第6話

 帰り道、和葉に起こった事を話しながら家に着いた頃、スマホがなった。いわずもがな、佐倉くんだ。




《勢いで言っちゃったけど、女子が一人で男の家に行くのはやっぱ良くないかなと思うから、学校近くの公園に集合はどう?》


...私は少し安心していた。

 



———その日の帰り道。



「...まぁ、佐倉くんって誰にでも優しいみたいだから、よくわかんないけどさ、花の事気になってたりして?」


「ええ!?」


 和葉は本当にこの手の話が大好きだ。いや、私も好きだけど。私の場合、それは人の事限定なのだ。自分の事になると、途端に興味がなくなる。現実味が無くなるというか、他人事のようになってしまう。



「...趣味が合っただけだよ」


「花は佐倉くんのことどう思うの?」



 “どう”というのは難しい。

 私はわりと面喰いだと自負しているし、直接話したことはあまり無いが性格も悪く無いと思っている。


 でも、“好き”かと言われると、途端に分からなくなってしまうのだ。



「前にも言ったけど、イケメンだと思うよ、で終わり終わり!」


「え〜」




———以上、回想終了。

 

 おっと、返信しなきゃ。




《おっけーです。ありがとう!》


「ふうー」


 ため息を吐きながら、スマホをポイッと布団へ投げ、腰を下ろす。



 昔から好きだ嫌いだというのが、よく分からなかった。カッコいい!とか、一緒にいて楽しいな〜ということはあっても、誰かを恋愛感情として好きになったことがあるだろうか?




「うーん…無いかなぁ…あ、返信きてた。早い」



《じゃあ、明日の放課後待ってるね。1時間くらいしたら、学校出てくれたらちょうど良いと思う》


《了解しました!》


 とりあえず無難な猫のスタンプも送っておこう。




 佐倉くんがもし、私を好きになってくれたら私はどうすればいいのだろう。誰かに好意を向けられることは悪いことじゃないのに、その後のことを考えると、ちょっと面倒くさいというか...



 まぁ、いろいろ考えても仕方がない。とにかく明日は、楽しみだ。どんなギターを見せてくれるんだろうな。もしいい感じだったら、貸してくれるよう頼んでみようかな。




 ダメって言われても、お小遣い前借りしてギターを買おう。毎日暇だし、夏休みは練習しよう。そんで、短大でバンドを組んで学園祭に出るのも面白いかも。



 とにかく今日はご飯を食べたら、お風呂入って、さっさと寝ちゃお。



《ピロン》


 通知音がして携帯を見ると、可愛らしいスタンプが返ってきていた。


...どうやら、スタンプの趣味も一緒らしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る