第二部 前編② 俺と彼女の雨模様


 ひょんなことからお題は『好きな人』でデッサン勝負をすることになった俺と田中は黙々とペンを走らせていた…と思ったけど…


「あのー、先輩?そのポーズなんですか?気になり過ぎて、集中が出来なくて…」


  田中のデッサンは真っ白だった。


 動揺したというより不審な感じで田中は御門先輩にそんなことを指摘していた。 確かに…田中の目の前で手を頭の後ろと腰に回してるあのポーズはよくあるセクシーポーズだけど…なぜ今?


 先輩の豊満は胸と引き締まったお尻、そして何よりかなり恥ずかしいのだろう。

 あの小悪魔先輩ですら顔を少し赤らめる感じがさらに可愛らしい顔を引き立たせていた。


 「ん?いやぁ〜もしかしたら春くんのデッサンの力になれるかなぁ〜って!」


  描いてもらう気満々じゃん…。


 「春くんはこのポーズ見てなんか感じない??」


 さっきよりも胸を強調してるのは気のせいだろうか….。それにしてもエッチだ。


 「え、どう思うって…あの、じゃあさっきから先輩が気になってたんですけど…」


 !?田中…まさか。


 「////!!え、何何何!!!私が気になってた!?」


  珍しく彼女がまるで子供のように飛び跳ねており、2つの丸い大きな胸も揺れてる…。


 「で、では申し上げますね…」


 辺りに緊張が走る。

  

 「は、はい///」

 

 一体何なんだ……

 この状況に俺もビクビクと身構えていた。

 

 「先輩…パンツ見えてます。」



  「…………………」

 

 

  エ、エクセレント!


  ブシュフジュっっバシャブシャシャっっっ


 辺りに真紅色の絵具が飛び散った。


 うっ致死量だ。…A B型の方、俺に水玉のパンツじゃなくて、血を……


「きゃっ/////もう、春くんったら!どこ見てるの!本当にエッチなんだから!」


  先輩は慌ててスカートを手で押さえていた。


 「いやいやいや!不可抗力、不可抗力!!」


 流石ラノベ主人公…ラッキースケベもステータスに持ち合わせてるのか。


 「ってまて!駿!血が沢山!どうしたんだ!??」


 床で倒れている俺に慌てて田中が駆け寄る。


 「天然の赤い絵具が欲しくて……出…した」


 「!?そんな…凄い熱意だ…デッサンの筈なのに絵具まで…駿、俺が間違ってた!」


 「俺も熱意に応えてちゃんと描くよ!」


 うっ、熱意が伝わって良かったよ…。


 飛んだラブコメ劇場を繰り広げていると、

準備室から少し寂しそうにひょっこり女子が近づいてきた。


「ちょ、ちょっと。あんたたち!私を無視だなんてひどいわよ!!なんか気づくこと、な、ないの!?」


 

   本庄 冬華 が  スク水を着てる。


 床に散らばった絵具(鼻血)を拭きながら目にしたものはそれだった。


 正直可愛い。もう状況は意味わからないけど、その健康的で、スレンダーな体と貧相だがその小さな胸は逆にスク水の良さを引き立てている。さらに髪を縛ってるお陰で拝める彼女のうなじもかなり綺麗だった。 


 わかってはいる。でも彼女の格好についてあえて俺は何も言わない。なぜならあいつが言ってくれると思ったから……


「いや、き、気付いてるけどよ? なんでスク水なんだよ……」


 彼も意識はしているのだろう言動とは裏腹に顔は真っ赤である。


 「だ、だって! 今日暑いじゃない!」


 「うん、外はね?、ここクーラー付いてるよ?」


  うん、そう。


 「!!!??? え、えー!!!!う、うぅっっ…

これじゃあ私がただのど変態じゃない!!」


 ど変態ですよ。


 「もう、しらない!!勝手にしてよね!!

 せっかく、せっかく頑張ったのに。」


 そう言って彼女はとぼとぼと美術部準備室へと帰っていった。

 たぶんだが自分の恥ずかしさによる熱のせいで、クーラーが付いていることを忘れていたのだろう…本当、 彼女の頑張りを見ると師匠と呼びたい。 

 

 でも師匠、水着を描いてもらうって割と大胆ですよ。一歩間違えれば警察のお世話になりますよ?


 俺は田中に目をやる。

 「もう!あいつ何やってんだよ!あんなカッコ、直でみられるわけないだろ!」


 彼もまた男の1人、顔を赤らめていた。

師匠、効果がありましたね!


 色々ことに疲れた俺は椅子に座り込み、目の前の自分のデッサンを見る。


 これで、いいのだろうか。


 少しやるせない気持ちになっていた。


 (こんな2人の頑張りを見てると…これから俺が企んでいることを実行するのは少し胸が痛い。)


 でも俺はどうしても成し遂げなければならない。

 すいません…2人とも。俺はそれ以上に田中を打ち負かしたいんです!


 そう、俺は田中の描くデッサンを

 

      『全て分かっている!!!』


 


 十分後……


 「はい!終了で〜す!」


 我ながら上手くできた。


 目の前のデッサンを見て達成感に浸っていた。


 「じゃあまずは〜、春くん!!デッサンを見せて????」


 終わった途端に先輩はすぐに春の近くへ駆け寄った。


 先輩、圧が凄い圧が…。


 「田中!は、早く見せなさいよ!!」

 

 ど変態も戻ってきた。


 「ふっふっふっ…まぁ落ち着いてください!俺が描いたのはこれです!!!」


 やけに自信満々の田中を見て俺は少し疑問を抱いていたが、結果は分かっているので勝ち誇った気になっていた。


 どれどれあれをちゃんと描いたかな?


 俺は田中のデッサンを横目で見る。


 しかしそれは……


 「えー!!?!?!?!?!?」


 あ、あれれぇぇえ???(汗


   

 俺らを驚愕させたのだった……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る