第4話 雄一と文香の記憶 その2
修学旅行2日目。俺たちは沼津深海水族館にやってきていた。
文香達女子連中はすっかり深海生物に夢中になっている。
しかし、俺達男子はそんな事はどうでもよかった。
「くそ、ここのボケが難しいな。雄一、お前ここでトルネードの物真似するってのどうだ。
あれ、得意だろ。」
「ありゃダメだ、漫才中にやると服が飛んじまう。」
俺、谷川、城島は深海生物など完全に頭から吹き飛んでいた。
最終日に控えた、出し物大会。そこで俺たち3人は漫才を披露することを決めていた。
夏休みに作った『理想の女性』。あれを披露してからというもの、俺たちのクラスでの肩身は狭い。
これを機に、俺たちはクラスカーストを駆け上がることを画策していた。
というもの、俺の本当の理由はもう一つあった。
好きな人がいたのだ。
だから、このまま卒業するわけにはいかなかった。
その女の子の名前は関口綾子。
ショートボブの、くりくりした瞳が特徴的なクラスのマドンナだ。
同じクラスになって早々俺は一目ぼれをした。
だから、俺は彼女の注意を引きたくてあれやこれやとアイデアを巡らし、目立とうとしていた。
その甲斐あって、少しずつだけど俺は綾子と仲良くなっていた。
しかし、今では見る影もない。
女子連中から目の敵にされている俺は、綾子にも距離を置かれてしまっていた。
だからこそ俺はこの漫才に全てをかける気でいた。
そして、俺は深海生物などには目もくれず、谷川達と漫才の構成をひたすら詰めていたのだった。
それからどれくらい経っただろうか。
俺たちは女性陣の声で、やっと我に帰る。
「おーい、あんたたち。ここで終わりだけど、次どこ行く?」
階段を下りた俺たちの前には、出口にありがちな金属のバーがあった。
そう、気づいたらすでに回り終わっていた。
俺たちはそのバーを潜り抜け、いったん外に出た。
そして、みんなで観光パンフレットを見ていた時、谷川が興奮したような声を上げた。
「おい、あそこにシューティングアトラクションがあるぞ!!
行ってみようぜ!!」
谷川の声に導かれ、俺たちは右手を見た。
そこには『深海王国』という名のアトラクションがあった。
これには俺もめちゃくちゃ興味を持った。
「おおいいじゃん、行こうぜ!!」
俺も同調する。女性陣はあまり乗り気ではなさそうでだったが、時間にも余裕があったので、みんなで入ることにしたのだった。
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