第8話 ジレンマ

きっとお兄ちゃんは、自分が放つ言葉の一つ一つがどれだけ重いのかを知らない。小さい頃からの誹謗は私の心を確実に刻み付けていってその傷口を大きく大きく広げていった。



お母さんはいつも言った。


「他人の体や外見のことを悪く言ってはいけない」


分かってるよ。だから私は家でも、学校でも、誰にも言ったことないよ。けれどね、私は言われたんだよ。お兄ちゃんに。そして、友達に。


小学校の思い出―いじめ。


中学校の思い出―いじめ。


自分の小学校、中学校時代を一言で表すとそれだ。そしてその時代を経て、私は今、大人である。


家っていうのは、自分が落ち着けて安心できる場所って聞いたことがあるけれど、私にとってはそうではなかった。私は家と学校とで板挟み状態、つまりはジレンマに陥っていたのだ。


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