第3話 怪物

 数時間前、タワー内部。


「で、そのお前の好きな女ってのはなんて名前なんだ? つうかそもそも、歳って同じか?」

「だから、好きってわけじゃないよ。それ、もう訂正するの四回目なんだけど。あと歳に関しても教えたよ、知らないって」

 教室を出てからというもの、エレベーターの中でずっと、このやり取りを何度も繰り返している。佐々木は既にもう面倒くさくなってきていた。そのせいか、返しが少しずつ適当になってきている。

「いや、それおかしくね? 普通、幼馴染みの歳とかわかるだろ?」

「でも、本当に知らないんだ」

「じゃあ名前は?」

「それも知らない」

 全て即答、あえて隠している様子は感じられなかった。

「お前、まさかとは思うけど、妄想とかじゃないよな?」

 目を細め、まるで変質者でも見るかのような、嫌な視線を向ける玄野。

「違うよ。ていうか、それならむしろあることないこと話すでしょ、妄想なんだから」

「言われてみればそうだな。んじゃ、どういう関係なんだよマジで」

「幼馴染ってのが、一番しっくりくると思う。小学生の時、一度一緒に遊んだんだよ。ただ、両親とこの島に移住するってなってそこで別れたんだ。でも、俺はずっと会いたかった。だから高校生になって、この島の学生寮に住むことを決めたんだ。あの子に、また会うために」

 玄野は髪をくしゃくしゃとかきながら、やれやれといった表情で、深く息を吐いた。

「あのなぁ、お前、人はそれを好きって言うんだよ! まさか自覚なしか? 完全に初恋じゃねぇか!」

 呆れながら、玄野が叫んだ。しかし認めたくないのか、それとも本当に自覚がないのか、佐々木はキョトンとした顔で、フクロウのように首をかしげる。

「ったく、頭が痛くなるぜ。それで、そのお前が運命を感じてる女の特徴は?まさか、何の手がかりもなしに探すつもりだったわけじゃねぇんだろ?」

 佐々木は無言で、玄野から視線を逸らす。その態度は酷くわかりやすいものだった。

「おい、お前まじか? じゃあどうやって見つけるつもりだったんだよ!」

「多分、会えばわかると思う」

「はは、なんだよそれ、その発言はちょっと引くぞ」

 会ってまだ一日目の玄野に、彼の気持ち悪さを受け入れるのは無理がある。長年連れ添った、それこそ幼馴染ような存在でなければ不可能だろう。

「もしかして、俺ってば面倒くさいやつに声かけちまったかな」

「それ、本人の前で言う? ていうか正直なところ、俺も面倒なやつに声かけられたなって思ってるよ」

「おいおい、ぼっちじゃかわいそうだから、俺がわざわざ声かけてやったんだぜ? むしろ感謝してほしいくらいだ。自己紹介で、幼馴染に会いに来ました、なんて発言してた野郎によぉ。あんなこと言っちまえば、誰も仲良くなんかしてくれねぇだろうに」

 玄野は肩をすくめ、恩着せがましく言った。

「別に、俺はあの子に会えさせすれば、それでいい」

「はぁ、わからねぇな。お前がなんで、そこまでその子に執着するのかがさ。理由くらいあるんだろ?」

「一応あるけど、多分、信じてはくれないと思う」

「なんだよそれ、意味わからん。まあでも、そんなのはどうでもいいか」

話しているうちに、エレベーターがタワーの一階へと到着していた。

 実は初等部、中等部、高等部だけ直通エレベーターが存在し、それ以外の階は一階にしか止まらない。タワーは広大であるため、生徒の生活に他の職員などが支障を与えないための処置である。

 タワー内部には様々な施設が設けられており、その区画ごとに移動ができる。例えば、学校であれば初等部、中等部、高等部の他に、職員室や保健室、図書室のある階も存在し、それらは校内のみ専用の螺旋階段で移動できる。学校外の階に向かう際のみ、エレベーターを使う必要があるのだ。

