2020年7月13日
「うぅ…………」
頭を割るような痛みが走り、目が覚める。
きっとデッドボールが頭に直撃したのだろう。
ここは病室だろうか……?
「ここは…………?」
どうやら違うらしい。
何故なら、白いベッドも、白衣を着た医師も見当たらないからだ。
そこは6畳の部屋だった。
俺が目覚めたのはゴミの山の上だった。
薄暗い部屋に、散乱するゴミや吸い殻、酒瓶。
「ん?」
手元に、デジタル時計が落ちていた。
2020年7月13日、午前4時20分。
「2020年……!?」
夢を見ているのだろうか。
きっとそうだ、デッドボールで気を失って夢を見ているんだ。
この腐敗臭のひどい部屋は何なんだろう。
朦朧としている意識の中で、俺は夢であると信じ再び目を瞑ろうとした。
ガタッ。
「……!?」
刹那、俺の右隣から何かが犇めく音が聞こえた。
木造の古びた椅子、天井から吊るされた輪っか状のロープ。
そして、俺によく似た男。
その男は、椅子に登り、ロープを首に掛けた。
無表情のまま、椅子を蹴り――
「何してるんだよ!!」
「うわぁっ誰だ……!?」
俺は咄嗟に男の体にしがみ付き、首からロープを外していた。
何の正義感でもないが、目の前で人が首を吊ろうとしている状況に、体が先に動いたのだ。
俺によく似た男に、俺が覆い被さる形になっていた。
10秒ほどは沈黙していたであろう。
きっとお互い今なにが起きているのか理解できていないはずだ。
沈黙を破ったのは、首を吊ろうとしていた男だった。
「む、昔の俺がいる……」
2020年7月13日。
俺は10年後の「俺」と出会った――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます