第34話 ごり押し
「なるほどな。で、ゴールドクラスの方に行きたいと」
「あぁ! 正直時間が惜しい!! ここで話している間にも行動を起こしたい所だ!!」
「ねぇイブっち~」
「ん?」
事情を説明した俺に、ミューが言葉を発する。
「それって単純な話じゃない?」
「え?」
あっけらかんとした様子のミューに、俺は首を傾げる。
「この迷宮から出てあっちの迷宮に出るのに時間が掛かるんだったら、ここから直接行けばいいんだよ!」
「直接……?」
「そそ!」
「……そうか!!」
ミューの言葉の意味を理解した俺はすぐさま魔障壁の外へと出る。
「お、おいイブル!!」
「何だ!! 時間が無い、俺は行くぞ!!」
踵を返す俺、だがテディはまだ食い下がるように言った。
「俺も行く!!」
「……何?」
俺は足を止めた。
「危険と言ったであろう! 下手をすればお前達は死ぬぞ!!」
今の俺では、恐らくテディとミューを守りながら戦えない。
「分かってるよ! だけど、俺も行く……俺はお前の班の一員だからな!!」
「……っ」
「私も行く~。班の誰かが困ってたら助けるのは当然だよ!」
「お前達……」
ふっ……幹部候補を探していたが、それよりも先に恵まれた友人を手に入れたな……俺は。
二人の意を汲み、意を決した俺は声を上げた。
「いいだろう!! 動向を許可する!!」
俺はテディとミューの体に魔障壁を張り、外界へ出ても問題が無いようにする。
「では行くぞ!!」
拳を握りしめた俺は、壁を殴り始めた。
◇
「……」
「……」
「あ、あはは」
イブル達が迷宮の最奥に到着する少し前、ネスティ達の班もまた迷宮の最奥へと到着しようとしていた。
「全く……何であなたと……」
「それはこっちの台詞」
「お、落ち着いて二人共……」
推薦入学者は分散するという方針で班が組まれ、偶発的にネスティ、アーシャ……そしてエヴァの班が出来上がったのだ。
「まぁいいです。さっさと終わらせて、イブル様に労いの言葉を頂くとします」
「そう」
「も、もう二人共……」
互いに距離を取るネスティとエヴァに、アーシャはどうしたものかと混乱する。
そうしている間に、彼女たちは迷宮の最奥に到達した。
「こ、ここが最奥ですよね? やったー! ようやく着いたー!」
迷宮の最深部と思われる場所に着いたアーシャは喜びの声を上がるが、
「おかしいです」
「おかしい」
ネスティとエヴァが即座に違和感を覚える。
「え……な、何がですか?」
一体どうしたのだとアーシャは二人の顔を見る。
「私たちが迷宮に入ったのは五番目です。ならばここには他の班の痕跡が残っているはず。ですがここにはそれがない」
「多分、私たちだけここに誘導された」
「え、えっ……?」
二人の言葉にますますアーシャの困惑が増す。
そして、
「ははははははははは!!!!」
下卑た笑い声を上げ、奥の暗闇からソレが姿を現したのだ。
「あ、あなたは……!?」
「……」
「気持ち悪い」
彼女たちはそれぞれ別の反応を見せる。
「いやぁ!! 最高だ……最高の気分だよ……!!」
手に禍々しい剣を持ったニルトに向かって……。
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