 この処置のせいで、生徒が学校帰りにタワーにある他の施設に寄ろうとする際、わざわざ一階まで降りなくてはならない。学校生活においては非常に使いやすいが、同時に不便さも存在していた。

「さて、まずは展望台にでも向かうか、ここがやっぱり定番だからな。お前も、さすがに役所とかには興味ないだろ?」

「それはそうだけど。もしかして、人を探すなら高いところからとか、浅い考えで言ってないよな?」

「たしかに展望台は人探しに向かねーよな。けど、人気施設の方が出会う確率は高くなる。違うか?」

 玄野の言い分にも一理あった。なるべく人の集まる場所を探す方が、非常に効率が良い。名前も年齢もわからないのであれば、役所などはあまり役に立たない。

「違くはないけど、それなら普通に校内で探した方が早くないか?」

「ばぁか、今日は始業式とホームルームだけで生徒のほとんどが下校しちまってるよ。うちは部活動や委員会とかも特にねぇからな。明日から通常授業だし、そっちのが効率もいいだろ。休み時間とか使ってさ」

「そうだな、今はお前に任せた方が何かと合理的みたいだ。俺よりずっと、この島やタワーのことに詳しいし」

「へへ、これでもバカじゃねぇからよ」

 顎を突き出し、鼻を高くする玄野。行動も発言も非常にわかりやすい。

 この男は軽薄だが、適当な考えで動いているわけではないようだった。その点に安心した佐々木は、とりあえずその方針に従ってみることにした。


 長い間エレベーターの中に拘束され、やっとのことで展望台ルームへとたどり着いた。途中、何度もエレベーターが止まり、そのために時間をロスしてしまった。しかし、それも無理のないことである。タワー内部の施設は、島にとって重要なものばかりが集中している。故に、人の行き来が非常に多い。これなら、校内への直通エレベーターがあることに納得せざるを得ない。正直な感想を言えば、普通に校舎を建てるべきだったのだろうが、もはや今更である。

 この寂れた島で、唯一と言っていいレベルの観光施設、展望台。だが、特に上から見て面白ある景色などはない。玄野は人気施設と称していたが、とてもそうには見えなかった。平日の昼間ということもあってか、従業員以外の姿はほとんどなく、閑古鳥が鳴いていた。

 十年前は、このタワーの技術こそ評価され、観光客が殺到していたらしい。しかし、その面影はもう全くない。

「お前、騙したな?」

「いやいや、ちょっと待て! 騙してねぇって! マジで人気施設なんだって! この島の中じゃまだ!」

 そう、あくまで『まだ』というだけだ。都内の人気施設に比べれば、それはまさに天と地ほど差がある。

「来るだけ無駄だったな」

「そんなこと言うなって、廊下の窓よりも良質な景色が広がってるぞ」

「別に、景色なんかには興味ないんだよなぁ」

 そもそも、この島にはまともに眺めていて楽しい場所など一つもない。

「まあまあ、そう気を落とすなって。この島に来たばっかのお前に、近いづいちゃならねぇ場所も教えてやんなきゃだしよ」

「え? それって要するに、立ち入り禁止の場所ってこと?」

「うーん、まあ、言っちまえばそんなところだな。割とこの島には、危ねぇ場所ってのがいくつかあるから」

 玄野は窓の方まで歩くと、すぐ近くに取り付けられている望遠鏡を覗かずに、そのまま景色を指差した。

「この島には、大きく分けて東区と西区ってのがある。タワーの入り口から見て、右側が東で左側が西な」

 指の先は、島の西区の方へと向けられていた。

「あっちにはあんまり行かない方がいいぜ。昔から、ウエストグールっていう愚連隊が幅を利かせててよ。目をつけられたりしたら面倒どころか、普通に危ねぇのよ」

「愚連隊なんて、まだいたんだ」

「時間が十年前から止まっちまってるからな、この島は。って言っても、十年前でも珍しい方か、今じゃもう絶滅危惧種だもんな」

 愚連隊どころか、昔の映画やドラマに出てくるようなコテコテのヤンキー自体存在しない。数年前に、関東でもカラーギャングによる抗争が起きたとニュースになったこともあったが、話題にすらならなかった。未だ存在し続けてはいるらしいが、見つけられればもはやラッキーなレベルだろう。ゲームでいうレアエンカウントだ。

