探偵
聞き込み調査を始めた一雅はまず、山口達也が勤務している会社に向かった。
ここなら、一番有益な情報が得られるはずだ。
社内は広々としており、仕事しやすそうな雰囲気。
「こう言うところで働けたら、よかったんだろうな」
裏社会の仕事についてしまった以上、もう普通の職にはつけないだろう。
弟に、幸せに暮らしてほしいから。自分は裏社会で生きる事を決めた。
「って、そんな事思ってる場合じゃないな。聞き込みしなきゃ」
しばらく聞き込みをした結果、山口達也という男は、周りから随分と信頼されていたようだ。
真面目で優しく、頼りになる。皆口々にそう言った類の言葉を言った。
今は、月島という男が代理で社長をやっているそう。
『おや、何か御用ですか?』
背後から突然声をかけられ、ビクッと背筋が跳ねる。
振り向くと、月島本人が立っていた。
「あ、いえ……おたくの社長を探してほしいと、ある方から依頼されまして」
「探偵さん、ですか」
「はい。
月島に名刺を渡す。もちろん、これは偽名だ。職業なども偽ってある。
こうした方が、仕事をしやすくなる。
名刺を受け取ると月島は、自分も調査に協力したい、と言ってきた。
「社長の事、とても心配なんです。私にも協力させてはくれないでしょうか」
「協力、ですか……」
どうしたものだろうか。協力してくれれば、見つかりやすくなるかもしれない。
しかし、それと同時に自分の正体がバレてしまう可能性も上がる。
どちらを取るべきか。悩む。
「わかりました。協力してください。色々と聞きたい事があるので」
やはり、ここはリスクよりも情報の収集を優先するべきだ。
「ありがとうございます……!」
「では早速、達也さんがいなくなった事について、心当たりは?」
「ないです。取引先との話があると出ていったっきり、連絡がつかなくて」
「連絡がつかない」
電話やGPSなども繋がらないそうだ。
あいつからの情報によると、彼はかなりの金持ちらしい。
それらを踏まえると、誘拐のセンが一番高い。
何か、犯人が手がかりを残してくれているといいのだが。
「最後に着ていた服装とか、覚えてますか?」
「服装……ええと、黒いスーツに青色のネクタイをしていました。あと、黒縁メガネもかけてましたね」
「ふむ」
とりあえずは、こんなところだろうか。
礼を言って会社を後にする。
月島には、何かあったら連絡する、と言って電話番号を渡しておいた。
さて、次は——
次の目的地へ一雅が向かおうとしたその時。
『お。やっぱりここに来てたんだな』
上から聞こえてきた声に、思わずため息が出る。
「どうして、お前がここにいる」
「ちゃんと仕事してるか心配でね。俺がこうして見に来たってワケ」
そもそも、他人の家の屋根でくつろぐのはどうなのか。
ひょい、と屋根から飛び降りてくるあいつことシグレ。
「暇なのか」
「暇じゃねぇよ。お前の事見張っとかねぇといけねえんだ」
「オレはお前に構っている暇なんてない。見張るならGPSで十分だろう」
一雅は自身の左耳についているピアスをつついた。
弟に貰ったピアス。あろうことかシグレは、そのピアスにGPSをつけた。
「そのGPSだけじゃ
本当はもう少し聞き込みをするつもりだったが、シグレと一緒に歩くのはごめんだ。
予定変更。今日はもう家に帰ろう。
シグレを押し退け、一雅は別荘へと向かった。
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