第5話 (番外編)とあるショッピングモールのイベントスペースにて。

ここ最近、夫と休みが合わなくて中々遠出できなかった。

まだ幼い息子たちを退屈させずに週末を近場で過ごす方法も流石にネタ切れになってきた。母親の私は子供達の意見を優先しているが、ついに力尽きそうだ。

そこで今日は、たまたまセールをやっているとのことで隣町のショッピングモールに連れて行くことにした。当然、幼い少年に自分のことで長い時間付き合わせるのは酷なことだとは分かっている。ふと目を離したらお店の高いものに傷をつけてしまったこともあるくらいだ。行きたい店で目ぼしいものを探すという効率的な回り方を選んでも息子たちはグズグズ。


そんな中、彼らはもちろん、自分の気分転換にもなるのが、ショッピングモール内で開催される公演やイベントだ。幸運にも内容は、息子たちが好きなヒーローショー。

早速悪役とその部下らしい少女が出てきた。

その会話が面白くないのか、それとも悪役の衣装が不気味だからか、怖い〜とか、早くヒーロー出てこいよ、などの発言を聞き飽きた頃に、やっとヒーローが到着した。

息子たちは大はしゃぎ。応援に夢中になって、私もこれで体力を使ってくれとしか思わなかった。


そんな中、突然一人の悪役がうちの子供を攫った。あくまでもパフォーマンスとは言え、まだ幼稚園児の次男にはただただ恐怖である。

「このクソ餓鬼の命が惜しけりゃ、さっさとここから出て行け。」

おいおい、いくらヤンチャな息子でも、赤の他人にくそガキとは言われたく無いわ。

そして突然、悪役の少女が喋り始めた。その内容は、子供達のエネルギーを子供達の教育のために利用すると言う、響きの良さそうな一方で残酷な発言だった。今小学生の長男は特別勉強に熱心と言うわけではなく、むしろ算数のテストが90も取れていないことに憂いている私には、息子に似たような教育機関を利用させようと考えていないかを確認させられたように思えた。

ステージでの登場人物たちのやりとりを見ながら、どうやって次男が助けられるのかを考えていた時、肝心の本人は大泣きだったことを少し哀れに感じた。襲われる!と思った時に、やっとレッドとグリーンが駆け付けて彼を助けた時には、ホッとしたのかゼエゼエと肩で息をしていた。大袈裟だな、と兄は笑っていた。


その後雰囲気がガラリと変わり、悪役の女の子が自分の過去について嘆いていた。

突然の意外な展開に、観客たちは唖然としていたが、その後現れたブラックとの会話は面白かった。

仕事のことなので、息子たちはキョトンとしていたが、実際にパート勤務をしている私は聞かずにはいられなかった。有給は無く、労働基準法違反の不利な条件で続ける彼女に同情してしまった。

彼女が自分の手をブラックに見せた。そこにはペンで書いたものとは思えないオレンジ色の『J』がくっきりと浮かんでいた。そこで私を含む大人たちもどよめいた。中々の特殊メイクの本格さに舌を巻いたら、ジェイという名前の由来を話しながら、マホロバンの敵についての話を聞いた。

ここで初めて、マホロバンの悪役は普通の人間だと気づいて驚いた(今更?)。この作品をテレビで見たときは、子供が見るには社会風刺の描写が多すぎると思ったが、まさか敵までこんな感じとはなぁ…。


2人の会話シーンの途中で、再び悪役のスーツ男が出てきた。

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