「人数はあまり多くないみたいだが、個々の力が相当高いらしい。まあ、普通に生きてたら関わることなんてねぇんだけどよ、一応忠告な」

「東区には来ないの?」

「うーん、縄張りにしてるのは西区の一部だけらしいな。東区は都内の暴力団が支部を設けてるのもあって、派手に活動してないみてぇだ」

「ちょっ、暴力団って、そっちのがよっぽど危ないんじゃないの?」

「俺たちみたいな一般人、ヤクザのオッサンたちからは興味ねぇって。危ない薬を売り買いしてたら話は別だけどな」

 途端に、話が物騒な方向へと変わっていく。人工島というあまりにも別離した空間故に、治安があまり良くないのかもしれない。

「あとは、繁華街の方でよく仕事探ししてる、東堂敦ってやつ」

「その人も危ないのか?」

「本人はキレたりしなきゃそこまで危ないわけじゃねぇんだけど、喧嘩に巻き込まれたらマジでやばいぜ? なんたって、この島で喧嘩無敗の男だからな」

「け、喧嘩……無敗?」

 佐々木は目を剥いて、体を小刻みに震わせる。しかしそれは、恐怖からくる震えには感じられなかった。というより、むしろその逆だった。

「お前、どうした? 怖くなったのか?」

「は、はは、ははは。なんだろうね、自分でもよくわかんないや」、

「変なやつ。あっ、今更か」

「おい、失礼だろ」

 段々お互いの距離感が掴めてきたのか、会話がコントのように進行していく。初対面の状態からまだほとんど時間が経過していないというのに、その相性は中々に良い。

「あとは、最近この島で最も話題になってる例の」

 言い終える前に、玄野は何かに気づいた。視線の先に捉えたある人物の存在に、驚愕を露わにしていた。激しい感情の変化から、続きを口に出すことができなかったのだ。

「ん? 玄野?」

「……おいおい、お前って運がいいのか? それとも不運なのか?」

「いったい何の話だ?」

 佐々木は玄野の視線の先にいる、ある人物へと目を向けた。それは二十代か三十代の男で、風貌とはあまり似合わない背広に身を包んでいた。髪は赤く、顎に髭を生やし、目は獲物を追う野獣のように鋭い。玄野の反応から見ても、知り合いとは思えなかった。

「あれ、誰だ?」

「ははは、さっき話に出ただろ。あの男が……この島で無敗記録を伸ばし続ける怪物、東堂敦だよ」

「え? あ、あの男が?」

 改めて、佐々木は男を一瞥した。たしかに言われてみれば、スーツの上からでもその筋骨隆々とした肉体が見て取れる。加えて、男の放つオーラは独特だった。まさに檻から解き放たれた獰猛な獣。たとえ首輪やリードがあったとしても、押さえ込むのは不可能だろう。男からは、それほどの気迫が感じられた。

