芸術は時として

勝利だギューちゃん

第1話

思春期の男子となれば、同年代の女の子と歩きたい。

誰もが、想うところだ。


俺も例外ではなくて、その事を夢に見なかったと言えばウソになる。

俺はその夢を、現実のものとしているのだが、ちっともときめかないのは、何故だろう?


「不満そうだね、私と歩くの」

「いや・・・そういうわけでは・・・」


顔に出ていたか・・・


「私みたいな、かわいい女の子と一緒に歩けるなんて、君は果報者だよ」

「自分で、いいますか?」


でも、この女の言う通り、とても美人だ。

余程、美的感覚が人と異なっていない限り、「美人」と言うだろう。


スタイルもいいし、センスもいい。


でも、この女には浮いた話がまるでない。

男性と付き合った事はなく、告白された事もないようだ。


高根の花といえば聞こえはいいが、そんないいものではない。


この女・・・実は・・・


「私、性転換なんかしてないよ。正真正銘の美少女」

「だれも、男だなんて言ってない」

「じぁあ、何よ!」


この女の家族はいたって普通。

良くも悪くもで、芸能一家ではない。


「しかし、不思議だな」

「何が?」

「お前に彼氏がいないなんて」

「私が、君の彼女に立候補してあげようか?」

「募集してない」

「彼女、いるの?」

「いると思うか?」

「思わない」


いてもうたろか・・・この女。


で、どうして俺が、この女と一緒に歩いているかと言うと・・・


「名前で言ってよ」

「一回限りだ。必要ない」

「不親切だね」

「お前もな」


話はそれたが、どうして一緒に歩いているのかと言うと・・・


「着いたよ」

「ここが?」

「うん」

「俺は何人目の犠牲者だ?」

「人聞きの悪い事言わないでよ。実験台と言って」

「もっと悪い」


この女、料理がとてつもなく芸術的だ。

つまり、不味い。


女だからと、料理が上手くなくてはならないとは、思ってない。

でも、大人として何とかしてくれ。


しかも、本人は美味いつもりでいるので、それが厄介だ。

せめて、自覚してくれ・・・


この料理のせいで、彼氏がいないのだ。


せめて、不味いと言う自覚があり、創作料理を食わせなければ、彼氏は出来るだろうに。。。


でも、俺がなぜそれを知っているかと言うと・・・


「たくさん食べてね、お兄ちゃん」

「妹よ、断る」

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芸術は時として 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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