第33話 異変
「お、おい大丈夫か……!?」
慌ててテディは倒れている生徒たちに駆け寄る。
「何があったんだよ!?」
「わ、分からない……こ、ここに来て……すぐに……動悸が……荒く……!」
倒れている生徒は、呻くように呟いた。
「これ~、ただ事じゃないよね~?」
ミューの言う通りだ。
何かがおかしい。
「一瞬試験の一環かと思ったが、どうもこれは常軌を逸しているな!」
言いながら、俺はその場に倒れている全員に
するとたちどころに倒れていた者達の異常が収まっていく。
「後これか」
更に俺は魔障壁を使い、俺を含める全員を覆い尽くした。
「貴様らの動悸の原因が外部からのものであるとするならば、これで問題無いはずだ」
「あ、ありがとう……助かった……」
生徒の一人は俺に謝辞を述べる。
「それにしても、どういう事だよこれは……迷宮に入った奴ら全員がここにいるって事は、ここに到着する事は間違いじゃないはずだ。でも、試験内容は迷宮から出るまでって言ってた……。これじゃあまるで迷宮からあ出す気が無かったみたいじゃないか……」
テディの言葉に、俺は周囲を見渡す。
俺が張った魔障壁の外側には大気中に毒素が紛れ込んでいる。
恐らくこれも教員のスキルによるものなのだろうが、流石に危険が過ぎる。
先程の魔獣達と言い、これは度が過ぎていると言わざるを得ない。
俺がいなければここにいる奴らは十分と持たずに死んでいただろう。
「おかしいな……」
ここにきて、俺は違和感を感じ始める。
明らかに行き過ぎた試験……これではまるで生徒を殺すようなものだ。
「一体どういう事だ……?」
思案する俺、その時だった。
「っ!?」
俺は感じた。
凄まじいマナの波動を。
「何だこれは……!?」
転生してからこれほどのものは感じた事が無い……!! ネスティを感知した時よりも遥かに上だ!!
方角的に上……地上ではない。
これは、地下からだ。
つまり……迷宮内にこの波動を発している者がいる。
俺は更に感覚を尖らせる。
マナの波動、その発信源を正確に捉えるために。
そして、一つの事実に直面した。
「……違うな。この迷宮じゃない」
シルバークラスの迷宮に発生源はいない。
つまり、考えられる可能性はもう一つしかない。
「まずいな!」
「ど、どうしたのイブっち?」
突然大声を上げた俺にミューが肩をビクつかせる。
「テディ、ミュー。試験は中止だ。俺はこのままゴールドクラスの迷宮に向かう」
「はぁ!? ど、どうしたんだよ急に!!」
「説明している時間はない! この魔障壁はこのままにしておく、すぐに戻る!!」
そう言って俺はゴールドクラスの迷宮へと『
「何!?」
使えなくなっていた。
「くっ……どういう事だ!? ま、待て他のスキルは使える……!!」
転移系スキルだけが使用不可になっているだと……!?
何故だ!? 一体どうして……!?
俺はわなわなと手を震わせる。
「まずい……」
あの波動は間違いなく異常だ……。
ただ強いだけならまだいい、だが今感じているこれには明確な悪意がある。
「だ、大丈夫かよイブル?」
心配そうな目でテディは俺を見る。
どうする……!! 今から外に戻ってゴールドクラスの方の迷宮に入り直すのでは時間が掛かり過ぎる!!
俺が唇を噛み締めていると、
「らしくないな~イブっち」
「何?」
ミューがそんな事を俺に言い放った。
「どんな時もガハハって笑って傍若無人に振舞う。それがイブっちでしょ?」
「っ」
いつもと変わらぬ様子でミューは俺を見る。
変わらない……が、その目は間違いなく俺の本質を見ていた。
……そうだな、何を取り乱しているのだ俺は。
まさか、人間にこのような形で諭されるとは……。
あまりにも滑稽な自分の様に俺は笑いが込み上げてくる。
そして、
「ハハ……ハハハ、ガハハハハハハハ!!」
笑った。
いつもの俺がそこにいた。
「そうだ……そうだな……!! その通りだ!! 俺は傍若無人、傲慢の化身!! この程度の窮地で臆する事など有り得ない!!」
「はは、元に戻ったな」
「うん! イブっちは笑ってるのが一番似合うよ」
「うむ!! 助かった、褒めてやろうお前達!! そこでだ、ついでに聞くが何か名案は無いか!?」
そう言って俺は二人に事情を話し始めた。
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