「……あれが無敗の怪物、東堂敦」

 心で呟いたはずの言葉が、無意識のうちに声に出ていた。

 今にも、その辺にいる誰かに掴みかかっていきそうな雰囲気である。

「あ? てめぇらか? 俺の今日の面接を台無しにしやがった野郎は」

 東堂は佐々木たちの方を一瞥し、額に血管を浮かび上がらせた。

 それはまるで、地の底から鳴り響いてきたかのような声だった。恐ろしく低く、強い殺意が感じられた。

「ふざけた紙切れよこしやがって。喧嘩してぇんなら……もっと堂々とこいよ、あぁ?」

 言っている意味が、理解できなかった。

 だが間違いなく、それは佐々木たちに語りかけている言葉だった。

 当然、佐々木には身に覚えがない。どうして、この男がここまで激しく怒り狂っているのか、全くわからなかった。

 東堂は息を荒くしながら、重い足取りで佐々木たちへと歩み寄る。

 まるで本当に、怪物が向かってきているかのような重圧だった。男の放つ殺気に気圧され、足が鉄のように固まってしまう。

「展望台、制服、てめぇらだな。こんなふざけた紙切れよこしやがったのは」

 東堂は拳を開き、くしゃくしゃに丸められた紙の塊を床に落とした。

「な……何のこと?」

「あ? とぼけんじゃねぇ。この紙に書いてあったぜ、展望台でタワーの制服着て待ってるってなぁ」

「は、はあぁ?」

「お、お兄さん……ひ、ひひ、人違いですよ」

 震えた声で、玄野が東堂をなだめる。

「どうだろうなぁ? 俺が、名前も何も知らねぇてめぇの言葉を、素直に信じる理由なんかあんのか? あぁ?」

 東堂は目を血走らせ、重々しい声を絞り出す。

「おかしいんじゃねぇか、何でタワーの展望台に、学生がわざわざ来たんだ? こんなところ、来る理由なんかねぇだろうが、違うかぁ? そんな好んで足を運ぶこともねぇ場所に、当人かもしれねぇ野郎が、都合よくいるわけねぇだろうがよぉ!」

 理不尽に、そして一方的に、男は激しい恫喝を続けた。弁解しようにも、そもそも聞く耳を持っていない。既に頭の中は怒りによって満ち、正しい判断を下す思考は欠落されていた。

 怒りを漲らせ、男は今にも殴りかかってきそうな勢いである。

「こっちはなぁ、てめぇらみてぇなクソガキに毎回喧嘩売られて、仕事にもろくにつけてねぇんだよ。なのによぉ、やっと新しい職につけるかもって時によぉ、それを見ず知らずのガキに邪魔されてよぉ、俺が寛容な精神で許してやるとでも思ったかぁ? あぁん?」

 佐々木は、男の怒りが全く理解できなかった。相手の事実確認もせずに怒号を吐き散らしていても、それは単なる八つ当たりにすぎない。自分たちが先に何かしていたのなら、怒りを露わにするのも仕方のないことである。

 しかし、今この男は、不確かな情報だけで自分たちに絡んできている。それも疑うを通り越して、最初から佐々木と玄野だと決め付けているのだ。

酷い言いがかりだ、男には擁護できる部分も、同情できる部分もない。

「あれだ……今のうちによぉ、辞世の句でも読んどけ。もう、俺は止まらねぇからよぉ」

 東堂は玄野の襟首を掴み、宙高く持ち上げた。

「ちょっ! ちょっと待ってくれよっ! 俺たちは何も知らねぇって! 何があったのか知らないけど、あんたの勘違いなんだって!」

「証拠はあんのか? てめぇらじゃねぇって確かな証拠はよぉ! 俺の再就職先に変な映像送りつけて、展望台でタワーの制服着て待ってるから来いだの紙に書いたのは、てめぇらのことじゃねぇのかぁ? 普通、島のガキがこんなところに上るわけねぇんだ、それなりの理由がなきゃ、俺は納得しねぇぞ!」

 足をばたつかせ、必死に男の手から逃げようとする玄野。だが怪物の腕力の前では、その程度の抵抗など全く意味をなしていなかった。

「きょ、今日この島に来たやつに、タワーを案内してただけっすよ! 本当です、信じてくださいっ!」

「あのなぁ、嘘つくならもっとましな嘘つけ。こんな島に、わざわざ観光や移住に来るやつなんかいねぇだろうが!」

 玄野は正直に答えたが、怒りに理性を破壊された怪物は、端から信じる気など毛頭なかった。

「学生のてめぇらに、合理的な解決方法を教えてやる。疑わしい奴は、片っ端から潰せばいいんだよ。そうすりゃ、その中の誰か一人は目的の野郎だからなぁ!」

 酷い解決方法だ。それで潰された全く関係のない相手は、迷惑程度では済まないレベルだ。確率論などで、容量のない者が使う最終手段である。

「ふざけんなっ! おい、誰か! 誰か助けてくれよぉ!」

 だが、その言葉は誰の耳にも届かなかった。

 タイミングの悪いことに、数少ないタワーの従業員が、その瞬間だけ席を外していたのだ。展望台には、佐々木たち三人しかもう残ってはいなかった。

「う、嘘だろ? 待ってくれよ! 俺、こんな理不尽な思いして死にたくねぇよっ!」

 玄野は悲痛な叫びを上げる。しかしそれも当然の文句であった。何故なら、男は確証のない状況で牙を立て、その荒れ狂う怪物の力を振るおうとしているのだ。玄野は東堂の持つ、数多くの伝説じみた噂を耳にしている。この男が本気を出せば、自分など簡単に潰されてしまうと理解していた。

 故に、死にたくないという発言は、冗談や比喩などではなく、本当に命の危険を感じているからであった。

 怪物の拳が、掴まれて身動きの取れない玄野へと振り抜かれる。

「恨むなら、こんな時にこんな場所を彷徨いてた、てめぇの運命ってやつを恨むんだな」


 玄野の体が粉砕されかけたその瞬間、東堂の腕が、横から強い力で引っ張られた。


「……あぁ?」


 東堂は己の片腕に視線を送る。

 その力の正体は、顔に青筋を立てながらブルブルと震える一人の少年だった。佐々木は東堂の拳が玄野へと届く前に、その腕を右手で掴んでいた。

「邪魔をするじゃねぇよ」

 己の腕力に強い自信のあった東堂は、気怠げにその手を振り解こうとした。しかし、何故か少年の手は一向に腕から離れていかない。それどころか、掴む力が徐々に強くなっていた。

 そこで初めて、東堂は気づいた。この少年は、今まで相手にしてき誰よりも、危険な存在なのだと。

「お、俺……だよ」

 佐々木は、震えた声で言葉を紡ぐ。

「あぁ?」

 睨みを利かせながら、東堂が再確認する。

「あんたに喧嘩を売ったのは、俺だって言ってるんだ」

「ほほぉ、ならこのガキは関係ない、そういうことだな?」

 東堂の興味が、玄野から佐々木へと移動した。

 掴み上げていた襟首から手を離し、玄野がその場に倒れこむ。

「ゲホッ、ゴホッ……いったい、何が」

 玄野は東堂の手から逃れることに必死で、何が起きたのか全くわからなかった。状況確認をしようと、玄野は睨み合う二人へと目を向ける。

「え? さ、佐々木?」

 怪物の腕を掴むクラスメイトの名を、玄野は訝しげに呟いた。

 本当に、目の前にいる人物は佐々木なのだろうか。そんな不安が膨らんでいたのだろう。それも仕方ない、あの東堂敦の腕を押さえられる存在など、常人には不可能だからだ。

「そいつは、関係ない。あんたの相手は、俺だけだ。素直に喧嘩、買ってくれよ」

「はっ、震えた声でなに言ってやがる、クソガキが。まあいい、どうせてめぇも潰すつもりだったんだ、順番が変わっただけのこと」

 東堂は首をコキコキと鳴らし、掴まれている方とは逆の腕で、佐々木の手首に手をかけた。

「今になって、やっぱりごめんなさいなんてのは、もう通らねぇからな。まあ、んなつもりはてめぇにはねぇんだろうけどよぉ」

 怪物は理解していた、気弱そうに見える少年の震えが、恐怖から来るものではないということに。

「初めてだよ、あんたみたいな人は」

 その根幹は、未知への好奇心だった。

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