新しい仲間

 施設から出て必死に走り、何とか涼介のバーにたどり着いた大和達。

橘は大和の背中で苦しそうに息をしている。

そんな3人を見て、涼介は驚いたがすぐに橘の処置をした。

「橘さん、は……」

「治せる。重症ではなさそうだ」

「よかった……よかった」

「治療しとくから、2人は休め。疲れてるだろう」

涼介は大和と黒澤達を休憩室へと案内した。

黒澤達は休憩室に入って行ったものの、大和は入り口で立ったまま。

「大和?」

「俺、橘さんの側にいたい……」

「……そうか。わかった」


 治療室に入った涼介は、準備をした後に治療能力を使い、橘の傷を治していく。

大和は自分が橘さんを守れていれば、こんなことにならなかったのではないか、と考えながら、涼介達を見つめていた。


 しばらくして、橘が目を覚ました。

「ん、……」

「橘さん!」

「……あ、れ。大和君……?」

「大丈夫ですか!?」

「大丈夫、だよ。少し痛みはあるけど」

そんな橘を見て、大和は安心したのかぎゅっと抱きついてきた。

「わ、っ」

「橘さんっ……!」

大和の頭を優しく撫でると、嬉しそうに笑う。

「涼介が治してくれたのか。すまないね」

「だから、行くなって言ったんだ」

「でも、在真君の息子さんは取り戻せたんだ。それだけでも収穫だろ?」

「それは、そうだが」

あまり納得のいかない涼介に「涼介には申し訳ないね」と目を伏せて言う橘。


 少し休んでいると、黒澤が治療室に入って来た。

「橘は……大丈夫そうだな。よかった」

「在真君か。律くんは?」

「律なら寝てる。疲れたんだろうな」

「そうか。大変だったろうからね」

「なぁ、橘。1つ、提案があるんだが」

「提案?」

「手伝えないか?お前達の事」

予想外の答えに一瞬戸惑う橘。

黒澤の表情を見るが、本気で言っているようだ。

「手伝うって、私達の仕事を?」

「ああ。どうだろう。律を救ってくれたお礼に」

「……う〜ん」

悩む橘に、黒い笑顔の大和がこう言った。

「橘さん。仲間に入れましょうよ。俺がしっかり色々教えますから」

「仲間に入れるってよりも大和君が黒澤君を嫌いだから色々してやりたい……って感じがするけど」

橘の問いに、大和は意味ありげな笑みを浮かべた。

「まぁでも、大和君がそう言うならいいかな」

「いいのか?なんか大和から殺意を感じるが」

「これからよろしくね、黒澤君」

「お、おう」

こうして、橘達に仲間が1人増えた。

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