最終章 最天敵
to be continue
延々と続く長い、長い道路。
道の脇には、伸び放題の草木。時折、風に吹かれて草の藁が道路を横断していく。
此処はとある大陸、今は開拓中で、殺風景。
だが、この異常な世界の発展具合を見る限り、この景色が変わっていくのも時間の問題だろう。
そんな、この土地にある小さな酒場に、荒くれ者達が昼間から酒を飲み交わしていた。
「嬢ちゃん、酒の追加を頼むぜ!」
「はいはーい……お客さん、どれだけ飲む気なの? いい加減にしたら、死んじゃうよ」
「へっ、気にするな、健康なんてどうでもいい」
まったくと言って酒をテーブルに置く看板娘。
彼女の言葉も尤もだ。テーブルには、食い荒らされつつある大量のジャンクフードと、空になった酒瓶がこれまた大量に置かれている。
だが、男女合わせて計8名ほどの荒くれ共は、ちっとも潰れていないようだ。
この発展途中の治安が良くないこの土地では自衛目的の為の銃の保持が許可されているが、この連中は明らかに過度な武器を隠すことも無く持っている。
傭兵家業か、その辺だろう。
常連の労働者たちが働きに出て居る店を占領し、好き放題騒いでいた彼らの話題は、昔の上司の話に移ったようだ。
「……で、隊長は今結局何歳なんだ?」
「25とかですかね?」
「いや、ちげぇだろうな。そこまでは言ってない筈だ。なんなら、まだ未成年か?
あたしが思うに……」
「俺に任せろ!俺は人の歳を当てるのが得意なんだ。
あの時のエリー副長は本当にお人形、いや、天使みたいにかわいかったからな、今でも瞼に焼き付いてるぜ!
多分、20行くか、行かないかだ!」
「きもい、死んじまえ。
誰がロリコン野郎の推理なんて信じるか。
……副長が、そんなにいいか? 俺なんて頭をハチの巣にされる寸前だった」
「童貞貴族野郎だったのが悪い」
違いない、と自嘲するのは、荒っぽい黄色の長髪を後ろで結んだ、顔面に横に流れるような大きな傷を持つ男だった。だが、傷があるからと言って、いや、傷のお陰で彼の顔立ちはより荒々しくも、気高く見える。
そう、ルーグだ。
彼が率いた小隊はリカールを発端とする戦争中に消息を絶ち、その後、傭兵として世に出た。
傭兵という職業柄、有名人と離れないが……この男に頼めば、大抵の荒事は解決できると、裏世界では中々の有名人だった。
ルーグは酒を煽ると、何かを思い出すように、天を仰ぎ、呟いた。
「まぁ、隊長が何才だろうと関係ないさ。
戦争狂のまんまだ。
内面はまるで成長してないからな」
「がはは、ちがいねぇ!」
「それにしても、ルーグ、そろそろ持ち金が全部尽きるぞ。
酒にも飽きて来たし、次の仕事は?」
「そうだな、酒にも飽きて来た。
酒じゃ酔えねぇ、ちっとばかりの揉め事でも酔えねぇ。つまらねぇ。
でも、今回の話は、流石の俺でもびっくり仰天だったぜ。
……はっ、フォッグマンのおっさんもこういう気持ちだったのかもな」
ルーグはニッと笑うと、袖口から茶色の封筒を取り出し、あらあらしく封を切った。
そして、その中身をテーブルにぶちまけた。
それは写真だった。
写っているのは、大型の改造されたガーランド・ライフルを手に持っている美青年。そして、その傍らにいるのは、銀色の艶やかな髪を持つ、まだ年の若いフレッシュな印象の少女だった。
「お、おい……冗談だろ?」
「いいや、マジだ。今回の依頼主はマジなんだ」
「やめろ!
……悪いことは言わねぇ、好奇心なんだろうが、隊長を敵に回すのは止めとけ」
「確かに、今までの奴らは大富豪だろうが、適当な国だろうが、全部返り討ちにされてきたな。
だが、今回はスケールが違う。
ジーク・アルトは本当に全人類の仇敵に成り下がったのさ。
これを見てみろ、アルタイル連合、ベルストツカ公国、コーカサス共和国……主要七カ国共同作戦、"ジーク・アルト抹殺作戦計画書"」
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