第21話 演技の意味
俺はさ、とりあえずチャンスをあげたんだ。「でさ、いつになったらさ、素直になんの?」ってさ。ハナはポカンとしてたけど、俺は騙されない。
「全部、演技なんだろ? 暴れるふり、怖がるふり、ウソ泣き」
俺がそう言ったら、ハナは必死に首を横に振りながら声を出そうとしていたけれど、俺は知っている。全部演技だ。
それで我慢できなくなった俺は、ハナの胸ぐらを掴んで「いい加減素直になれって言ってんだろ! ハナ!!!」って言った。胸ぐら掴むのはさすがにやりすぎだって? 安心しろ。大丈夫だから。これぐらい、強引で怖いのをハナは求めているんだ。言っただろ? 超能力で全部バレてる。確かにハナは、俺が胸ぐらを掴んで怒鳴ったことに一瞬恐怖を感じたけれど、その反対で、ずっとそう言ってほしかったと思っていたんだ。
じゃあ、なぜ、ハナは演技をしたかって? それはな、ハナは怖がっていたんだ。拘束しているのに怖がらないで受け入れたら、みんなが引くって。ちゃんと怖がらないと、それが普通だからって、ハナはずっと、正しい普通のことをしないといけないって思っていたんだ。だから、日常会話の中で出てくるなんて予期していないことを言えなかったんだ。「好きだから、死なないでくれ」って言ってほしいって。頑張って言ったのが、「私っていらないのかな」ってやつかな。言う勇気のない彼女は頑張ってそうやってSOSを出したんだ。
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