップ ファイティング!」
サポーターのチャントも熱が上がる。水戸は丁寧にボールを繋ぐ選択をした。
機を伺う水戸に対してガンバは冷静さを失わなかった。引いて守るガンバの守備の穴を見つけることができずに水戸の選手は走らされる。サイドへパスを出すもクロスを上げるコースは断たれボールを戻す。それを幾度か繰り返した後、堪えきれずにアーリークロスを上げた。
闇雲に蹴られたボールはガンバに取られ、二川へと渡された。大阪が生んだ沈黙の天才はキムスンヨンへスルーパスを出す。絶体絶命のピンチに水戸の選手がキムスンヨンに競り勝ちボールを外へ出した。
このピンチを救ったのは先ほどまで前線にいた鈴木隆行であった。アーリークロスが失敗したのを悟った鈴木隆行は最終ラインに向かって駆け出していたのだ。
「すげえ。」
「隆行!!!!」
「流石、ここ一番の男だ。」
観客席からは鈴木隆行を称える声が続々と上がる。流れが水戸に傾き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます