お散歩
一雅は別荘のドアを開けた。
玄関で靴を脱いでいると、軽快な足音とともに「おかえり!」と嬉しそうな声が聞こえた。
「ああ、ただいま。ゼロ」
ぬいぐるみを抱えて微笑んでいる彼はゼロ。
凄腕の闇医者だ。一雅にとても懐いており、同居している。
「何してたの?」
「調査だ。人探し」
途中で邪魔が入ってできなかったが、と心の中で呟く。
「そっかぁ。ねぇねぇ、かずまさとお散歩行きたいな」
「散歩?」
「最近全然かずまさとお話しできてない、から。ダメ、かな?」
どうも自分はゼロに何かを頼まれたりするのに弱いらしい。
仕方なく、ゼロを連れて散歩することに。
「かずまさ。オレ、幸せなんだ。かずまさと一緒にいれるの」
「おお、そうかぁ。よかったよかった」
「あー!ぬいぐるみさん!」
おもちゃ屋のショーケースに展示されているぬいぐるみを見つけ、すぐさま走って行くゼロを見ながら、一雅は苦笑いを浮かべた。
「ゼロはマイペースだなぁ……」
そんなゼロに振り回されるのも、なんだかんだで楽しいと思う一雅。
「かずまさ、買って!ぬいぐるみさん」
「お前なぁ、もういいだろ?別荘ぬいぐるみだらけになるぞ。もう結構あるけど」
「買ってくれないなら、かずまさころす」
「え、怖。オレ、ぬいぐるみ買わないと殺されるの?」
頷くゼロに、仕方なく買ってやるかと財布を出しかけた一雅は、ゲームセンターで取れば良いのでは?と思った。
その方が、ゼロも自分も楽しめるのではないか。
「なぁ、ゼロ。違うぬいぐるみさんじゃダメか?」
「違うぬいぐるみさん、あるの?」
「おう。行くか?」
「行くー!」
ただの散歩のはずが、ゲームセンターまで来てしまった。
「見て回るから、ほしいのあったら言ってくれ」
「はーい」
しばらくクレーンゲームの台を見て、これがいい!とゼロが選んだのは、一雅とそっくりのぬいぐるみが景品の台。
「オレに似てるな」
「でしょー?かずまさ大好きだから、これほしいな」
隣に弟に似たぬいぐるみも置いてあり、2つとも取ることにした。
「おー。なんか動いてるよ?」
「この動いてるやつがな、ぬいぐるみさんを取ってくれるんだ」
「すごいんだね!」
ぬいぐるみを渡してやると、ゼロは嬉しそうにありがとうと言った。
「えへへ、大切にするね。ここ、いろんなもの置いてあって面白いから、また来たいな」
「よかった。さて、帰るか」
「うん!ぬいぐるみさん、ふたつ増えたよ〜」
シグレと会った時は最悪な日だ、と思ったが、ゼロとこうしてゲームセンターで遊べたので、今日はいい日になった。
景品のぬいぐるみを抱え、一雅達は別荘へと帰宅した。
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