第9話

 月曜日。私はひどく落ち込んでいた。


「まさか...あんな事になるなんて...」





---それは、昨日の事だった。


 宿題も終わり、私はさっそくギターの練習に勤しんでいた。


「弦が緩んできたかな?」


 音が少し低くなっていた弦を見つけ、つまみを回しながら調節していたのだけど、中々音が変わらない。


(...?おかしいな。まだかな?)


 疑問に思いながらも、どんどんつまみを回していくと、ばちん!!という大きな音と共に、右腕に痛み。



「いった!え、何?」


 見ると、ギターの弦が見事に切れてしまっていた。私がさっきから一生懸命回していたのは、違う弦のツマミだったようだ。アホすぎる。



「これは...一体どうすれば...」


右腕に残るジンジンとした痛みを感じながら、私は途方にくれた---





 私はいつのまにか、教室の入り口についていた。しょうがない、素直に謝って、どうしたらいいのか聞こう。うん、それしかない。


「ん?まだ来てない」


 教室に入ると佐倉くんの姿はなかった。とりあえず自分の席について、安堵する。




 その日は結局、佐倉くんはお休みだった。


 先生によると、体調不良らしい。お昼休み、和葉に促されて連絡してみると、


〔大丈夫!元気です!ちょっとサボりになっちゃった笑〕


と、すぐに返事が来た。




「それじゃあ、今日の授業はこれまで。家に帰っても、しっかり勉強しろよ!...あ!級長の2人はちょっときてくれ」



 授業が終わり、帰りの片付けをしていると、和葉がやってきた。悪戯っぽく笑っている。これは彼女が何かお願いをする時の顔だ。



「花〜」


「どしたの?」


「なんか、佐倉くんなんだけど、明日までに必要な書類があったらしくて、渡してきてくれないかって頼まれてさー」


 なるほど、そう言うことか。




「先生が行くんじゃないのかーい」


「色々忙しいんじゃない?佐倉くんちって学校に近いから、よろしく!って感じだったけど」


「適当だなぁ。なんで和葉が頼まれた?浩輔は?」


 うちのクラスの級長は和葉と、浩輔だ。普通なら、男子の浩輔が行くはずだと思う。疑問に思い、花に尋ねると、ニヤリ顔が増えた。





「今日は塾で、急いで準備しなきゃ行けないみたいだったからね!代わってあげた!」


「へぇ〜」


「で、お願いなんだけど...」


「一緒に行ったらいいんだね?」


 私が答えると、和葉の顔がパッと明るくなった。




「さっすが!花!ありがとう!」


「いいよ。ちょうど用事もあったし」


「?そうなんだ。まぁいいや!いこいこ!」

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