カウントダウン
「少将殿、どうか、ご一考を! 」
「アラン……あれだけの戦力が居ても足りないというのか……? 」
森林で、市街地で、地下水道で、ジーク達を追い続けていたアランだったが、今はそう言った最前線の戦場から離れ、前線基地であるリカール学園へと訪れていた。
様々な国の政治将校が集まる中で、アポイント無しでの、自身の上官への直談判をしに行ったのだ。軍事裁判にかけられる恐れだってある。
だが、それでも、そうする必要があったのだ。
「……そうであります、あれだけの戦力が居ても、我々はジーク・アルトを追い詰めることが出来ません。
少将、此処の警備の人員の一部を私にお貸しください」
「言った筈だぞ。
この作戦は我が国の威信が掛かっているのだ。
統一政府と言えど、皆で仲良しごっこをするわけでは無い。祖国の為、我々は主導権を得なければならないのだ。
アラン、我が国の代表であるお前がこうして増援を要請するということは、我が軍が無能だと言っているものでもあるし、借りを作ることになる。
言い出しっぺにはなれん……待つんだ、他国が同じような要請をするのを」
少将はアランの要求をやんわりと退ける、付き添いの兵と共にアランに背中を向けた。
だが、その時、王都の方で爆発が上がり、爆音が学園の方まで響いて来た。
「あれを見てください、少将!
また、我々の友人たちが死んだのです!
お願いです、一度、政治の事はお忘れください!
胸元の勲章を、祖国の誇りを思い出して下さい!
どうか、私を戦わせてください! 」
その言葉に少将は足を止めた。
「……分かった。
此処の部隊の一部を支援に回すよう、私から各国に要請しよう。
現状我々の首脳たちの、未来の統一政府の意見は一致していないが……シルヴィアは事故として始末しても構わない、容赦はするな」
「感謝します、少将! 」
「だが、その代わり、急げよ。
……タイムリミットは近い。
もし、リミットが切れれば、全てはお終いだ。
それまでに勝利が得られなければ……」
「少将、失礼ながら、私には意味が……」
「何でもない、全力を尽くせ。
明日の為にな」
「はっ、全身全霊を尽くしましょう! 」
◇
一方、世界中でじわりじわりと異変が起こっていた。
とある一つの大国の軍事施設では喧噪が広がっていた。
「大臣閣下がいらっしゃった!
被害状況を報告せよ! 」
「はっ!
ホワイトボードをご覧ください!
我が歩哨隊の一個分隊が所属不明の部隊によって殲滅させられました!
現在、追撃部隊がかの部隊と交戦中であります! 」
「ふむ……我が国に喧嘩を売ってくるとは……いや、全く以って、きゃつらの狙いが理解できないな。
閣下には敵の目的が分かりますかな?
……閣下? 」
「い、いや、さっぱりだ。
盗賊紛いのテロリストかもしれんな」
「今入って来た情報によると、同様のことがアルタイル連邦でも起こったようです!
不確定ですが、その他の3の地域でも。
どうやら、兵力がいるところを攻撃しているようです。
……前線からも情報が入ってきました!
テキ、ソウビ、ジンシュ、トモニ、イッカンセイナシ! 」
「多国籍……? 目的不明……?」
ま、まさか……! 」
「黙れ、その名前を出すんじゃない……! 」
大臣は汗をぬぐいながら、そう呻いた。
突如、朝早く、緊急事態で叩き起こされ、若干寝ぼけていた大臣は、すっかり目が覚めてしまった。
彼程の権力者でも、統一政府の件は知らなかった。
だが、彼だってあの悪夢の事は知っているし、よく覚えている。
わざわざ、戦いのその先ではなく、戦いに意味を求め、特に意味もなく命を散らす理解不明な集団、リカール大隊。
だが、どうやら、今回の動きには意味があるようだ。
「ですが、そうとしか、考えられません!
リカール大隊に違いありません! 」
「やめろ、やめんか!
奴らが蘇ってみろ、また、世界が分裂するぞ! 」
統一政府は巧妙かつ、重厚な防御網を敷いたが、それは仇となった。
幾ら秘匿しようが、ジークがシルヴィアの所に辿り着いたように、単純にこうすればいいのだ。
とにかく、敵のいるところに突っ込めば、いずれは火種に辿り着く。
本能で戦争の息吹を感じ取ったリカール大隊は、
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