架空寄席(カクヨセ)

ロックウェル・イワイ

出し物1 漫才 雨空晴雄・照雄

「どーもー」

「いらっしゃいませー」

雨空あまぞら晴雄はるお照雄てるおでーす」

「よろしくおねがいいたしますー」

「ところで晴雄君。最近、俺、職質するお巡りさんに憧れているんだけど、ちょっとやって見ていいかな?」

「ああ、そうなの? いいよ」

「じゃあ、俺がお巡りさんやるから、晴雄君、向こうからズボン下ろしながら歩いて来てくれないかな?」

「嫌だよ! 職質する前に逮捕だろ」

「あ、そっか」

「あ、そっかじゃないよ」

「じゃあ、ズボンを上げ下げしながら来てくれるかな?」

「じゃあ、じゃねえよ! どうして、ズボンを下げることにこだわるんだよ」

「じゃあ、シャツを上げ下げしながらでもいいや」

「だから何故、露出登場なんだよ?」

「どうして、そんなにカッカしてるんですか? 薬やってますね?」

「急に職質、始めるな!」

「最近、この町内で変質者が出ているって、被害届が出ているんですよ」

「お前がやらせてるんだろ!」

「あなた、薬もやってますね?」

「やかましい!」

「今度は晴雄君がお巡りさんをやってよ」

「え! もう交代するの? どこが憧れてるんだよ、ったく。お前は」

「じゃ、向こうから歩いて来るから」

「ズボンを上げ下げしながらな!」

「それは晴雄君のやつだから」

「俺の専売特許にするな!」

「ウイッ、ウイッ……」

「ちょっと、ちょっと、あなた? 相当、飲酒のんでますね?」

「ウイッ、ウイッ……」

「お名前は?」

「ウイ、ムッシュー、ジャン・レノです」

「ベタなボケしやがって、フランス人か!」

「ウイ」

「そんな坊主頭で、チビ出っ歯のフランス人がいるか!」

「日系二世です」

「受け入れるのか?」

「私、先程来さきほどらい、貴方を見ていたんですが」

「何だよ」

「何かに取り憑かれていますね?」

「適当な事を言うなよ。警官だぞ!」

「ああ、やっぱり。警官の霊に取り憑かれています」

「お前がやれって言ったんだろ!」

「貴方、最近、大きな悩み事を抱えていますね?」

「お前の事でだよ!」

虚言癖きょげんへきもありますね?」

「何でだよ?」

「貴方にこれを分けて上げましょう」

「何だよ」

数珠じゅずです」

「いらないよ!」

「水晶でできているんですよ!」

「だからどうしたんだよ!」

「今なら貴方だけに20万円のところ19万円の10回払い金利30パーセントでお分けできるのに。いかがですか?」

高額たけえじゃねえか!」

「じゃあ、ポイント付与します」

「そう言う事じゃない。ポイントの使い道も分からない」

「貯まると数珠がもらえます」

「何でだよ!」

「数珠つなぎです」

「上手くねえよ! いい加減にしろ」

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