出し物2 落語 秋風亭 霊長

 え~、皆様ようこそいらっしゃいました。秋風亭しゅうふうてい霊長れいちょうと申します。どうぞよろしくお願いいたします~。


 なんですか、世の中、三密三密と言われてますがあ、わたしのところなんか密会・密通・密告で嫁にこっぴどく叱られて現在、ステイホームの状態です。

 今日は不要・不急ではないことを申請してようやく許可が下りて来ております。

 嫁との心のソーシャルディスタンスは無限大でございます。

 現在、新しい生活様式を模索しております。


 さて、感染うつって嫌なのはウィルスだけではありません。バカがうつるのも困ったものです。

 世の中には色んなバカがおりまして、一番困るのは言ってる事とやってることが真逆な奴でございます。

 只でさえ迷惑なのにそれが上司と来た日にゃあ最悪ですね。


「おい、佐藤くん」

「あ、はい。何ですか、部長」

「なんだ、この君の課の時間外超過勤務は?」

「はあ……」

「はあ、じゃない! 先月の時間外勤務が全員、100時間を超えているじゃないか」

「忙しかったので……」

「その前の月も100時間超えてる者がいるだろ!」

「はい……」

「時間外超過が年間360時間超えたら君も私も懲役か罰金刑になりかねんのだぞ」

「はい……」

「どーするつもりだ?」

「しかし、部長。うちの課も人手が足りてないんです。納期は守らなければなりませんし……」

「それを何とかするのが君の手腕だろ!」

「スタッフを増やしていただけませんか?」

「そんな余裕が我社うちにあると思うか? 2期連続赤字なんだぞ」

「定時で帰らせてもいいですが、納期は保証できません!」

「ふざけるな! 生産性をあげろ! 定時で今と同じ結果を出せ!」

「そんな無茶な……」

「仕方がないだろ! 社長命令だ。株主総会も控えてるんだ。結果を出せ!」

「……はい」

「腹が空けたな」

「はあ……」

「飯でも食いに行くか?」

「これからですか?」

「何時になった?」

「もう10時です」

「バカ野郎、早く帰れ!」


お後がよろしいようで。



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