第7話
俺の名前は〈佐倉 陽太〉。残念ながら、どこにでもいる普通の高校生..ではない。
父がイギリス人、母が日本人のハーフで生まれた俺は、いわゆる“転勤族”という家庭で育った。
父の見た目を中途半端に引き継いだからなのか、髪はブロンドなのに、体形が日本人のおかげで、ただのヤンキーにしかみえないらしい。
そのせいで、転校先では何かと絡まれる事が多くて苦労した。まぁ、そのおかげで絡まれないようにする方法を、身につけることができたのだけど。
元々、人と話すことは嫌いじゃなかったから、転校したらすぐにいろんな人に積極的に話しかけ、友好的な事をアピール。
運動も出来るにこしたことはないので、それなりにできるようにしたし、先生に目をつけられないように、勉強も頑張った。
そうすると、どこの学校でもなんとかなるものだった。...けど、今回はいい加減ちょっと疲れていた。
「次の引っ越しが、中国になった」
親からそう聞いたとき、
「俺はついて行きたくない。一人でもいいから、このまま卒業させて欲しい」
と、頼んだ。
(今更中国語を覚える気が、まったく起きなかったというのもある)
「陽太を一人残すのは心配だ」
「そうだ!おばあちゃんと、おじいちゃんのところへ行くっていうのはどう?」
両親は、母さんの実家へ行く事を提案してきた。俺としても、日本、しかも何度か行ったことのある土地だったということもあり、海外へ行くくらいならば、と、その提案を受け入れた。
いざ行ってみると、思った通りの田舎で、学校の生徒も少なかったが、問題はなさそうだった。
...なのに。
持っていたスマホの画面を落とし、項垂れる。
(勢いであんな事言うんじゃなかった〜!!とりあえず家は回避できた!よし!)
女子でも男子でも、人と深く関わると面倒な事になりやすい。今までの経験で、痛い目に合ったこともあり、友達関係は“広く浅く”を基本にしてきた。そうすると、問題も起きにくいし、なにより、お別れがあまり悲しく無くなった。
「まぁ、言ってしまったものは仕方ない!」
約束は、約束だ。部屋の押し入れから、目当てのものを探す。
自分が好きなものを同じように好きで、知りたがっているなら教えてあげたいし、一緒に楽しみを共有したい。そう考えるのは、おかしなことではないだろう。同じ趣味の友達が増えることは、素直に嬉しいじゃないか。
ちなみにだけど、小森さんの事は、席が隣な割にはちゃんと話した事が無く、あまりよく分からない。
(小柄で、可愛らしい子だとは思う)
でも俺は、卒業までとにかく平和に過ごせたら、それでいいのだ!卒業さえしてしまえば、一人暮らしができる。頻繁に引っ越す事も無くなり、なんでも好きにできるのだ。
「早く大人になりたいなー!」
持っていたギターを、大きく鳴らすと、しばらく使っていなかったそれは、ひどい音がした。
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