第14話 些細なこと

だけれど、その数日後、私はどん底に落とされた。


テストの日。


休み時間に私は声を出し、テスト内容を繰り返していた。それが私の暗記方法だった。この方法はずっと続けているんだ。テレビでも良いって言っていたし。


近くには彼が座っていた。


「ねぇ、うるさいんだけど」

「え……?」


私はびっくりした。彼は私のことが好きなのに、私が嫌だと思うことを言ってくるの……?


「ご、ごめんね」


彼はどうやら、声を出さずに読んで暗記する方法だったみたいだ。私の声が邪魔だったのだろう。うるさい、と言ってきた顔には嫌悪感が漂っていた。


そして、私はまた思った。あぁ、私っていらないんだなって。

そんな些細なことで、って思うかもしれないけれど、ズタズタな心を持っているとそんな些細な言葉でも深く深く突き刺さるんだよ。私にはとても辛い言葉だった。


今考えれば私が勝手に、彼が私のこと好きだと思って、そして勝手に、私のこと必要だと思っていたんだね。そう、すべては私が勝手に思ってたこと。それでも私は、勝手に思うほど、自分の脳を騙してしまうほど、それぐらい「彼」を私の生きる意味にしたかったんだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る