殺し屋探し
大和が目を覚ますと、隣には椅子に腰掛けて目を閉じている橘の姿があった。
付き添わせてしまって申し訳ないな、と思いながら眠っている橘を見つめる。
「綺麗だよなぁ。橘さん」
男である自分ですら見惚れてしまうのだ。女性にモテていないはずがない。
「……っと、そんな事考えてる場合じゃないや」
大和は、すやすやと眠っている橘を揺すって起こした。
「ん、……あれ、もう朝?」
「おはようございます、橘さん」
「おはよぉ、やまとくん」
ふにゃっと微笑む橘の姿がまるで小さい子供のようで、この人を守ってあげたい、と改めて思う。
自分は命を助けてもらった身だ。だから、死ぬまでこの人を守りたい。
そして、許されるのなら、ずっと側にいたい。
「橘さん、何か食べますか?」
「作ってくれるのかい?なら、食べようかな」
誰かに料理を食べてもらうなんて、久しぶりだ。
美味しいと、言ってもらえるだろうか。
大和は不安になりながら、作った料理を橘に出した。
「わ、美味しそうだね……!大和君が料理上手なの、知らなかったよ」
「そ、そうですか?」
大和の作った料理を一口食べると、何とも言えない味が口に広がった。
見た目はとても美味しそうなのに、どうしてこんなに不味いのか。
「……お、美味しい、ね」
「美味しいですか!?よかったです……えへへ、心配だったんですよ」
「う、うん」
美味しそうと言ったのだ。まさか不味いなんて言えない。
「2人で食事するのも、たまにはいいですね」
平気で料理を食べている大和を見て橘は、大和君は味覚がちょっと変なのかな、と思った。
なんとか料理を食べ終えて大和が片付けをしている間、橘はベランダに出て休んでいた。
あの料理を食べた後すぐに動くのはきつい。
「はぁ……。あ、そう言えば……殺し屋さんはいつくるのかな」
自分達より先にターゲットを殺した、毒を使う殺し屋。
ネットなどでは『黒サソリ』と呼ばれているらしい。
毒を使うからサソリ。シンプルなネーミングだ。
しばらく殺し屋について考えていると、不意に背後から大和の声が聞こえた。
「……橘さん?殺し屋さんに会いたいってどう言う事です?」
「げっ。大和君?私の独り言聞いてたの?」
「どうしてそんな事を考えてるんです?」
「ええと、その、ね」
「ね、じゃなくて、詳しく聞かせてください。でないと……」
黒手袋を外そうとする大和を見て、橘は慌てて言った。
「わ、わかったから、話すから、燃やさないで」
「燃やしはしませんけど。ここ自分の家だし」
「私の家だったら燃やしてたの??」
「え?はい」
「え」
大和は時々橘に対して当たりが強い。
「はやく話してくださいよ」
「あ、うん」
橘は自分の名前を殺し屋の依頼サイトにうちこんだ事などを大和に話した。
「はぁ???」
「うわぁ、怒ってるよ、大和君」
「はぁ……もっと自分の命大事にしてくださいよ。俺にも橘さんを守れる範囲には限界があるんですから」
「だって他に方法思いつかなかったし……」
「バカですか」
「酷いよぉ……」
少し考えるそぶりをしてから、大和は決心をしたように言った。
「うってしまったものはもう仕方ないですね。わかりました。俺も会いたいとは思うので、手伝います」
「何だか申し訳ないね……」
「いいですよ。橘さんが殺されたら俺が困るし。それに、側にいてくれたから」
「私は幸せだねぇ。大和君がいる」
「……ええと、橘さんが殺し屋に殺されないように警戒しつつ、殺し屋が姿を表したら話をするって事でいいですか?」
「うん。そうだね」
「了解です」
こうして、2人の殺し屋探しが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます