第2話 弊社とチャイルドニウム

「このクソ餓鬼の命が惜しけりゃ、さっさとここから出て行け。」

右手にはナイフ、本物の。しかも鋭い。「助けて〜‼︎」と泣き叫ぶ子供。それを彼の首に近づける社員。白が言う。

「子供を人質にしたら、貴方犯罪者になりますよ?」

「関係ない。どうせ証拠は完全に隠蔽しますので。貴方方も、子供達も。」

「てかあんたたち、一体何がしたいのよ?」

「チャイルドニウムの採取の為です。」

いつの間にかジェイは自ら話していた。そこから彼女は、現在の日本の教育事情を語り始めた。


ここ数十年、誰もが教育を受けられる環境を作り続け、更には勉強の大切さを厳しく叩き込んでいた我が国。ところが、日本の学力は世界的に見ても低下している。ゆとり世代か?体罰が許されない校内環境になったからか?今、世界は目まぐるしく変化している。そんな現代を生き残る為には、やはり勉強は大事なのだ。体罰がダメなら、力尽くでも勉強に気を向けさせれば良いじゃないか。ついでに、態度の悪い若者達も「更生」させよう。その目的の為に、弊社進力図書は日々汗や涙を流したのだ。そして、チャイルドニウムを発見した。


「えーと、つまりは、子供達の明るい未来の為に、無理矢理勉強させるために、チャイルドニウムが必要って訳?」

「その通りだ。」

「「「は?馬鹿じゃね?」」」 「何い?」

3人がハモった。こいつらモラルに欠けているじゃん。

「もうこっちで調査済みだけど、その採取によって、命を落とすリスクだって高いのよ。特に、ここにいる子供たちは。最初からやり直すこと!」

また少女は煽った。ドキューがそれを見過ごすことは断じて無い。

「もういい。やれ。」「はい!」

「イヤー!助けてー!」体を押さえつけられた子供は絶叫した。

ふぅ、みんなそういうものよね。自分に有利なものを優先して、他人への思いやりなんか考えずに行動できるものね。これまでも何度か見ていたその子の最期をまっすぐ見つめることを、でもジェイは出来なかった、

はずだった。


平社員の右手が、動かなくなった。というか、すっぱりと切れた。落ちた腕はまだ電気を走らせ、バチバチと無念に鳴く。数秒は麻痺したように指は動いていただろうが、それを見る暇は無かった。剣のように見えたのはやはりスマホ。不幸な教育器具部採取係のロボット社員は、背中も一本の線を引かれ、事切れた。その後ろから、赤のスーツを着た男が現れ、子供を救出した。その間にも、他の社員が全員、「壊され」た。

「待った?ちょっとバリケード破壊に時間がかかっちゃってさぁ…。」

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