第3話 不動尊の真後ろは雪景色。
空洞は雪国へのトンネルのようにぽっかりと訪問者を待つかのように
静に佇む。
雪舞う中に入る。
空洞の壁は瑠璃色の美しい鉱石で淡くブルーにぼわ〜と輝いている。
まるで氷河の中の洞窟。
ずっと見ていたい感覚に引きずり込まれる。
#多分、。
ラピスラズリだろう希少な鉱石だと思う、帰り持って帰ろうかな、
あ、無理か。。#
空洞を抜けると、真っ白な雪の世界。
〈ギュッギュッ〉と、ほんまものの雪国な感触が雪を踏みしめる足裏に来るね。
ギュッギュッ音しかしない静寂な世界。
針葉樹だろかツンドラな風景。
風は吹いてなく寒くもない。
小学二年の自分は、実は真夏の半ズボン姿。
雪は深くなく靴の高さまでで助かった。
〈シーン〉とする静寂の中、ある方向へと突き進む。
その方向を導くのは、木々の間に〈キラキラ〉と瞬く小さな金色の光の粒。
〈キラキラ〉と手招くように舞う金色の帯。
〈ギュッギュッ〉と、進む内に森が途切れて視界が開けて来た。
ぽっかりと、白い空き地が現れ視界が開けた。
空き地の真ん中に大きな木が立つている。
金色の光はその木に向かって〈キラキラ〉と曲線を描きながら
〈ふわ〜りすーい、ふわ〜りすーい〉と飛んでいく。
おや、木の裏に何か居る。
金色は木の後ろにスッと吸い込まれている。
何か出てくるよねコリャ。
案の定、出た!
軽く2メータはあるくらいのデカい、人。。。?が、のそのそと出てきた。
#デカイといえば、ジャイアントマックス!そう!その感じ#
頭に角がある鹿のような角が。
角まで身長に含めたらそら~たまがる大きさで二メータは超えている。
優雅にのそりのそりと、木の前に出て来る。
「」ヨッ〟と、声と同時に右手を真っ直ぐに挙げて手の平をヒラヒラさせる。
つられてこちらも「ヨッ〟と、小さい体で同じように、手を挙げてヒラヒラ。
「メぇヘヘ~」と山羊、そう山羊の鳴き声。
嬉しそうに
「メぇヘヘ~、メぇヘヘ~」って鳴いている。
その場に胡座(あぐら)座りをする。。。
座り終えたら、また右手を真っ直ぐに挙げてヒラヒラ。
うーん、どうしよか迷ってると、背中を突かれる。
イタタタ、振り向くと黒いカラス。
が、「今宵は、サウィンの前夜祭、誘われし者は、ケルヌンノスの招きを受けよ」と、
いきなりカラスがつらつらと女性の艶やかな声で喋くる。
小学生二年の我が身には、カラスはデカイ、怖いくらいデカイ。
それが艶やかな声で更に続ける、
「ケルヌンノス我はお主を待ちかねていた。
サウィンの日は、異界との境が薄くなり生き物と霊が交わりやすくなるダヌより賜りし
稀なる時間の帯。
この時の刻みをしっかりと見つめよ!そしてその足を踏み出すのじゃ!」
肩に乗って耳元で喋る声は不思議に頭の中にだけ響き、その艶やかな声音はある日本的
な儀式の声音に似ているとふと頭をよぎる。
それは祝詞。
神社で宮司がお祓いの時に発するあのトーンに似ている。
「うーん行くか!ハハ〟用心深い自分にしては積極的なのは…。
現世で辛いことがあった事も理由。
心根の通じる大事な後輩が早過ぎる隠り世への旅立ち。
その後輩の口癖、
「怪しい~先輩、先輩らしい~、ハハ。」
と僕に会うたびに後輩が口にした台詞が今でも脳裏から離れない。
世の中では大事な人物が居なくなった時に何とかロスとか言う言葉を使うけど、
今の自分はその喪失(そうしつ)ロス状態。
僕の失敗はどうでも良い相手には機嫌を損ねないように細かく対応したけど、
心が通じていると感じる相手には通じているだと言う勝手な解釈でたまにしか
