後半戦 その2
ピンチを凌いだ水戸ホーリーホック。鈴木隆行はセンターバックの塩屋の尻を叩いた。ガンバの攻撃はまだ終わっていない。
ガンバのスローイン。ボールを受け取った選手は最終ラインへと戻した。ボールを保持して時間を稼ぐ。あわよくば水戸の選手を釣りだし擬似カウンターを仕掛ける算段だろう。
リードされている水戸はガンバの狙いがわかっていてもそれに乗るしかない。鈴木隆行の激しいプレスを先頭に水戸はガンバを追い込んで行く。
ガンバは二川を経由し右サイドへボールを振った。そこに加地さんが駆け上がってくる。すかさず塩屋がカバーに入った。塩屋の守備に手を焼いた加地さんはボールを後ろへと戻す。それを水戸は狙っていた。
ボールを奪取した水戸の選手はドリブルをしながらパスコースを探す。鈴木隆行はサイドへと流れていった。ガンバの守備も鈴木隆行につられていく。その一連の動きで空いたスペースに小澤が走り出していた。
小澤はボールを受けガンバのディフェンダーを振り切り前に出た。ゴールキーパーとの一体一。無心で振り抜かれたシュートはゴールネットを突き刺した。
小澤が叫ぶ。前半戦、何度も失敗し続けた攻撃が漸く実った。水戸サポーターも歓喜に湧き、私も思わず立ち上がった。
「ゲットゴール 司 ラーラーラー
ゲットゴール 小澤司 ラーラーラー」
小澤のチャントが木霊する。勝負は振り出しに戻った。
この流れに乗って逆転しようと水戸は攻勢を強めた。何度かシュートまでは持っていくが得点は決まらない。
60分が経過した。水戸はガンバの攻撃を凌ぎ中盤でパスを繋ぐ。しかし、それをガンバの佐々木が狙っていた。ボールを奪取した佐々木は水戸のバイタルエリアまでドリブルで持ち込み、そのままミドルシュートを撃った。ゴールへと真っ直ぐな軌道を描いたボールは、誰にも触れられずネットを揺らした。
鈴木隆行は直ぐ様ボールを回収しに走った。水戸のゴール裏はガンバサポーターが歓喜に湧いている。
1点ビハインド。またしてもリードを奪われた。これが現実なのかと知れない。
水戸はボールを回す。失点したことで慎重になったのか先ほどまでの迫力がない。
鈴木隆行が引いてボールをもらいに来た。ハーフラインを少し過ぎたあたりでドリブルをする。ガンバは寄せてこない。ゴールへのコースが空いていた。
ドン!!!!
ボールがゴールポストに当たった。紫電一閃の一撃に会場は静まりかえる。
「すげえ。なんだあのシュート!」
思わず声に出た。他の観客も騒ぎだす。水戸の敗色ムードは一掃された。
水戸の攻勢は続いた。サイドを切り裂きクロスを上げる。小澤がトラップをし放ったシュートはディフェンダーに阻まれる。
水戸のコーナーキック。小澤が大事そうに抱えたボールをコーナーポストへ置く。緩やかなカーブを描いたボールは鈴木隆行の元へ向かっていった。
「たかゆきー!!」
はち切れんばかりの声が出た。鈴木隆行は競り勝ち高く飛んだ。頭で叩きつけられたボールはゴールに吸い込まれた。
「よっしゃー!!!!」
「やった!!!」
思わず隣の席のおっちゃんとハイタッチした。
そこからは一進一退の攻防が続く。私は座るのも忘れて応援した。試合は延長戦へともつれ込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます