危険な場所
黒澤から話を聞くと、どうやら彼は『ローグ』という男に脅されていたらしい。
息子を殺されたくなければ、殺し屋をやれ、と。
「お前にはわかるのか!?息子を人質に取られて殺し屋をやれと言われた俺の気持ちが!!」
「そ……」
大和は黒澤の言葉に言い淀む。
「俺のせいで、律が死ぬんだ。……だったらもう、俺を殺してくれ」
黒澤は全てを諦めたような顔をして呟いた。
「在真君」
「殺して、くれ」
「君達の事、助けられないだろうか」
橘の言葉に、信じられない、という視線を向けながら黒澤は答えた。
「助ける……?命を狙ったのに、か」
「橘さん、正気ですか!?命を狙われたというのに」
「……大和君。困ってる人がいたら、助けるだろう?」
「それとこれとは」
「違う、って?狙われたとはいえ、私は今こうして生きている」
「それは、俺が気づいたから」
「うん。それは感謝してるよ」
そんな橘を見て、大和はため息を吐いた。
ここまで来ると橘は引かないと言う事を大和は知っている。
「……わかりました。助けるんですね?」
「ふふっ、分かってくれたようで嬉しいよ。まずは作戦会議だね。そのローグって人の情報が知りたいな」
黒澤からできる限りの情報を聞いたが、情報が少なすぎる。
ここから作戦を立てるのは難しいのではないかと思う大和。
「あ。そう言えば在真君さ、ローグって人と電話で話してるって言ったよね?」
「え、あ、ああ」
「ちょっとスマホ貸してもらってもいい?すぐ終わるからさ」
黒澤からスマートフォンを受け取ると、橘はパソコンを起動させて何やら作業を始めた。
数十分後、橘は黒澤にスマートフォンを返し、ローグって人の居場所がわかったよ、と告げた。
「「え!?」」
「簡単な事だよ。スマホにはGPSがあるでしょ?それを利用して探査をかけたんだ」
「そんな事が……」
「ただ、きちんと準備してから行かないと私達は不利だ。
「準備って、何をすれば良いんです?」
「涼介。この反応の周辺を探ってほしいんだけど……」
画面を見た涼介は、何かを調べたのちにやめた方がいい、と呟いた。
「え?」
「やめた方がいい、と言ってるんだ。この施設は危険だ」
「しかし、この周辺に在真君の息子さんがいるらしいんだ」
「ここはな、実験施設って言って、表向きは能力の研究や実験をしてる場所だ。ただ、黒い噂が絶えない。被験者に危険な薬を無理やり飲ませたり、暴力を振るっている、と聞いたことがある」
「それは、まずいな。息子さんに暴力を振るったりしているかもしれない」
「……まぁ、やめろって言っても行くんだろうけどよ」
「出来ることはやらないとね。ね、大和君」
「橘さんは俺が守りますから」
「心配だな……頼むから無事で戻ってきてくれよ?」
「心配ないよ。私には大和君と在真君という心強い味方がいるんだからね」
それから3人は、在真の息子を助け出すために施設へ向かう準備を始めた。
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