連絡もせず、安全にして過ごしてくれている事を願う気持ちだけだった。
そうじゃないんだ、相手の心を推測する目線があると思うならその目線での判断
が自分を尊く感じていると思う人に一生懸命すべきなんだ。
親、兄弟もそう、心通じているとの判断で対応を疎かにしてはいけない事を散々
本とかで知識豊富な筈なのにそれを実行しない愚か者。
だから…。
行くかな、生きてるか死んでるか分からないけど
怪しいのは信条だしね、ハハ。
えーと、鹿の角な方の前、少し距離取って同じく胡座座り。
肩には、カラス止まらせて。
カラスは重たそうだけどね。
重さは感じないから不思議。
カラスの足は三本足あつて右肩左肩と頭の上とに器用に止まり木している。
鹿の角な方から見ると、カラスの帽子被ったように見えるだろう。
鹿の角な方…。
デカイ、座っててもデカイ。
顔は、チョッパーだ!チョッパー。
そうあの顔で眼だけが違う。
黒目くりり〜んではなくて、独特な爬虫類を思わせる眼。
リアルだな〜。
山羊の眼。
山羊の眼って見たことある? あれだよあれ、黒目が横長になって、神秘的な魔法的
な眼。
身体は体毛が毛皮状態ね。
毛皮で、胡座の横に見える足は、お~蹄ではない。
人の足。
そんな外観だ。
「神妙に!」頭の帽子が、ぼそっと。
ちょつと、お尻の下に手を入れたり出したり落ち着きのない小学生に見えたのか、
ぼそりと注意される。
気になるよ、お尻の下は、直接雪だよ雪。
しかも半ズボンだし…。
凍傷になるでしょが凍傷に!
唐突に神社の鐘の音がカランコロンシャリシャリ~と、ゲームのイベント音見たいに
頭に響く!
「本日はお日柄もよく、よくぞよくぞ。
参られました。
心より感謝の意を奉りまするメぇヘヘ~」
能楽師野村萬斎のような口上仕立ての男性の声が響く。
「そそ、小僧!そなた様のお尻におかれましては、ご心配ご無用、我が魔法、
いやさ、法力にて雪であっても春の日の草原としておりますれば、お尻様雪で冷えて
腫れ上がる事も無しメヘヘ」
そういうことね。
「魔法、あ、いやさ~法力を使っておじゃるでござるであるでござるのか~
メヘヘへ」と口上仕立ての返答をする。
#魔法を法力と言い換えるとか日本人向けの気遣い?
それにちょっと古めかしい言い回し#
「あ、いやさ、小僧殿は、メぇヘヘ~は不用でありますれば、お気遣い無くで御座い
ますればメぇヘヘ~」
いつまで続くんかい、メヘヘへ、ハハ。
「それでおば、私めの紹介をば、我はケルヌンノス、ダーナ神族の血脈の祖なる、
森羅万象とそこに棲まう命を司り、冥界にも通じるモノ也メぇヘヘ~」
「棲まうは、ティル・ナ・ノーグ:常若の国で神族郎党と彼の地にて平穏無事に住んで
おりまするメぇヘヘ~」
「サウィンの祭り日の度に、小僧殿貴殿を誘い振り向くことを祈念する事、幾万回。
やっと叶う日が巡り来ました、長かった~。。。これも。。。」
と、続く話をぶった切るカラス帽子。
「あの~、お時間があまり御座いません事よ!」と、帽子が割り込む。
「モリガン嬢、そうであった!メぇヘヘ~」
「先ずは、今、夢世界を経て我と対峙するこの状況は、我が仕向けた仕掛けであり
偶然でも夢うつつの気紛れでもない必然じゃメぇヘヘ~」
「それでは、まず彼の地を見ていただこう」
帽子が呟く。
「では、参りましょう!」
行き成りブワ~んと、目の前が暗転…。
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