それでも魔女は毒を飲む

聖願心理

魔女と勇者の救世譚

 あるところに、異形の怪物を操る悪の王がいました。

 悪の王は、異形の怪物を使い、人や家畜を殺し、作物を枯らし、時には毒の雨を降らしました。


 そんな悪の王に立ち向かうべく、勇者の素質を持つ男と世界で最強と言われる魔女が、悪の王を倒すべく、旅に出ました。

 勇者が剣で異形の怪物を倒し、魔女は様々な魔法で勇者を支えました。


 そんなふたりなら、悪の王を倒せるかもしれない、と誰もが期待しました。


 勇者と魔女は、異形の怪物を倒しながら、遂に悪の王が住まう城にたどり着きました。

 そこで始まる悪の王との決戦。


 悪の王の力は強大で、ふたりは苦戦しました。

 何度も何度も勇者が剣を振るい、魔女が魔法を放つものの、悪の王に致命傷を与えることができません。

 ふたりは疲弊し、沢山の傷を負い、いつ倒されてもおかしくないそんな状態にまで追い詰められました。


 そんなとき、勇者が一瞬の隙を突かれ、致命傷を負ってしまいます。

 もう戦えないそんな怪我です。


 そんな勇者を見て、魔女は覚悟を決めました。

 身体に悪の王を宿らす、禁忌とも言える魔法を使ったのです。

 そして、自分の心に悪の王を閉じ込め、そのまま自決用の毒を飲みました。


 魔女は自らの命と引き換えに、悪の王を滅ぼしました。

 魔女と勇者はこうして、英雄となったのです。

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